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魔法の店

 クラウスの鎧と遭遇した後、俺達はゆっくりとした足取りで博物館を見て回った。俺にとっては書物などから知った冒険者の痕跡が存在しているということで、これがあの剣士が使っていた武具、とかこの斧を使ってあの魔族を、とかすぐに理解ができたため、感動も大きかった。


 結果、ゆっくりと館内を回ったため、思った以上に長居した。さすがに昼前とまではいかないが、食事をする店を探し始めてもよさそうなくらいに日は昇っている。


「エーナ、次はどうするんだ?」


 そう問い掛けた時、彼女はどうしようか悩んでいる様子だった……次に向かう場所を決めていないというのではなく、たぶんここを出る時間が予想以上に遅かったので、どうしようか思案しているのだろう。


「……エーナ、確認だけど食事をする店とかは予約しているのか?」


 なんとなく尋ねてみると、彼女は小さく頷いた。


「うん、そうだね……微妙な時間なんだけど」

「でも次に向かおうとしていた場所へ行くにしては遅いと……ま、いいんじゃないか? それなら予約の時間になるまで大通りを歩いて時間を潰せばいいさ」

「わかった」


 なんとなく不本意な様子だけど……綿密なプランを立てていたのだろう。彼女は俺に礼をしたいと言ったわけで、ならばと俺を楽しませるために練りに練ったプランを持ってきた。結果的に俺のせいで予定が崩れてしまったわけだが。

 ただ、ここで俺が「すまん」と謝るのも違う気がする……というかたぶん、エーナとしてはそういう展開は望んでいないだろう。


 とりあえず俺達は(エーナにとって)予定を変更し、大通りを歩くことに。ギルド本部で騒動があってこの町は厳戒態勢となったわけだが……現在は穏やかで、通りには様々な人がいて楽しそうに話をする人の姿もあった。


「騒動の余波とかは特になさそうか?」

「うん、色々調べたけど大丈夫」

「なら良かった。これで尾を引いているとかだったら、心残りだからな」


 俺は通りを見回す。馬車が往来し町で暮らす人々の呼び込みが耳に入ってくる。活気があり、ついでに言えば王都へ続く街道から結構な数の馬車や旅人がやって来て、なおかつそちらへ足を向ける人間も非常に多い。王都の方でも先の騒動による影響はもうない、と考えることができそうだ。


「あ……」


 その時、ふいにエーナが声を上げた。何事かと思って視線を向けると、彼女がとある店に視線を集中させているのを目に留めた。


「何か気になる物でもあったか?」

「あ、えっと……ううん、大丈夫」


 エーナはそう述べて俺へ向き直る。ちなみに彼女の視線の先にあったのは魔法関係の雑貨を扱う店だ。店の入口周辺には様々な張り紙が貼ってあり、そこには何々が入荷しましたとか、この道具が品薄ですとか、そういう記述がされている。


「ほら、行こう」


 と、エーナは俺へ声を掛けるのだが……こっちは彼女についていこうとはせず、その店へと足を向けた。


「え、ディアス?」

「まあまあ、少し気になったんだよ。見るくらいは構わないだろ?」

「……いいけど」


 その言葉にエーナは同意しつつ、俺達はその店へと入った。建物内はやや奥行きのある構造となっており、入口から少し入って店主らしき女性が椅子に腰掛けて俺達へ声を掛けてきた。


「いらっしゃい……って、エーナ? どうしたの、そんな格好で」


 どうやら知り合いらしい。女性は二十代半ばくらいの見た目をした黒髪の女性で、彼女は俺とエーナを交互に見た後、


「というか、ギルドの制服ではないのね……その人は冒険者?」

「えっと……」

「――まあそんなところだ」


 どう応対するか迷っていたエーナに代わり、俺が発言した。


「彼女とは知り合いで、町を色々と案内してもらっているんだ」

「へえ、なるほど……ここを訪れたのは理由が?」

「魔法関係の道具屋であるのはわかったし、なんというか入口にある大量の張り紙がちょっと気になって」

「なるほどね。この店は魔法関係で一点ものの商品とか扱っているから、そういうのはちゃんと表示しておかないと見逃されちゃうのよね」

「その張り紙を見て買いに来ると」

「そういうこと……で、今日エーナが来たのは前々から欲しかった物の入荷情報から?」


 実際は違うのだが、エーナとしてはそれが気になってしまい注目したということだろう。


「あー、えっと……」

「ちょっと待ってて。持ってくるから」


 女性は店の奥へと引っ込んでいく。当のエーナは困惑しているのだが、


「エーナ、別にいいんじゃないか?」

「でも今日は……」

「店のこと気になって上の空じゃ、今後のプランに支障が出るかもしれないと思っただけさ」


 ちょっと軽口っぽく言うと、エーナはそこで苦笑した。


「はあ、まったく……じゃあ買い物をしていい?」

「どうぞ」

「持ってきたわよ」


 店主が戻ってくる。その手にある物へ俺は注目すると共に、彼女はエーナへ近づいた。


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