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お礼

 話し合いは一段落したところで終了。今回の騒動については反魔王同盟という何やらきな臭い話が飛び込んできたわけだが、俺達三人だけでどうにかなるというレベルではないし、今後は国に任せることになるだろう。


「エーナ、また何かあったら言ってくれ……ま、ギルドを介して仕事はするだろうから、エーナなら居所とかもわかるだろ」


 そう言い残して俺は部屋を出ようとする――ギルド本部を出たらいよいよ旅を再開することになるだろう。当面エーナとも会わない……彼女から指示を受けてここへ来て、ずいぶん長い間滞在したけど、それも終わりそうだ。

 その時、あることに気付いた。ミリアやアルザは俺を見てから、次に視線をエーナへ向けた……何か言葉を待っている雰囲気だったが、俺は構わず部屋の扉を開けようとして、


「あの、ディアス」


 エーナが声を上げた。それで俺は振り返る。


「どうした?」

「その……」


 なんだか言いにくそうな様子。そこでミリア達に加えエーナの傍らにいるノナまでも沈黙し、言葉を待つ構えだった。

 その雰囲気は応援でもしているように見える……頭の中に疑問符を浮かべた時、


「……今回の騒動についてここまで関わってくれたこと、感謝してる」

「冒険者ギルドの騒動だからな。仕事をもらっている身だし、当然のことをしたと思っているよ」

「それでも、ディアスの功績は大きい。襲撃者との戦いのことや、決戦に際してシュウラを呼んでくれこと……今回の騒動を解決した立役者と言ってもいい」


 ずいぶんと評価してくれているな、と思っているとエーナはさらに続けた。


「だからその、お礼がしたい……個人的に」

「個人的?」


 ボーナスが出るとかじゃないってことか。そもそも、俺達の仕事の報酬は既に支払われているし。


「といっても、そんな大層なことはできないけど……ディアスがよければ、だけど。一日、私と付き合ってくれない?」


 ……ギルドに務める者として、ここまでやってくれたのだから、といった感じだろうか。ただそれにしては強引な提案のようにも思えてしまうのだが。

 それはノナなんかもわかっているのか、何か言いたそうにしていた……が、結局声を発することはなく俺の返答を待つつもりのようだ。


 エーナの提案に対し俺は……まあ断る理由もないか。


「ああ、いいよ」


 ――エーナはなんだか安堵した様子だった。もしかして、こういう提案をするつもりで店でも予約していたのか?


「問題はいつ、ってところだが。エーナ、仕事抜けられるのか?」

「一日くらいなら、どうにか」

「その後、仕事量が大変なことになりそうだな」

「そこはディアスが心配しなくてもいいよ」


 そうかなあ。机の上で突っ伏している姿を何度も見ている俺としては他人事ではないんだけど。


「……まあ、エーナがそう言うなら。日取りが決まったら教えてくれ」

「わかった」

「ミリア、アルザ。もう少しだけ町に滞在するけど、問題ないか?」

「ええ」

「大丈夫」


 ミリア達は即答だった。なんだか二人はこういう展開を予測していたようにも見えるのだけど。

 ……まあ、詮索するつもりはないし、その日までゆっくりするか。というわけで、俺達三人はギルド本部を出た。そして宿へ戻る途中、


「ディアス、いいかしら?」


 ミリアが口を開いた。


「お礼ということだから、町中を見て回る可能性もあるけれど、その服で?」


 ――旅装姿のままだからな。この格好でもエーナは特に文句とかは言わないだろうけど、


「……ドレスコードがいる店に入るかどうかわからないけど、それなりの格好はした方がいいかもしれないな」


 そんな返答に対しミリアは小さく頷き、


「ということは購入?」

「まあそうだな。とはいえ旅をする場合は邪魔になるから、購入した後のことも考えないといけないけど……」


 どこに置くか、ということについては候補はある……うん、こういう機会だし次の目的地はそこにしよう。


「ミリア、アルザ。次の目的地については俺が設定してもいいか?」

「元々私達はディアスの旅についてきているだけだから、決定権はあなたにあるわよ?」

「そうそう」

「……わかった。なら次の目的地は――」


 ミリア達に語った後、俺は町へ目を移し、


「エーナは改まった形で礼をすると言っているんだ。なら、こちらもそれなりの準備をするとしようかな……ミリア達はその間どうするんだ?」

「なら私達はもう少し町中を見て回ることにするわ」

「ん、わかった。なら今日は別行動かな」


 そして俺はミリア達と一度分かれた……さて、


「それじゃあ動くとするかな」


 騒動があって戦いに思考が傾いていたわけだけど、それを変えるきっかけにもなりそうだ……そんなことを思いつつ、俺は大通りを歩き始めたのだった。


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