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戦士の弊害

 地上へ帰還し、町へと戻った俺達は事の顛末を国へ報告……といってもそれはエーナの役目であり、俺やシュウラ達については報酬が支払われて仕事としては終わりとなった。


「シュウラはこれからどうするんだ?」


 ギルド本部前、仕事終了という形で戦士達がわいわいと騒ぎ始める中、俺は一つ問い掛ける。


「王都へ戻るのか?」

「そのつもりです。私の口から今回の騒動については報告したいという思惑もありますので」


 ……何やら考えている様子。とはいえ尋ねるようなことはしない。


「そういうディアスさんは?」

「……色々と首を突っ込んでしまったけど、本来の旅に戻ろうかと」

「自分探しですか」

「……その様子、何が言いたいのかわかるぞ」


 シュウラの視線に対し俺は肩をすくめ、


「自分探しといっても、やり方がわからないのでは? ってことだろ」

「エーナにも言われましたか?」

「ああ、ズバリ言われたよ……自由気ままに旅をしているつもりだが、関わる出来事は魔物討伐やら事件やら……戦士団に所属していた時と何も変わっていないんだよな」

「意識したのですから、これから変えていけばいいのですよ」


 と、シュウラは優しく諭す……と、ここで今度は彼から話題を出した。


「何かやりたいことなどはないんですか?」

「それを探すための旅だったんだがなあ……」

「なんというか、ディアスさんらしいですね」

「らしい? どういうことだ?」

「戦士団に所属している時からですが、それこそ戦いのことについては明瞭な答えや最善を尽くすべく頭をフル回転させますが、それ以外のことだと四苦八苦しながら対応しているような姿が見受けられましたので」


 ……なんとなく、心当たりがある。つまりそれは、戦士団に所属しひたすら強くなろうと必死になっていた弊害ということだろうか。


「ディアスさんのその考えについては、体に染みついているでしょうし、意識しなければ解決しないものでしょうね」

「どうすればいい?」

「別にどうにかする必要性はないのでは?」


 と、シュウラは思わぬことを口にした。


「戦士団を離れても戦いに明け暮れる……同じ事をやっているようですが、大きな違いが一つあります」

「それは?」

「何のために戦っているか、です」


 その言葉に俺は沈黙する。


「戦士団に所属していた時は、団に貢献するため、といった理由があったでしょう。けれどディアスさんは現在、お金のためや仲間のためなど、自分や自分の周りの人のことを考えて仕事をしているわけでしょう?」

「ああ……まあ、そう言われてみればそうかな」

「そうした場合、心構えも違ってくるでしょう。その辺りを意識すれば、戦いの中でも何か見いだすことができるかもしれませんよ」


 ……そうなのかなあ、と考えているとシュウラは笑みを浮かべ、


「まあ戦いは所詮戦いで、どれだけ考えても得られるものはないかもしれませんが」

「おい」

「ははは、まあともかく、ディアスさんのやりたいようにすればいいのです。結果、やりたいことが魔族との戦いでも、別に良いではありませんか」


 それは……どうなんだろう。俺は首を傾げ頭を悩ませていると、シュウラは笑みを浮かべたまま、


「そうやって考えるのも旅の醍醐味ですよ……存分に満喫してください。戦士団を抜け自由の身なわけですから」

「ああ、まあ……そうだな」

「というわけで行くとします。ディアスさん、お元気で」


 ――そうして『黒の翼』一行は町を去った。最後の最後にシュウラから色々と言われたけど……さて、どうすべきか。


「ねえ、ディアス」


 ここでミリアが声を掛けてきた。


「今回の騒動、事の顛末とかも気になるから、情報が欲しいのだけれど」

「それならエーナに情報をくれないか交渉してみるか……あ、でも仕事に入ったし、ノナに伝えてみよう」


 ――俺は一度ノナと顔を合わせて話をする。そこで彼女は「伝えておきます」ということで、ひとまず俺達は宿へ戻ることに。


「何かしら情報をもらったら、旅を再開するか」

「そうね……」


 と、ミリアは相づちを打ちつつ何やら考え事。アルザも同様で、その雰囲気に疑問を抱く。

 まるで、どうにか町に滞在できないか……みたいな雰囲気がある。ふむ、もしかしてエーナと何か約束とかしているのだろうか? でもそうだったら俺に話してもおかしくはないし……。


「……今回の騒動。気になることはたくさんある」


 そこで俺はミリアとアルザへ切り出す。


「どこまで情報がもらえるのかわからないけど、国の動向とかも気になるから、その辺りの情報がもらえるまで滞在するのもありかな」


 ――その言葉で、ミリアとアルザはなんだか安堵した様子だった。そんなにこの町にいたいのか?


 だとするなら、どういう……などと考えている間にミリアは宿へ戻るよう提案。俺はそれに頷き、ひとまず体を休めるべく宿へ足を向けたのだった。


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