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一つの騒動の終わり

 アルザの放った一撃……それが決定打となり、魔族ザバルドは崩れ落ちた。


「馬鹿な……こんなところで……」


 そう呻く中でエーナは槍を容赦なくその頭部へ刺突を放った。オーバーキルも甚だしいが、少しでも油断すれば魔族は即座に反撃してくる。彼女の判断は賢明と言えるだろう。

 そして槍が突き刺さった時……魔族ザバルドの体が、塵へと変じ消え去った。戦闘終了……ただ、俺達は警戒を解かない。まだ敵が潜んでいる可能性がある。


「エーナ、どうする?」


 俺は問い掛けながら周囲を探る。少なくともこの広間に魔物や魔族の気配はない。


「まずは建物内を確認する」


 その言葉により、彼女に同行したギルド職員が動き始める。護衛として騎士や戦士が動き……エーナやシュウラが指示を飛ばす。

 一方で俺はミリアとアルザの二人について確認する。怪我などはないみたいだが、


「アルザ、体調は? 強化魔法使用により反動とかはあるか?」

「特になし」

「わかった。体に違和感があったらすぐに言ってくれ」

「うん……私達はどうする?」

「エーナから指示をもらえば動くことにしようか。彼女の方はここに留まって広間を調べるみたいだからな」


 動いている様子を見ながら告げると、今度はミリアへ顔を向けた。


「ミリア、そっちは大丈夫か?」

「結界構築の補助をやったくらいだし、まだまだ余裕よ」

「そうか。さすがに交戦することはないと思うけど、念のため索敵は頼むよ」


 そう指示を出しつつ俺は、エーナと同じように広間の中を散策し始めた。






 結果から言えば、魔物などがいることもなく拠点内は完全に制圧した。それと共にエーナはここに残っていた資料について調査を始める。


「再び来るのは大変だけど、調査団を編成して対応しないといけないかな」


 そうエーナは結論を出した……理由としては結構な資料が見つかったためだ。それらを全て持ち帰ることができれば良かったのだが、さすがに抱えきれる量ではない。

 内容については、広間を見て回っていた際、資料をパラパラとめくってみたのだが……その多くが魔力に関する研究資料だった。人間から情報をもらい、研究を重ねギルド本部へ攻撃したあの敵が生まれた……その研究資料がここには眠っている。


 ただ、ここに資料が存在する以上、国側に資料を渡せば対策を講じてくれるだろう……魔族側としても、資料を奪われた技術に固執することはないだろうし、ギルド本部を襲撃から始まった一連の騒動はあらゆる意味で終結した、と考えていいだろう。


 ただ、資料を漁っていて一つ気になったことが。魔族ザバルドはどうやら別の魔族と手紙のやりとりをしていたのだが……そこに気になる記述が。


「ミリア」


 俺は手紙を彼女へ見せる。それに対し、


「同盟……?」

「ああ。日付から考えるとまだ魔王が存命だった頃より組織されていた……反魔王同盟というやつみたいだ」


 その手紙についてはエーナやシュウラにも見せた。するとシュウラは、


「魔王は絶対的な存在ではありますが、寝首をかこうと機を窺っているような存在だって魔界にはいるでしょう。そうした者達が集まり、同盟を組んでいるというのは決しておかしな話ではないかと」

「そうした活動の一つが、人間と手を組み研究?」

「これが魔王を追い落とすための方策なのかはわかりません。あるいは魔王の座を奪った後、人間界へ侵攻するための準備かも……どちらにせよ、現時点で確実に言えるのは反魔王同盟という存在は、現在好き勝手に活動している」

「そうか、魔王が滅んでしまったから……」

「彼らとしてはまさか人間が、と思うところでしょうけれど、滅んだ以上はそれに乗じて人間界に侵攻、と考えているのかもしれません」


 ――俺はここでオーベルクの話を思い出す。魔王について、人間界へ攻め寄せたのは謀略によるものだと。

 もしかして、反魔王同盟とやらが魔王に戦わせるように誘導を? だとしたら、現状は予定通りということなのか? ただ、魔族ザバルドは滅んだ。偽物という可能性もゼロではないけれど……感じ取った魔力の厚みはまさしく本物だと俺は思うのだが――


「とりあえず」


 と、エーナは腰に手を当てながら俺達へ言った。


「資料は膨大すぎて持ち帰れないけれど、手紙……反魔王同盟に関する手紙だけは持ち帰ることにする。これについては、一刻も早く調査しないと」

「場合によっては次、人間界に侵攻してくる魔族の詳細がわかるかもしれない」

「うん、そうだね」


 俺の言葉にエーナは首肯しつつ、


「さて、それじゃあ戻るとしようか……ディアス、シュウラ、助けてくれてありがとう」

「手を貸すのは当然だろ。エーナ、何かあればいつでも言ってくれ」


 俺の言葉に対し――エーナは俺へ視線をやって何か言いたげな表情となった。なんでそんな顔を……と思っていたら、横にいるシュウラが笑い出す。


「シュウラ、どうした?」

「いえいえ、では戻るとしましょうか」


 ……俺は釈然としないながらも歩き出す。色々と新たな問題が出たけれど……ひとまずギルド本部で巻き起こった騒動については、終わりを迎えたのだった。


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