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悪魔との攻防

 強化された悪魔と激突したエーナとアルザだが……俺の強化魔法が功を奏したか、敵の攻撃を受けとめることに成功した。

 相手も相応に強くなっているようだが……魔族の表情はなおも余裕。この状況は想定している雰囲気だが、俺はあの顔つきを変えられる術はないものかと考え始める。


 とはいえ、できることはそう多くない……周囲を一瞥。魔物はなおも押し寄せてきているが戦士や騎士が食い止めている上、場所によっては押し返している。

 左右は問題ない……そしてシュウラとミリアは何事か準備をしている。おそらくシュウラは魔族の裏をかく何かを準備しているだろう。ならば俺はエーナ達の援護に集中しようと決めた。


 再び強化魔法を発する。同時、対抗するように魔族ザバルドは悪魔へ魔力を注いだ。


「我慢比べだな、英傑」

「……俺は『六大英傑』に入っていないぞ」

「とはいえその英傑と肩を並べるほどの実力者なのは間違いないだろう」


 どうやら魔族からマークされているっぽいな……まあ魔王と戦った手前、今更な話ではあるけれど。

 エーナ達は俺の強化魔法を利用して悪魔へ攻撃を仕掛ける。鋭い刺突がエーナから放たれたかと思うと、これまで以上に素早く、かつ豪快な斬撃がアルザから発せられる。


 強化魔法がどういう効果なのかを即座に理解し、体を動かしている……結果的に即座に対応できており、隙はない。一方で悪魔の方は魔力を受けるとわずかだが動きが鈍る。これは魔力を受けどう強化するのか悪魔が判断しているのだろうと察せられる。

 その時間は一瞬だし、本来なら隙を見いだすようなレベルではないが……エーナ達は見逃さなかった。俺がさらなる強化魔法を使用した時、魔族が呼応するように魔力を注ぎ……その瞬間、エーナ達は一気に間合いを詰め攻撃を仕掛けた。


「ほう?」


 興味深そうにザバルドが呟いた。直後、悪魔の拳を押しのけてエーナ達の攻撃が入る。

 だが、それでも決定打にはならない……どうやら相当強固らしい。英傑であるエーナの攻撃すら通さないとなれば、相当凶悪な性能をしているのは間違いないのだが、


「……なるほど」


 ここに至り、俺はエーナ達が何をやろうとしているのかを理解した。俺は悪魔を見据える。暴力的な魔力を身にまとい襲い掛かる様子を見てエーナ達は大丈夫なのかと不安になるのだが……その膨大な魔力を制御し切れていない。それでもザバルドは俺の魔法に合わせて悪魔へ魔力を注いでいる。ならばどういうことが起きるのか――


 悪魔の拳がエーナへ差し向けられた。彼女は即座に槍でその攻撃を受け……流した。


「既に並の戦士では対処が難しくなっているはずだが、さすが英傑といったところか」


 感嘆の声を漏らしつつもザバルドは表情を変えない。俺はもう一度周囲を見回す。魔物達の数は減りつつあり、なおかつシュウラ達の準備は着々と進んでいる。

 魔族は戦況を見て逃げ出すだろう。もしどこかの均衡が崩れれば、頃合いだと見計らい……俺は杖を構えた。魔法は使わず、状況に応じて動くことを決める。


「何もしないのか?」


 すると魔族ザバルドが反応した。俺が黙ったまま待機しているのを意外そうに見る。


「強化魔法の応酬だと思っていたのだが……付与できる限界に到達でもしたか?」


 俺は何も答えない。杖を構えていると魔族は失望したように、


「まあいい、ここまでということか。ならば――終わらせてもらおう」


 悪魔へさらなる魔力を注いだ。するとその体がわずかに膨らみ始め……半ば暴走しながらエーナ達へ突撃する。

 雄叫びが、室内を満たした。それは魔力を受けて興奮しているのか、それとも――対するエーナとアルザは冷静だった。双方とも俺が付与していた強化魔法を利用し、悪魔の拳を、再度受け流した。


 その攻防は、一歩間違えれば二人が吹き飛ばされて終わりだったかもしれない……だが、エーナ達は防ぎきった。そしてすぐさま反撃へ移り……再び、彼女達の攻撃が悪魔の体躯へ叩き込まれた。


「通用しないぞ。魔力による強化は全身に及んでいる」


 勝ち誇ったかのようにザバルドは告げる。


「英傑クラスの達人でも、刃は届かない……このくらいの強度があれば十分ということだろう。ならば今度は受け流せないほどの力……それを注いでしまえば、終わりだな」

「……本当に、そう思う?」


 ここでエーナが問い掛けた。するとザバルドは眉をひそめ、


「どういう意味だ?」

「人間は力で上回っても技術があるため反撃されてしまう……だから技術を奪い、さらに力を高めれば勝てる……というのは単純だけど、効果的だとは思う。でもそれだけで勝てるようなものではない」

「ほう? まだ何かしら要素が必要だということか? それとも、心理戦にでも持ち込もうとしているのか?」


 エーナはそこで無言となったが、魔族ザバルドは質問に対し肯定だと受け取ったらしく、


「まあいい、どちらにせよ追い込んだのは間違いない……これで、最後にしよう」


 ザバルドが決着を付けるべくさらに悪魔に魔力を――その直後、

 広間に悪魔の咆哮が響き渡った。


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