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異形の存在

 俺達は魔族と対峙する形で戦闘態勢に入ったのだが……魔族の横に奇っ怪な存在がいることで、こちらは警戒を強めた。

 といっても、その正体はわかっている……その姿、見た目については拠点を守っていた悪魔に近しいのだが、肉体の上から鎧を着ていることが特徴。なおかつその顔は、鉄製の仮面のようなもので覆われている。


 ではその正体は……俺達がこの地底まで来た大きな理由。つまり――そこでエーナが目に出た。槍を構え切っ先を魔族へ向け、


「確認だけれど、なぜそんなことをしたの?」

「コイツは力を求めていた。しかし戦闘能力など元々ほとんど持っていなかったため、それを強化するべく色々とやっただけだ」


 ――悪魔のような見た目をした異形の正体は、冒険者ギルドの副会長。


「ここへ辿り着いた時点で、コイツはずいぶんと焦っていた。自分が首謀者であることは露見してしまった。ここから巻き返すにはどうしたらいいのか。それに対し私は、とにかく力を持つことから始めるべきだと進言し、同意した」

「――まるで、彼が望んだような言い方ね」


 ふいにミリアが俺達の前に出た。魔族の姿を見て取って、どういう存在なのか知っているようだ。


「色々と推測していたけれど、大当たりだとは思わなかったわ……こんな地底で何をしているのかしら? ザバルド」


 名を告げられた魔族――ザバルドは、ミリアを見て笑みを浮かべる。


「ああ、誰かと思えばミリアか。話は既に聞き及んでいるよ。英傑と肩を並べて旅をするとは……まあ、魔族の中にはヒトと共存しようとする輩もいる。お前もそうだと考えれば別に咎めるつもりもない」

「私のことは噂になっているのかしら?」

「魔界でか? まあ多少なりとも知っている者は多いだろうが、それよりも大きいニュースがあるからな。それにかき消されているぞ」


 大きいニュース? 俺やミリアが眉をひそめるとザバルドは笑った。


「そのあたりの情報は知らないか。人間界では魔界の情報は届かないからな。しかし逆に、魔界からは人間界の情報が届く。この違いこそ、私達にとって有利な点だ」

「――情報戦で上をいっているなどと発言しても」


 と、今度はシュウラが口を開いた。


「こうしてあなたは追い詰められている」

「ああ、そこは私の落ち度だな」


 あっさりと魔族ザバルドは認めた。赤い髪を揺らしながら視線を流し、


「こんな辺鄙な場所まで来るとは予想できていなかったが……索敵能力を考えれば、来る可能性は十二分にあった。もう少し技術を発展させれば、隠し通せたかもしれないが」


 技術――それは間違いなく、ギルド本部を襲撃した敵の力だろう。


「次に人間と戦う際の布石ということですね」


 シュウラが告げる。それに対しザバルドはまたも笑みを浮かべ、


「その程度は察しがついているか。ああ、その通りだ……貴様ら人間は私達魔族との戦いで強くなっている。時にはダンジョンなどから手に入る武具を参考に、技術を発展させている。戦う以上、敵に何かしら奪われることは仕方がない。だが、奪われっぱなしでは癪だ。よって、こちらも利用してやろうと考えたわけだ」

「その結果があの魔物だと……推測していましたが、やはりギルド本部を襲った魔物。あれこそが技術を発展させた完成形だったと」

「あれは想定以上の結果をもたらしてくれた。とはいえ、現段階では再現が非常に難しい。コイツが相当な私財を投入してようやく完成できたほどだ」


 と、悪魔にも似た存在――副会長の体をザバルドは拳で小突いた。


「将来性はあるが、量産するには相当な時間が必要……まあ、焦る必要はない。人間は魔王すらも打ち破れる力を持つに至ったわけだが、五十年もすればそうした人間は全員等しく消えてなくなる。寿命――それこそ、私達にとって人間の優位に立てるものだ。有効活用しなければ、な」


 その言葉と同時、俺は杖をかざしその先端をザバルドへ向けた。


「そうはならない。ここでお前を……技術もろとも滅ぼすんだからな」

「できるのか? 英傑とそれに比肩しうる実力者はいるようだが」


 ――ここには魔王と直接戦った経験者が俺を含め三人いる。魔族はそれをわかっているはずだが、余裕の態度は崩さない。


「ミリア」


 俺が名を呼ぶと、彼女は難しい表情で、


「ザバルドは秘密主義かつ実験好きの魔族で、同胞からも評判ははっきり言って良くないわね。けれど、魔王候補であるのは間違いない」

「辛辣だな。まあ事実だし否定はしないさ」


 そこで副会長――異形の悪魔が動き出す。


「個人的に、この悪魔はかなり上手くできたと自負している……英傑が相手であれば試すのに不足はない。さっさと始末して、魔界へ帰るとしよう」


 直後、悪魔が襲い掛かってくる――同時、それを迎え撃つようにアルザとエーナが前へと出た。



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