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悪魔と退魔

 エーナ達の快進撃は続き、魔物は駆逐され続けいよいよ拠点へ接近しようとした段階で、悪魔が動き始めた。途端に騎士やギルド職員は警戒し……その時、俺やシュウラが前に出た。


「というわけで、ここは私達が」


 シュウラは告げるとエーナ向け指示を出す。


「悪魔と戦う間に周囲の索敵と拠点内を調査してください」

「わかった。私は――」

「目に見えない場所に敵が潜んでいる可能性があります。こちらに加勢するより職員を守る方を優先すべきでしょう」


 その言葉にエーナは小さく頷き、職員達へ指示を送った。騎士達も攻撃によって息が上がっている人もいたが、俺達と入れ替わったことで呼吸を整え一休みといった状況。そして俺達は、


「さて、魔物は結構減残っている」


 俺は杖をかざしつつ、悪魔とその周囲にいる魔物を見据えた。そして魔物の動き方を見て一つ気付き、シュウラへ声を上げた。


「しかもこの悪魔、魔物をある程度操作できるみたいだな」

「の、ようです。とはいえ今の今までロクに介入していない以上、その能力は大したことないでしょう」


 斬って捨てた物言いと共にシュウラは両手をかざし、話を続ける。


「こちらが近づいてきたことで、魔物を操って迎撃しようということなのでしょう。その能力は高いですが、どうやら魔族から指示を受けて動くだけの存在……内に秘める魔力は相当高いようなので油断はしませんが、対処は決して難しくない」

「アルザ」


 俺は一歩後方にいる彼女へ呼び掛ける。


「間近で見た感想でいいから教えてくれ。感じられる魔力量から考えて、退魔の力をどのくらい叩き込めば倒せる?」

「全力でやれば一撃でいけるかな? 戦ってみて、私一人でどうにかできそうだったらなんとかするよ」

「ならその方針でいくか」

「ディアスさん、雑ですね……ま、綿密な作戦は必要ないですが」


 そう述べた後、シュウラは両腕に魔力を集め始め、


「援護をします。アルザ、思う存分やってください」

「というわけだ、アルザ」

「了解!」


 彼女が弾かれたように走る。俺はすかさず彼女へ強化魔法を付与した後、杖先に魔力を集め――雷撃を放った。

 それは悪魔ではなく近くにいた魔物へ向けられたもの。アルザの邪魔となりそうな敵を排除する……その意図を察したかシュウラもまた光の矢を生み出して魔物の掃討を始めた。途端、悪魔の周囲にいる魔物が一時いなくなる。


 だがここで、悪魔はこちらの意図に気付きすぐさま後方に控えている魔物を引き寄せた。それに対抗するべく俺とシュウラは魔法を放って撃破していく。俺がさらなる雷撃や光弾を放つと、シュウラはそれに対抗でもするかのように炎や光を生み出していく。

 それはさながら、どちらが魔物を多く倒せるか競い合っているようだった。俺はなんとなくシュウラへ視線を送るとこちらの考えを読み取っているかのように笑みを返してきた。


 俺はそれに一言もの申そうかと考えた矢先、アルザが悪魔と交戦を開始。即座にそちらへ視線を戻し思考を切り替える。

 さらなる強化魔法で援護するべきかと最初思ったが、最初の激突で問題ないと俺は判断した。理由はアルザが放った斬撃。悪魔はそれを腕を盾にして防いだのだが、刃が太い腕に入った。悪魔の体には相当な魔力があるし、腕の硬度は金属くらいはあるだろう。だがそれでもアルザは退魔の力によって刃を入れた。彼女の攻撃は通用し、滅ぼせる――


 悪魔は即座に退いた。身の危険を感じたか、それとも負傷したら後退するよう命令を受けているのか……どちらにせよ形勢不利だと悟ったようで、悪魔の指示によって魔物がさらに押し寄せてくる。

 それに対し俺とシュウラがさらに魔法を放った後、今度は『黒の翼』の戦士達が一斉に魔物へ仕掛けた。豪快な戦斧により一閃で魔物は数体まとめて吹き飛んだり、あるいは刀身から放たれた風の刃が魔物の体を両断する光景があった。地底は乱戦の様相を呈し始めたが、状況的にはこちらが圧倒している。戦士達の援護もあってアルザは悪魔と完全な一騎打ちとなった。


 そして彼女は――力を引き上げさらに悪魔へ剣戟を見舞う。相手はそれをどうにか防ぐが、一太刀ごとに鋭さが増し、腕をボロボロにしていく。このままだと腕を両断されるのも時間の問題であり……悪魔もそうなると考えたかどうにかして逃げるべく後退する。

 しかし、アルザは足を前に出して距離を詰める――その時、一際アルザの剣が輝いた。頃合いだと考え一気に決着をつけるべく剣に魔力を全力で注いだようだった。


 悪魔はそれを見て……覚悟を決めたか、内に秘める魔力を総動員して防御した。まとった魔力は凝縮され、大規模魔法でさえ無傷に乗り切ってしまうのではと考えられるほどのもの。

 しかし、アルザの退魔はそれすらも……彼女と剣と悪魔の腕が激突する。せめぎ合いになるかと考えたが、それも一瞬のこと。俺は悪魔の腕に刃が入るのを見て取り……刹那、彼女の剣が悪魔の腕を斬り、さらに体躯にまで届いたのだった。


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