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国の管理下

 地底にいる副会長を捕らえるべく、俺達は準備を開始する……ノルビア山へ赴いた時と大きな違いは騎士が今回参戦すること。

 誰か知り合いとかいないかなー、とか思いつつ俺は騎士と顔を合わせたのだが……残念ながら見知った人はいなかった。隊長と思しき人物は非常に実直で、俺やシュウラと顔を合わせた際に一礼した。


「ご活躍は聞き及んでいます。今回、共に戦うことになります――」


 真面目に解説をする騎士から色々と話を聞き、彼らが準備を整えるまで待つこととなって……ノルビア山から帰還してから二日後、俺達は副会長捕縛のため町を出た。

 索敵によってまだ地底内に潜んでいることはわかっている。ただ、エーナは何かしら魔力に揺らぎがあるという報告を行った。


「たぶんなんだけど、地底で副会長自身に戦える能力を付与しているんじゃないかな」


 そうエーナは考察していた。


「それが完了次第、移動するかもしれない。なおかつ戦う力を得るということは、当然副会長自身逃亡する可能性がある。さらに言えば地底内には魔物もいる。最大限警戒する必要がある――」


 ギルド側も本腰を入れるべきだと判断したのか、今回エーナも帯同することになった。よって英傑二人が参戦する……こちらとしては可能な限り戦力を整えたといったところ。

 騎士側は英傑の一人であるクラウスを引っ張ってくるとまではいかないにしても、魔王との戦いを経験した騎士がいればと隊長は語っていたのだが……王都を襲撃されたこともあってさすがに難しかったらしい。


 まあ無い物ねだりしても仕方がないということで、俺達は現在集めることができたメンバーで地底へ挑むことに……出発し、エーナの案内に従い到達した山肌の一角。そこは魔力も薄く魔物も少ない場所ではあったのだが、人が入らないよう結界により封鎖されている場所があった。


「ここは元々国の管理下にある場所なの」


 先導する形で進むエーナは、俺達へ解説する。


「地底の底へと繋がっている場所で危険だから、結界によって物理的に閉鎖している……でもまあ、基本的に人を置いて管理なんてものはできないから、地面や森から魔力を吸収して維持できるように結界を張って、放置している形だけど」


 そんな解説を聞いて、俺は魔族が入り込んだ意理由を考察する。


「見回りすらされないことを知り、魔族が密かに入り込んで準備をした、と?」

「そうだね。副会長から情報をもらっていたんだと思う。冒険者ギルドは国と連携して管理している場所なんかの調査もするから」

「そういう経緯で拠点を築いているのであれば、魔族と副会長の関係は相当深いことになりそうだな」

「私も言いながら同じことをそう思った。この事件、思った以上に前から仕込まれていたのかも」


 だとするなら、俺達が想定する以上に厄介な話になるかもしれない……いやまあ、現時点で相当厄介な話になっているのだが。

 やがて俺達は地底への入口に辿り着いた。エーナの解説によるとそこには本来結界が張ってあったはずなのだが……見事に破壊されていた。


「国側はちゃんと巡回と観察をしていれば踏み込まれなかった……か?」


 と、呟いてはみたもののそれが意味のない話だと俺は思った。この場所に人が来なかったから魔族は入り込んで拠点を築いた。もしここがちゃんと管理されていたら、他の管理されていない場所を副会長から教えてもらって、そこに拠点を作るだけだ。


 聖王国が全ての危険な場所に監視の目を行き届かせる……というのは理想論ではあるが、実際は非常に困難だろうと予想はできる。ただ、今後はこうしたことをなくしていかなければまずい……魔王との戦いに勝って、平和な世の中になるかもしれないと思った矢先、立て続けに事件が発生した。国側としても色々考えを改め、相応の対策をとる必要が出てくるだろう。


 俺は気を引き締めつつ地底への入口を見据える。外側からは真っ暗で何も見えず、入口周辺の構造さえわからない。ともかく、進むしかないだろう。


「索敵をします」


 と、ここでエーナの近くにいたギルド職員が声を発し、作業を始めた。そこで俺はエーナへ、


「入念に調査して踏み込むわけか」

「さすがに無策では危険すぎるし、とにかく情報が欲しいからね」

「問題は敵方の動きだな。こっちの動向を把握しているのかによっても変わってしまうが」

「そこは実際に踏み込んで検証するしかないね」


 エーナは槍を握りしめながら告げる……この戦いで一連の事件を終わらせたいところだろう。彼女の表情からは不安などもなく、ただ作戦を遂行するべく引き締まった顔つきをしている。

 一方でシュウラは……周囲を警戒しているようであり、俺と目が合うと、


「周辺に使い魔による監視の目、みたいなものもなさそうですね」

「入口付近くらいは注意を払ってもおかしくないけど……」

「ノルビア山に陽動を配置したことで油断しているのかもしれません……どちらにせよ、今が好機でしょう」


 その時、索敵結果を職員がエーナへ伝え……彼女はそれを聞き号令を発する。そして俺達は地底へ向け進み出した。


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