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先陣を切る人物

 強化魔法を使用したことにより、俺達は一気に山の中を駆け抜けていく。決して遠くない距離ではあったし、そもそも足場も悪い状況。だが俺達は突き進んだ――全ては奇襲を成功させるために。


 俺達が攻撃開始した場所から敵の居場所まで遮蔽物などは少なく、こちらが駆け出すと同時に敵方は気付く――が、それでも構わなかった。とにかく相手が態勢を整える時間を与えない……それだけで、俺達は有利になる。

 こちらの動きに対し、魔物達は反応をし始める。けれどその段階で先頭を進む人物は予想以上の速度で駆け、敵の居場所間近まで迫っていた。


 その人物は、アルザ――俺の強化魔法だけでなく、生来持っている能力をフル活用した結果だろう。先陣を切るのは彼女であり、魔物達は咆哮を上げながら迎え撃った。

 アルザへ真っ先に近づいたのは、鎧を着た魔物。おそらく中身が空の鎧だけの魔物だろうと予想がつくのだが、敵はアルザと真正面に対峙して、右手に握る剣を振りかぶった。


 そして彼女と魔物の剣が放たれたのは同時……アルザの剣には退魔の力。一方で魔物の方には特段仕掛けなどはなく……次の瞬間、退魔の剣が魔物の剣を両断した。

 その勢いでアルザは魔物の体へと一閃する。途端、金属が崩れる派手な音が山中に響いた。それによっていまだ俺達に視線を向けていなかった魔物達も一様にこちらへ……アルザのいる場所へ体躯を向けた。


「――迎え撃て!」


 その時、魔族の声がはっきりと聞こえた。声質は男性かつ、青年っぽさを感じさせるもの。すぐさま魔物達は指示に従い一斉に動き出す。

 向こうは即座に態勢を整えた……という風に見えるが、先陣を切ったアルザとしては拙いと感じたことだろう。なぜなら鎧の魔物を倒すと同時、複数の魔物が彼女へ向かい突撃を開始した……が、その動きはバラバラで連携がとれているとは言いがたい。指示には従うが、魔物達は個々の判断で動いている。


 もし奇襲攻撃でなければ隊列を組んでしっかりと応じていたことだろう……魔族はこちらの攻撃に対しどうにか身を守ろうと魔物を差し向けた状況。これならば――アルザの剣が、一際輝いた。

 そして迫り来る魔物を片っ端から両断する……鎧の魔物を瞬殺したことから、退魔の力が有効だと判断して半ば強引に攻め立てた。結果的にそれは功を奏し、彼女の一撃により確実に魔物が減っていく。


 俺はそれを見た魔族がわずかにたじろぐのを確かに見た……判断に迷うところだ。魔物を盾にして逃げるのか、それとも後続が来る前に彼女を仕留めるのか。

 とはいえ、その躊躇は致命的だった……アルザに続いて『黒の翼』所属の戦士一人が魔物へ仕掛けた。得物は戦斧であり、豪快な一撃は獅子のような形をした魔物を吹き飛ばし……その敵は消滅。


 後続の戦士が押し寄せてくる――魔族はそこで決断し、魔物へ指示を飛ばした。


「殲滅せよ!」


 徹底抗戦の構え。加え、魔族は右手に魔力を集める。魔法か、それとも新たな魔物を生み出すのか……考える間に今度はシュウラの魔法が放たれた。生み出されたのは大量の光の矢。数十本からなるその魔法は、シュウラが腕を振ることで一斉に解き放たれた。矢の半数はアルザ達の周囲へ着弾し、もう半分は魔族への攻撃だった。


「くっ……!」


 魔族は声を発しながら魔物を盾にした。直接的な戦闘能力は低いのだろうか? 副会長を手引きした存在は、相当厳重な場所へ入り込んだはずで、相応の力を持っているはず。であれば、他に魔族がいるのか? それとも、目の前にいる魔族が首謀者なのだろうか?


 俺が思考する間にシュウラの魔法が魔物達へ降り注いだ。一発の威力はそれほど高くはないが……強い個体である魔物だとしても、さすがに三発四発と直撃すれば魔物も悲鳴を上げる。当たり所が悪ければ、それで片がつくケースもあり……シュウラの攻撃だけで、アルザの周囲にいた魔物の多くが滅び去った。


 魔族を狙った魔法は、残念ながら魔物に阻まれて届くことはなかったが……それでも魔族の姿が見えるくらいに魔物は滅んだ。彼の魔法でも十二分に倒せる……森で戦った襲撃者は相当厄介だったし、その魔力を所持する魔物は手強いのは間違いないが、俺達ならば対処できるのは間違いなさそうだった。

 そして俺もまた参戦する――放ったのは雷撃。それは太く一本の槍のような魔法。閃光と轟音が大気を切り裂き、今まさにアルザへ襲い掛かろうとした魔物一体を撃ち抜いた。


 さらに貫通して奥の魔物をも巻き込む……ついでに、雷撃が拡散して奥の魔物の周囲にいた個体は動きを大きく鈍らせた。

 魔物を撃滅し、さらに敵の動きを縫い止める効果……動きが鈍った魔物によって、後続の魔物が激突する。結果として場を混乱させることに成功し……その結果を見て取った戦士の一人が驚きの声を上げた。


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