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奇襲攻撃

 索敵魔法が通用しにくい――それはつまり、人間側は情報戦によって不利に立たされることを意味している。

 魔王との戦いだって、事前の戦力などを見極めた上での戦いだった。相手の規模などを踏まえ、国側は必要なリソースを投入する。けれど、もしそれが通用しないとなったら――


「なるほど、な。今回の事件はもしかすると、今後聖王国と戦う上での布石になるかもしれないと」


 俺の言葉に対し、シュウラは深々と頷いた。


「副会長と魔族……どちらがすり寄って技術を開発したのかはわかりません。ただ、結果的に成果が生まれたのは事実……これを放置してしまうのは、後々聖王国にとって憂いになるでしょう」

「なら今のうちに叩く……問題はここにいる面子だけでどうにかなるのか。襲撃者と同質の魔力をあそこにいる魔物が持っているなら、相当に手強い可能性があるぞ」

「この距離ならば魔力は捕捉できますし、少し調べてから動くとしましょうか。とはいえ、魔物の規模から考えると十分倒せそうですが」


 シュウラが率いる戦士は魔王との戦いを経験しているからな……俺達の方も準備はしっかりとしているし、戦えるという自負はある。

 そこから俺達は魔族や魔物の動向を観察しつつ、慎重に魔力を探る……時間にして十五分ほどだろうか。やがて俺達は一つの結論を得た。


「魔物は通常よりも強い……が、対応できそうな雰囲気だ。問題はどんな特性を持っているかだが」


 俺の言葉に対しシュウラは口元に手を当て、


「魔力により能力を補強しているならいくらでも可能性はありますね。攻撃能力、防御能力……あるいはその両方か。こればっかりは、実際に戦ってみなければわからないでしょう」

「普段とは違う特性か。たぶん魔物の種類どころか個体で違ってきているだろうし、間近で観察して判断するしかなさそうだな」

「ここで勝負を仕掛ける、でよろしいですね?」


 シュウラが確認の問い掛けを行う。それに戦士も俺達も、小さく頷いた。


「では、動きましょう……ディアスさん、この場の指揮はどうしますか?」

「戦士を率いているシュウラがやってくれ。俺じゃたぶん無理だ」

「わかりました……まだ距離はありますが、位置的にこれ以上接近すれば気付かれる。奇襲をするにはこの距離から一気に詰め寄るしかありませんが、作戦としてはどうしますか?」

「そこは決まっているな」


 と、俺はシュウラへ告げる。


「敵がまだ気付いていない以上、この優位性を利用する……俺が強化魔法を使い、接近できるだけの速度を出せるようにする。ただ魔力付与する形にするから片道だけの限定になるけど……」

「問題ないでしょう。全員に付与しますか?」

「魔法そのものはそんなに大変じゃないし、この場にいる人間には付与できるが、問題は速度にばらつきが出ることだな。シュウラは俺の魔法を受けたことがあるだろ?」

「はい、そうですね。移動能力向上も、一応経験があります」

「今回使う魔法は、戦場で俺がよく使う魔力を活性化させる強化とは違う、付与するタイプだ。アルザやミリアも俺の強化魔法を受けているから問題ないし、シュウラも経験があるけど……他の面々はたぶん俺の魔力による強化は初めてだよな」

「受けたことがある人とそうではない人で、差が出ると」

「加え、俺の魔法はあくまで能力向上だから、同じ強化魔法でも元々の能力とかで差が出るぞ」

「意図せず先行する人間が出てきてしまうと」

「この場にいる面々だと、シュウラやアルザは確定かな。俺の方も自分で掛ける強化魔法だから、扱いに慣れていることから速度が出るはず」

「他の方は臨機応変に……といったところですね。まあ心配はいりませんよ。こちらは全員、状況に合わせて動くことはできます。そして私は、全体を見回しつつ適宜指示を送ります」


 シュウラの言葉に戦士達は全員一様に頷く。俺は「頼む」と応じつつ、


「ミリアの方はどうだ?」

「不安はあるけど、やれるだけやってみるわ」


 その表情はしっかりとしている。大丈夫そうだ、と思いつつ俺は杖をかざし、


「それじゃあまずは強化魔法を付与する」


 ――作業時間としては、ものの数分で完了。付与した場所は足全体で、全員が魔力の感触を確かめる。


「普段と同じように魔力を込めて移動をしてくれればいい。それに合わせて強化魔法が移動速度を向上させる……残る問題は勢いがつきすぎて転倒するとかだけど、多少無茶な動きをしても足が変な方向に曲がらない限りは大丈夫だから、上手いこと調整してくれ」


 俺はシュウラへ視線を向けると、彼は意を決するように、


「では、始めましょうか――最初が肝心です。先制攻撃をした際の相手の動き、魔物の反応。それらを見ながら、可能な限り素早く敵の数を減らします」


 彼の指示に戦士達は武器を握りしめ――こちらもまた戦闘態勢へ。そこで俺は、


「アルザ、今回の敵は魔物に以前戦った襲撃者の特性が乗っている……退魔は通用するかな?」

「たぶん。最初に攻撃した段階で、それは判断するよ」

「わかった」

「――攻撃、開始!」


 シュウラが号令を掛ける。そこで俺達は、一斉に敵の陣地へ向かって駆け出した。


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