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嫌な予感

 ノルビア山へ向かう前に、俺達は戦うために準備をすることになったのだが……場所はギルド本部の訓練場。エーナに頼んで借りた形であり、


「さて、今から仕込みをやるわけだが」

「具体的には何をするの?」


 尋ねたのはミリア。そこで俺は、


「俺の強化魔法とかを含め、事前にやれることはやっておく……が、ここでミリアに一つ確認したい」

「どうしたのかしら?」

「というより、正直今更な話だが……俺はオーベルクに頼まれて一緒に旅をすることになった。どこまで聞いているかわからないけど、オーベルクの居城にいても危険だから、人間界を旅していた方がいい……という見解も含まれている」

「そうね」


 頷くミリア……と、それで俺が何を言いたいのか理解したらしい。


「つまり、今の状況……魔族と戦っている状況は、私のことを危険にさらすということに他ならない、というわけね?」

「旅をし始めて最初に魔族と戦ったり、王都襲撃のこともあったから今更な話ではあるんだけどな……ただ王都との戦いにおいて、ミリアのことが魔界側へ確実に伝わったはずだ。ミリアは魔王候補であった以上、危険じゃないのか?」

「むしろこうした活動は私にとって良い方向になる可能性もあるわ」

「……どういうことだ?」


 俺の問い掛けにミリアは苦笑しながら解説する。


「簡単な話よ。私は不戦派だからといって、英傑と手を組んでいるとなったら……さすがに私を魔王候補だとして推挙する存在はいなくなるでしょ?」

「ああ、なるほど。厄介の種がなくなるのか……ただそれは、裏切り者として攻撃を仕掛けてくる危険性はないのか?」

「わざわざ人間界にまで来て攻撃をするなんて輩はいないわ。私を魔王とするべく動いていた同胞だって、私がいなくなれば代わりを探すだけだし」


 と、そこまで言うとミリアは小さく肩をすくめた。


「叔父様はその辺りのことをわかった上で、私を送り出した面もあるでしょう」

「それはつまり……俺が魔族と戦うだろうということを予測していた?」


 ――いや、というかそもそもオーベルクは俺に魔王が人間界に侵攻した真実を伝え、興味があれば調べるといいと提言していた。それを踏まえれば、俺が魔族や魔界と関わりを持つと考えるのは当然だし、むしろそう促しているようにも思える。


「ミリアとしては問題ないみたいだが、評判を落としているわけだよな?」

「私は魔界が危険だと考え、逃げた。その時点で評判なんか地に落ちているわよ」

「……そうか。まあ、ミリアが納得しているならとやかく言う必要はないか」

「ええ、それに」


 ミリアはここで、強い眼差しを俺へ向ける。


「私は魔族だけれど、人間界への侵攻……これを止めたいと願っている存在でもある」

「不戦派である以上、人間に襲い掛かる存在は倒さなければいけない、と」

「そういうこと。ともあれ、私なりに今後については考えている。そしてこの旅を通して、魔界へ戻るのか人間界に居続けるのかを、見極めたいと思う」

「……わかった」


 ミリアが納得しているのであれば、それでいいか……と、ここで俺は一つ疑問を抱き、


「なあミリア、それでも魔王候補として推挙されたら……どうするんだ?」


 俺は彼女へ問い掛ける。それに当のミリアは無言となり……横にいるアルザは固唾を飲んで見守る。


「……これは私の、勝手な推測なのだけれど」


 と、やや言葉を選ぶようにしてミリアは応じる。


「私は、魔王に……なってはいけないと思うの。なんだか、嫌な予感がして」

「その予感は、正解だろうな」


 ――俺の言葉にミリアは目を丸くした。


「何か、知っているの?」


 俺は肩をすくめた。どちらともとれる形だが……こちらが声を発しないためか、


「……こうやって一緒に旅をしていたら、知ることができるかしら?」

「さあな……と、ミリアの覚悟はわかった。正直、次の戦いは戦力的にも前に出てもらう可能性があるし、改めて確認しておきたかった」

「今話すのが適切だと私も思うわ」

「そうか……王都襲撃に始まり今回の騒動。もしかすると魔界は俺達が思った以上に色々と人間界に干渉しているのかもしれない。情勢は刻一刻と変化していくだろう。ミリアの方も、人間界で得られる魔界の情報は限定的だと思うけど……懸念があればすぐに言ってくれ。こちらは可能な限りフォローするし、危険だと感じたら待機で構わないから」

「ありがとう」

「よし、ならこの話はひとまず終了。では改めて準備だが……まずはミリアの方からいこうか。ただ、その前に一つ確認したいことがある」


 俺の言葉にミリアは黙ったまま視線を送ってくる。


「剣と魔法……どちらもそれなりにこなせるみたいだが、ミリアとしてはどちらの方向性で戦っていきたい?」


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