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英傑の考察

 ――そうして俺達は大きめの会議室で話をする。ちなみに今回シュウラと帯同した戦士は十人ほど。とはいえ全員が全員、あの魔王との戦いを経験している。さすがに最前線で戦っていたのはシュウラだけだが……猛者であるのは間違いないし、十分過ぎる戦力だ。


 で、俺が事情を伝えると、


「なるほど、国側に内通者……というか、圧力を掛ける存在がいるかもしれないと」

「あくまで可能性の話だ。シュウラは無理に首を突っ込まないでくれよ」

「わかっています。さすがに国に関わろうとすれば命がいくつあっても足りませんし、ね」


 肩をすくめながら応じるシュウラ。この様子なら大丈夫そうだな。


「そしてノルビア山へ向かい、調査を行うと」

「そこに副会長がいるかどうかは未知数だけど」

「ふむ……」


 そこでシュウラは考え込むような仕草をした。すると周囲の戦士はじっと彼を見守る。

 そんな姿は俺も見慣れていた。情報を手に取るとシュウラは、時折こうして考え込み、自身の考察を語るのだが、


「何を考えている?」


 そんな問い掛けに対しシュウラは、


「副会長の魔力の質について」


 彼の言葉に俺は首を傾げる。そしてこちらが口を開く前に、ミリアが先んじて問い掛けた。


「副会長が、何を?」

「彼は人間であり、魔力を捕捉するための情報は手に入る……それでもなお見つからないとなった場合、魔力を隠蔽できるか魔力の質を変えたという可能性が浮上するわけですが」


 と、シュウラはミリアを見返す……事情を話してはいないが、彼は以前とは異なりミリアの気配から魔族であると感じ取れなくなっているはずだ。


「では副会長がそのどちらかを実行したのか? 私自身は否定的な見解です。今回の逃亡、仮に魔族が手引きした場合、あり得なくもないですが魔族が人間に魔法を施す場合は相当繊細な技術が必要なはず。人間が魔族の技術を利用して色々やるというのはわかりますが、逆のパターンは考えにくい」


 ……まあ、確かに魔族が人間に対し骨を折ってどうにかする、というのは想像しにくいな。


「仮に魔族が頑張ってそういう魔法を開発したとしても、肝心の副会長自身に維持する能力がないわけです。大層な技術を得てディアスさん達と戦える存在を生み出したにしろ、副会長本人は戦闘能力が皆無。魔力の質を変えたとしても制御しきるのは難しいでしょう。気配隠しを素人と玄人がやって、素人があっさり見つかるのを同じ論理です」

「なら、どうして見つけられないの?」

「単純に、物理的な距離で捕捉できなかったのではないでしょうか」


 つまり、逃亡して俺達の索敵から逃れたということか。ただミリアはさらに反論する。


「けれど、ディアスやアルザによって広範囲に索敵を行った……もちろん二人は副会長がいた場所も確認したようだし――」

「もちろん、ディアスさんに抜かりはないでしょう。そして現在進行形で国やギルドが居所を調べている……先も言ったとおり副会長が魔力を隠蔽するにしても、その維持は困難なので普通ならばどこかで見つかるでしょう。であれば、単純に索敵範囲から逃れている可能性が高いかと」

「それじゃあ、具体的にどこに逃げたの?」


 さらなるミリアからの問い掛けに対しシュウラは、


「上か下か、ではないですか?」


 ……ああ、なるほどと俺は納得した。


「確かに言われてみたら、地中深くまでは調べようとしなかったし、まして遙か上空なんて思いつきもしなかった」

「常識的には考えにくいですが、そういったものを取り払いあらゆる場所を調べることが重要でしょう。逃げる算段があったのなら、当然絶対見つからないだろうと自負している場所にアジトを構えているはずですし」

「下はわかるけど、上って?」


 疑問はアルザからのもの。それにシュウラは笑みを浮かべ、


「例えば、魔族の手引きによって飛竜などを呼び寄せて空から脱出した……とはいえ、さすがに派手ですし逃亡するにしては無茶な方法ですね。牢を抜け、地中深くに潜ったと考える方が可能性としては高いでしょうか」

「索敵してみる?」

「アルザが? いえ、私達はノルビア山へ向かいましょう。索敵についてはギルドの方々に任せた方がよろしいかと」

「ま、確かに山に副会長がいるという可能性もあるわけだからな」


 俺は頷き、シュウラの言葉に賛同する。


「なら明日にでも出発しよう。とはいえ大所帯だ。作戦が終了するまでどのくらい掛かるか」

「いち早く山へ向かえるよう、馬の手配などはこちらがやります」


 そうシュウラは俺達へ述べた。


「準備についてはこちらに任せてください」

「なら俺達は……」

「そちらもまた準備を。次の戦い……多数の魔物がいたとなれば、少数で大規模な戦闘になります。相応に対策は必要かと」


 なるほど、確かに……俺はシュウラと目を合わせ、


「なら、貴重な時間を遠慮なく使わせてもらう」

「はい」


 返事を聞くと共に俺はこれからやることを頭の中に思い浮かべる……それはすなわち、


「ミリア、アルザ。こっちは次の戦いに備え、色々と仕込みを行おう――」


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