表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
151/487

事の顛末

「――当初、一番懸念していたのは今回襲撃した個体以外に敵がいるのか、ということだった」


 俺達は執務室へ入ると、相変わらず机の上に資料の束が積まれており……そんな状況の中で、エーナは語り始める。


「でも、副会長の証言によって敵は交戦した一体だけだと判明した。よって、事件は解決。増援として呼ばれた騎士も駐屯地へ戻ったよ」


 そういえばここ数日くらいで騎士の姿はほとんど見なくなっていたな。副会長から情報を得て解散したらしい。


「あれだけ強力な個体を複数体用意するというのはできなかったみたい。そもそもギルド本部に対し破壊工作を行うにしても、建物を倒壊させるレベルは必要ない。だから、計略を成功させるためには一体で十分だった、というのもある」

「現在副会長は牢屋の中か?」

「今は騎士に囲まれて色々と調べられているんじゃないかな?」

「家とか調べられていそうだな……ま、何にせよ捕まったわけだしこれで事件解決か」


 もし、ここからさらに話が進むとしたら……などと邪推していると、エーナが話を続けた。


「これで騒動は終わり……破壊された建物の惨状を見るに、個人的にはまったく事件は終わっていないけどね」

「そこは頑張ってくれ、としか言いようがないな」


 俺の言葉にエーナは苦笑。横で立っているノナもまた似たような表情だった。


「副会長については他に何か情報はあるのか? 例えば、どうやってあれほどの力を持つ存在を生み出せたのか、など」

「そこは調べているけど……現在手に入った情報などを統合すると、ギルド本部から色々情報を抜いた上で、魔族かそれに類する存在、もしくは物の助力があって実現できた、ということなのだと思う」

「魔族はわかるけど、類する存在? あと物?」

「魔族の影響を受けた人間とか、あるいはダンジョンで手に入れた道具とかを基にしたとか」


 ああ、なるほど……ただ、そういう推測だと、


「現状では、いくらでも可能性が考えられるってことか」

「そうだね。今の状況だと何とも言えない……ということで、現時点でわかったことは以上だね」

「仮に副会長について完璧に調べがついたら、詳細は語ってもらえるのか?」

「それは動機とか、あるいは襲撃者に関しての情報とか……そういった諸々全て?」

「ああ」


 エーナは渋い顔をする。まあギルドの機密情報とかに触れそうだし、全てを知ることは難しいかな?


「うーん、調査そのものに時間が掛かるからどうとも言えないなあ」

「そうか……ま、事件は解決したと考えてよさそうだし、ひとまずその情報だけで満足しておくかな」


 俺は幾度か頷いて納得する素振りを見せ、


「それじゃあ、俺達は退散するよ。仕事頑張ってくれ……と、俺への依頼についてはもうないのか?」


 その問い掛けに、エーナは沈黙。それと共に何事か考えるように視線を落とした。


「あー、えっと、そうだね……」

「煮えきれない返事だな」

「まああると言えばある、ないと言えばない」

「どっちなんだよ」


 なんだか曖昧だなあ……どうしたものかと考えていると、ここで口を開いたのはミリアだった。


「少し、町に滞在してもいいかしら?」

「ん、何かあるのか?」

「ええ。それに個人的な要件でエーナさんに頼みたいこともあるし」


 ギルドに所属する彼女に対し、要求があると……と、ここでアルザもまた手を上げ、


「私も少しやりたいことが」


 二人ともか。ふむ、まあそれなら――


「わかった。エーナ、ミリア達のやりたいことが終わるまでは町に滞在しているから、何か用があれば言ってくれ」

「う、うん。わかった」


 小さく頷くエーナ。その表情は、なんだか安堵したというか……とにかく、色んな感情が見え隠れしていた。

 やっぱり少し様子が変だと思うのだが……まあ、詮索しても答えは返ってこないだろうし、別にいいか。


「ミリア、アルザ、行こうか」


 俺の言葉に二人は首肯し……廊下へと出た。


「俺は宿屋で休んでいるから、エーナと同様何か用があれば言ってくれ」

「わかったわ」


 ミリアが返事をする。ふむ、なんだか決意をみなぎらせているような……いや、これから使命を果たそうというか、そんな空気感すらあった。

 一体何があるのだろう……興味はそそられたけど、俺は尋ねることはせずギルド本部の外へ出るべく入口へ足を向けようとした……その時だった。


 何やら慌てた様子で男性のギルド職員が俺達とすれ違った。どうやら目的地はエーナのいる部屋……俺はなんとなく予感がした。


「ミリア、アルザ。少し待ってくれ」

「どうしたの?」

「嫌な予感がする」


 その言葉でミリア達は立ち止まった。次いで職員が扉を開け放つ音が聞こえた。

 俺はエーナのいる部屋へと目を向ける。男性はよほど急いでいたのか扉を閉めようとしなかった。具体的な会話内容は聞き取れなかったが、相当切迫している様子が窺え、


「……部屋に戻った方がいいかもしれないな」


 その言葉と同時、エーナの驚愕する声が俺達の耳にも入ってきた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ