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国への信頼

 エーナと訓練を行って数日後、ようやくノルビア山へ入る許可が出た。よって俺とミリア、そしてアルザは町を出発する。


「時間は掛かるだろうけど、薬草採取そのものは問題ないと思う」


 自生している場所などを考慮すると、魔物と遭遇しても対処は十分可能だろうし……そう内心思っていると、街道を進む道中でミリアから質問が飛んだ。


「そういえばディアス、エーナさんと訓練した以降、顔を合わせた?」

「いや、一度も。たぶん忙殺されているんだろ」


 結局訓練についてはあれ以降一度も呼ばれなかった。まあ俺の所にわざわざ出向いて訓練を頼む……というのも面倒だろうしこればかりは仕方がない。

 検診を行った日以降、彼女と会うことはなく……ミリアとアルザは互いに顔を見合わせて何やら話している。


「どうした、二人とも」


 首を傾げながら言及すると、ミリアが反応。


「あ、ううん……なんというか、奥手だなと思って」

「奥手?」

「あ、えっと……ごめん、こっちの話」


 結局何なのかわからない……ので、話を戻す


「道中も危険はないと思うけど、魔物がいないとは限らない。念のため注意してくれ」

「わかったわ」


 ミリアは返事をして、アルザは小さく頷く。そこからはゆっくりとした足取りでノルビア山へと向かうことになったのだが、


「今後、魔界はどうなるんだろうね」


 アルザがふいに声を発した。


「私達が戦った魔族って、結構偉かったんでしょ?」

「……ミリア、その辺り予測って立つのか?」


 問い掛けるとミリアは神妙な顔つきとなる。


「そうね……あの魔族は確かに魔界でも相応の権力を持っていた。彼を次の魔王へ、という考えを抱いている同胞も多かったはずだし……少なからず影響は出ると思うわ」

「また人間界へ攻め込んでくる魔族が出ないとも限らない……か?」

「どうかしら。正直、魔王に続いて魔王候補が滅んだ……となれば、当面手出しはできないのではないかしら」


 ミリアはそう告げつつ、自身の考察を語る。


「魔界側からすれば二連敗……人間達が魔族の攻撃を覆せるだけの力を持っていることは確定している。魔王との戦いで敗北したのは決して人間側のまぐれではない……だからこそ、もし次に攻撃をするにしても、より綿密かつ準備をすると思うわ」

「力押しでは通用しないことがわかったため、か」

「そうね。そもそも魔界側は連敗したことで相当に消耗しているし、人間界にちょっかいを掛ける存在が現れるにしても、当面先だとは思う」

「だといいけどな……」


 正直、三度目の戦争なんてやりたくはない……現時点で人間界側にそれほど被害が出ていないが、もし次の戦いが起こった際、同じようになるとは思えない。あと、


「逆に人間側から攻めようなんて言い出していないのは幸いかな」

「さすがに聖王国はやらないわよね?」

「そう主張する好戦派もいるとは思うけど……魔王を失ったとはいえ、魔族は脅威だ。さすがにそんな無茶をするとは思えないな」


 肩をすくめながら応じる俺。これで話は一段落か……と思ったのだが、


「ただ、一つだけ気になることが」


 ミリアの話には続きがあった。


「純粋に力で征服しようという同胞が出てくる可能性は低いけれど、将来の布石として仕込みを行う可能性はある」

「多数の魔物を仕込んだみたいに、か……聖王国はそれだって調べるとは思うけど」

「ダンジョンを建造する、といったことだけではない。人間社会に入り込み、こちらの動向を観察するとか……」

「さすがにそこまでいくと、止めるのは難しいだろうな」


 俺は頭をかきつつミリアに言及する。


「普通の人が魔族かそうでないかを見分けるのは無理だし、な。ただそういう手法を用いるとなったら、一年や二年どころの話ではないし……当面戦争はないか」

「そうね。ただそういうやり方だと……」

「俺達の出番はなくなるだろうな。極論、魔王を倒した英傑を対処する方法は寿命でくたばるまで待つ、というのが一番簡単な方法だ……その場合、魔界に対応するには国が動く必要がある」

「聖王国が、ね……問題は魔族が来るかもしれない、という警戒を百年単位で維持できるのかしら?」

「聖王国には悪いけど、さすがに俺もそこまで面倒見られないな……未来の人達に託すほかない」


 俺の言葉に対しミリアも「そうね」と応じるだけ……彼女は聖王国の行く末がどうなるのか見続けることになるだろう。もし百年後魔族が押し寄せ、その時どうなるのか……俺としては遙か未来の話だし、想像することも難しい。


「ま、魔界側が次の戦いのために布石を……ということだとしても、聖王国側だって同じだろうと思う。国がどういう決断をするのか……そこについては、お手並み拝見といったところだな」

「ディアスは国を信頼しているのね」

「国、というよりは英傑のクラウスなんかを信頼しているって感じかな。魔王と戦った彼がいる今なら、将来の戦いに備え準備は進めているさ」


 俺は彼の顔を頭に浮かべつつ、話す。


「俺達がどうにかできる話でもないし……こっちは、自分の目標を達成するため、仕事をやりつつ旅を続けることにしよう――」


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