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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第一章

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魔族討伐

 騎士達がどんどんと進撃する中、魔物は後退を余儀なくされて敵は次第に不利な状況になっていく。そのスピードは俺が予想していたよりも早く、支援魔法によって相当士気が高まり勢いがあるようだった。

 魔物の能力的に、今の騎士達なら魔族の下まで到達するだろう……とはいえ、他ならぬ魔族に動きはない。魔物の数は減り続けているが、どうやら砦の中にまだ魔物がいて、それを使って反撃するつもりらしい。


「ミリア、まだ動きはないな?」

「ええ」

「よし、ならこれで――」


 準備を済ませ、俺は杖を掲げてから、地面に振り下ろした。勢いよく杖が地面に当たった瞬間、光が生まれ魔力が一気に砦の城壁に沿う形で駆け抜ける。

 何が起こったか……刹那、砦を囲うように結界が形成された。


「外に出さないようするための結界だな」

「相手を閉じ込める檻というわけね……結界をこういう風に利用するとは」


 どこか感服したような声をミリアは漏らす。そんな彼女に対し俺は、


「単なる防御魔法でも、使い方次第では攻撃にも転用できるって話だよ……さて、それじゃあ行こうか」


 俺は城壁に近づき、杖を一つ振る。それによって生まれたのは多数の矢。俺の結界は当然ながら自分自身の魔法を妨げたりはせず……魔法が城壁に着弾し、破壊した。

 位置的には砦の入口からみて反対側。俺はミリアを伴って侵入すると、入口側に多数の魔物がいるのを目に留めた。


「入口から迎え撃つつもりだったみたいだな」


 魔物はこちらに気付いたみたいだが、俺は無視して目の前にある建物に目を向ける。


「魔法的な仕掛けは何もない。そして、魔族を倒せば魔物の動きも鈍る」


 魔法が炸裂する。光によって砦の建物を破壊し、奥にいたのは……蒼白な顔を持ち黒衣に身を包む痩身な男性魔族だった。


「くっ……!」


 声を発しどうすべきか思案し始めた様子だったが……相手の視線が俺ではなくミリアに向けられた。


「なっ……!? ミリア=ラシュオン!? どうして貴様がここにいる!?」

「確認だけどミリアって魔族の間では有名なのか?」

「家柄により、顔を知っている同胞は多いわね」

「……俺は魔族が逃げる場合に備えて妨害魔法を構築する。仕留められるか?」

「あなたが魔法をくれたから、問題ないわ」


 ミリアが前に出る。その手には一本の剣――魔法で生み出した物だ。


「私のことを知っているのであれば、私が魔王に反目していたことは知っているはず」


 ここで、砦の外が騒がしくなった。騎士達が砦の周辺に到達したらしい。魔物達は俺達へ仕掛けようとしていた様子だったが……すぐに入口へ目を向けた。たぶん門へ近寄る敵を倒せと命令されているのだろう。よって、俺達の障害となる存在はいなくなった。


 そうした中、ミリアは語る。


「魔王は潰えた。これ以上、人間と争う必要はない……故に、人を攻撃するあなたを放置することはできない」

「ぬかせっ……!」


 魔族は驚愕の気配から一転、吠えるような声と共に突撃を敢行する。手には体の細さとは似つかわしくない大振りの大剣。魔力で強化すれば自在に扱えるはずなので、見た目は関係ないが……恐ろしいほどの俊敏さで、ミリアに迫る。

 それに対し、彼女は動かなかった。というより、待ち構えて問題ないと感じたのだろう。俺の強化魔法は身体能力に加えて反射神経なども向上する。ギリギリまで相手の動きを見極めてからでも回避できる……そう判断してのことだ。


 そして魔族が横薙ぎを放った瞬間、ミリアはとうとう動いた。斬撃の軌道をしっかりと見極め、伏せるようにして魔族の一閃をかわしてみせた。


「っ……!?」


 魔族は必殺の一撃をかわされて驚愕し――その間にミリアが懐へ潜り込む。強化魔法による恩恵か、その動きは洗練され、達人を思わせる……剣の鍛錬はしてきたのだろう。単なる強化魔法の補助だけであの動きはできない。

 そして、敵が大剣を引き戻し応じるより先に、彼女の剣が魔族の胸部へ叩き込まれた。悲鳴が聞こえ、後退する魔族。そしてミリアは一片の容赦もなく追撃を仕掛ける。


 その瞬間、俺は魔族の視線が彼女ではなく俺を捉えたことに気付いた。それと同時に、全てを理解したような……なぜミリアがここまで強いのか、悟った様子だった。


「久遠の……英傑――」


 呟いた瞬間、ミリアの剣戟が炸裂し、魔族はとうとう倒れ伏した。そして体がパキパキと割れ始め、崩れていく。戦闘終了だ。


「後は門付近にいる魔物を……」


 そう思ったが、歓声が聞こえてきたため必要ないと悟った。予想以上に効率的に……俺の魔法による支援が上手く効いたようだった。


「これで戦いは終了だな」

「……本当なら、犠牲を伴う戦いだったでしょう」


 ふいに、ミリアが俺へ向け話し出す。


「でも、あなたは支援魔法によって――」

「俺は単に助力をしただけ。大したことはしていないさ」


 そう応じつつ、俺は足を外へ向ける。


「後は隊長さんに任せて山を下りよう。それで仕事は完了だ」

「そうね」


 ミリアは頷き、俺の後についてくる……こうして、魔族討伐の戦いは終わりを告げたのだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 自分探しという感じじゃなくシリアス系で草
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