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事態の収束

 その後、聖王国内で暴れていた魔物は全て駆逐された。ルードを始めとした騎士の奮闘もあって、魔族を倒してから三日後には事態は収束。

 その間、俺達はひとまず国側から用意された宿の一室に押し込められた……国としては話をしたいが、まだ魔物がいるため忙しく時間がとれない、ということらしかった。宿代とか食事代とか全部タダだったので、こちらは休暇だと解釈して宿にこもって食っちゃ寝をしていた。


 ちなみにロイドやセリーナは顔を出さなかった……国側とコネクションがある二人ならば俺の居所なんてすぐに調べがつくはずだったが、結局来なかった。

 ふと、魔族にトドメを刺したセリーナの姿を思い返す。遠視の魔法を使用しその姿を見て取ったわけだが……彼女もまた、俺のことを見ていたはず。それは果たしてどういう心情だったのか――


 色々と考える中、騒動が一段落した時に俺は城へと呼ばれ、クラウスと話をすることに。同行者はミリアとアルザの二人。ニック達については俺達の後に別で話をするつもりらしい。


「――さて、度重なる協力、礼を言わせてもらう」


 小さな会議室で、クラウスは俺達と向かい合う形で座り、礼を述べた。次いでこちらを見回し、


「シュウラ君などから報告は聞いているよ。アルザ君に加え、不戦派の魔族……先に言っておくと、国は魔族だから何かをするつもりはない。そこは心配しないでもらいたい」


 やや緊張気味のミリアに対しクラウスは語る。


「そしてディアス、自分探しの旅をする……として国を回っているのはいいが、実質やっていることは戦士団に所属していた時とそれほど変わらないんじゃないか?」

「うん、俺もそう思ってた」


 こちらの返答にクラウスは苦笑した。


「まあいいさ……さて、ここに呼んだのは今回の戦いについて、色々と聞かせて欲しい。あと、騎士団について何か気になることがあればコメントしてくれ」


 ――時間として一時間ほどだろうか。当たり障りのない内容を話して俺達は解放された。よって王都を出ても問題はなくなったのだが……、


「ディアス、これからどうするの?」

「んー……」


 ニックはきっと、国と話をした足で王都を出て行くだろう。それに対し俺達は、


「報酬をもらってから……旅を再開してもいいけど」

「なんだか魔族との戦いに首を突っ込みそうな雰囲気だね」


 うん、まあ……ミリアがいることからもそうだけど、なんというか魔族の動向について敏感になっている気がする。

 たぶん今回の戦いについては、例えミリアがいなくとも俺は参戦していただろう。ただ、情報を漁ったりはしないだろうから、クラウスから礼を言われて終わりのはずだ。


 けれど、今は……ただ、俺の方から調べてどうこうするという気はない。そこは国の仕事だろうし、そもそも俺は戦士団を抜けた身だからな。


「……まあ、とりあえず目標はないな。どこか行きたいところとかはあるか?」

「……うーん」


 アルザはうなる。ミリアも特に心当たりがない様子。

 まあ、当てのない旅もそれはそれで……アルザの方は目的があるから、そういう旅については微妙かもしれないけど。


 ただ今回の報酬をもらえば、それこそ当面仕事をする必要はなさそうだし……などと考えつつ冒険者ギルドを訪れる。するとそこで、


「……呼んでいる?」

「はい」


 問い返した俺に受付の女性が頷く。何でもギルドで役職に就いている『六大英傑』の一人……その人物が俺に用があると。

 聖王国にある冒険者ギルドの本部は王都ではなく王都から東に位置する町にある。つまりそこまで来て欲しいということらしい。


「わかった、ありがとう」


 報酬を受け取り、礼を述べつつ俺は冒険者ギルドを去る。そしてミリア達と合流した後に事情を話すと、アルザが問い掛けてきた。


「こういうことって、よくあるの?」

「戦士団に所属していた時、呼ばれることはあったな。その理由はなんてことのないものばっかりだったけど」


 例えば魔法の実験に付き合ってくれとか、相談に乗ってくれとか。一応七人目の英傑として手を貸して欲しいというパターンもあったし、俺を呼ぶことに対しそれなりに理屈は存在していた。

 今回の場合は……魔族絡みだろうか? それとも今までみたいに、何も関連のない事柄だろうか?


「王都を出て特に行く場所もないし、ひとまずギルド本部へ向かうってことでいいか?」

「うん、いいよ」

「私も構わない」


 アルザとミリアの了承を得たので、俺達は王都を出るべく歩き出す……ふと、俺はある方角へ目を向けた。それは戦士団『暁の扉』の拠点がある方向。


「……結局、何もなしか」

「ディアス?」


 ミリアの問い掛けに俺は「何でもない」と応じつつ、移動を再開する。そして城門を抜け、新たな目的地へ向かうべく……街道を歩み始めた。


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