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急展開

「ディアス、王都の北側に怪しい気配がある」

「位置は?」

「んー、距離を具体的に言うのは……」

「おおよそでいい」

「えっと……あ、近くに山らしきものがあって、なおかつ魔力がわだかまっている。これはここと同じような集積点かな?」

「わかった……ひとまず魔法を解除するぞ」

「うん」


 俺は杖を振って魔法陣の光を一度消した。そして荷物から聖王国王都周辺の地図を取り出す。


「アルザが示したのはこの辺りだな」


 そして仲間達に地図を使って示すと、ニックがうなった。


「王都からそれなりに距離はある……が、かといって遠方というわけでもない、絶妙な距離だな」

「たぶんだが、魔物が外に出て奇襲を掛けるのに、このくらいの距離が丁度良いってことなんだろうな。敵に悟られず、かといって奇襲も十分できる距離……魔力の集積点も存在している場所だし、それが目くらましになっている可能性もある」

「王都側に連絡するのか?」

「もちろん。冒険者ギルドを介して調べるようお願いすればいいかな」


 俺は王都へ目を向ける。戦士団を抜けて結構な早さで舞い戻ってきてしまったわけだが、まあ魔族による攻撃だ。仕方がない。


「とりあえず王都に入って――」


 そう告げようとした時だった。遠くで爆発音のようなものが聞こえ……仲間が眉をひそめる間に俺は遠視の魔法を活用し、


「……もう動き出したぞ」

「おいおい、どうするんだ?」


 ニックが驚いた声を上げながら俺へ問い掛ける。


「さすがに俺達だけで向かってもどうしようもないぞ。そもそも間に合うのか?」

「……いや、さらに状態はまずいな」

「まだ何かあるのか?」

「北側以外にも、どうやら王都からやや距離はあるけど魔物の部隊が出現した……波状攻撃だな」

「おいおい、マジかよ……しかも、これだけの魔物を潜ませているとは――」

「その技術も驚くが……王都側も防備はしているはずだけど、北側に加えてさらに別所から敵、となると多少なりとも混乱するはずだ」


 そこで、遠視の魔法で王都を観察。すると、慌ただしく城門から騎馬隊が外に出るのを確認した。


「周辺に潜伏しているのを考慮して、いつでも動ける状態になっていたか」

「ディアス、私達はどうする?」


 次に質問したのはアルザ。ここで俺は一考し、


「うーん、魔族の居所を見つける、というのは敵が動き出したから意味はないからな……後は騎士団に任せるしかないけど、援護することくらいは……」


 俺は仲間達へ視線を送る。全員がやる気を見せており、戦意はある。


「……わかった。なら参戦しよう。ただ問題は、どこの助けに入るか、だ」

「出現した中に本命がいるのかな?」


 アルザがさらに問い掛けてくる。そこで俺は、


「……もう一度、魔法を使うか」

「ディアス?」

「遠視の魔法を使うにしても、さすがに大軍の中にいる魔族を発見するには難しいが、気配で特に強い魔族を探せばいいんだろ? ミリア、そっちが想像している魔族は、高位魔族ではあるんだよな?」

「戦闘能力が高い魔族と比べれば、戦闘能力は低いけれど、並の魔族相手ではとても勝てないくらいの力は持っているわね」

「なら、その魔族を探し出して援護に行くとしようか」


 俺の言葉に仲間達は同意するように頷き……再びアルザの力を用いて索敵を始める。

 そこからおよそ数分後で結果は出た。魔族の居場所は北側……ただ最初に俺達が捕捉した場所ではなく、さらに奥。そこに、明らかに他とは異なる魔力を感じ取ることができた。


「波状攻撃で騎士達の動きを見だした上で、いよいよ本命か……これだけの魔物を生みだし潜伏させたのもそうだが、タイミング良く一気に展開する策略……ただものじゃないことは確かだな」

「ここで仕留められるなら、仕留めたいところだな」


 と、ニックは告げると俺へ顔を向ける。


「ここで取り逃がしたら、間違いなくまた同じことを繰り返すだろ」

「そうだな。同じこと、どころかさらに狡猾な作戦を用いてくるだろうな……」

「なあ、ディアスの見解を聞きたいんだが、この一連の攻撃で王都は陥落すると思うか?」

「微妙なところだけど……いや、王都の外側で展開している騎士達の数を考えたら、相当分散しているな。本命の部隊……その強さに掛かってくるけど、もし止められないまま城門を突破されたらどう転ぶかわからないな」

「なら、城門は越えさせないように」

「いや、王都に近づくより前に倒さないと」


 北側から攻め寄せてくる敵についても、騎士団が対処し始めた。たださらに後続が来る……王都側は魔界へと繋がる北部へ警戒を強めたか、明らかに北に布陣する軍の規模は大きいのだが、もしあれらを突破されたら――


「……北部へ向かおう」


 俺の言葉に一同頷き、移動を開始する。この戦い……さすがに俺達だけで終わらせることは難しいが、戦局を変えることはできるだろう。

 後は王都に残っている戦士団の協力もあれば……頭の中にセリーナやロイドの顔を浮かべつつ、俺はミリア達やニックと共に、王都北へと急いだ。


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