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光の槍

 ルード達が突撃によっていよいよ魔族へ挑もうとしている時、俺達は押し寄せてきた魔物を倒し、こちらもまた魔族へ歩を進めた。俺達が加勢に加わった場所は騎士達が態勢を整え、他の場所を援護し始めている。乱戦が続いていた場所も援軍が加わることで対処することができており、戦況は明らかに人間側へと傾いた。


「これなら、いけそうだな」


 俺は小さく呟きながら、ルード達の戦いぶりを見る。騎士達の突撃によって魔族を守っていた魔物達が駆逐されていく。さらに言えば魔族の周辺には人間がいないため、味方を巻き込む恐れがある魔法も存分に使用できる。よって、乱戦を仕掛けていた場所より明らかに魔物を倒すペースが早かった。

 ルード達がこうした軍勢と戦うのが二回目、という点も大きい。魔物の力量などを把握していることで撃破効率が上がり、魔族へ迫っていく。一方で相手側は……どうやら想定外のペースでやられ続けているらしく、周囲にいる魔物達を振り向け時間稼ぎをするしかできない様子だった。


「おい、ディアス」


 ふいにニックが俺へと呼び掛ける。


「このままルードに加勢するのか? それとも、側面にでも回って逃げ場をなくすのか?」


 ……俺は遠視魔法を使用しつつ一考する。魔族がいる場所は戦場でも端の方であるため、ルードが真正面、俺達が横から攻めても魔族は後ろに逃げることができる。ただし、そうなれば当然戦場に残る魔物を見捨てることになるし、命令により引き戻したとしても騎士達が完全に態勢を立て直す。俺達やルードを始めとした援軍がいる状況で攻撃されれば、魔族側はひとたまりもないだろう。

 ただ、進退窮まって魔族がどういう行動をするのか……魔族の周辺ではまだ乱戦が続いている場所もある。俺達が無理に突撃をして魔物達が背後から差し向けられたら……多少ながらリスクはある。よって、


「いや、ひとまず乱戦である状況を改善しよう」

「あくまで堅実に、ってわけか」

「攻めはルード達がやってくれているからな。無理な攻撃をして俺達が危なくなったら誰も援護してくれる人はいないだろうし」

「俺達なら大丈夫だと思うけどなあ」


 ニックの仲間は彼の言葉に同意するように頷いたが、俺は「それでも」と告げて魔物を倒しに掛かる。さらに状況は進展し、乱戦により暴れている魔物の数が目に見えて減ってくる。

 その状況下で、いよいよルード達は魔族へ肉薄した。敵は退却という選択肢はとらなかった。ただ、魔物による壁を作り、後退しながら戦力を少しずつ削っていくという方策を選んだ。


 それはどうやら、時間を稼ぐとか何か策があるという雰囲気ではない。追い込まれた状況であるため、必死に打開できないか試行錯誤している。ただその間にも俺達はさらに攻勢に出る。時間が経てば経つほど魔族にとって戦況は悪化していくことになる。

 最大の懸念は魔族自身の強さだが……いよいよルード達が魔族へ挑んだ。周囲にいる魔物を倒し、騎士達が持っている槍が魔族へ襲い掛かる。


 だが魔族はそれを魔力を込めた腕で払いのけた……が、次々とやってくる刺突に対し苛立ったように後退する。

 即座に魔法などで迎撃を始めれば、被害が出る可能性もあったのだが……魔族は魔物を差し向けて逃れようとする。しかし騎士達はなおも魔物を倒し、魔族へ迫ろうとする。それに対しとうとう魔族は魔法を放つべく構えた。さすがにここまで近づいてきたら相応の攻撃をしなければならない、という判断のようだ。


 正直遅すぎると思うのだが……魔族が魔力を収束させる間に、俺は杖先に魔力を込めた。まだ距離はあるが、遠視魔法を使わずとも肉眼で確認できるため、ならば魔法は使えると考えたのだ。

 ルード達は猛攻を仕掛けているが、さすがに魔族が後退する速度が上で、魔法発動を許してしまう……ルードの目にどうすべきか迷いが生まれた。魔法が直撃すればさすがに騎士達も無事では済まないだろう。とはいえ今退却すれば魔族をみすみす取り逃がすことになる。犠牲を顧みず攻撃するかどうか――時間にして数秒にも満たない時間。とはいえ最前線でその思考はまずいかもしれない。


 ただ、そこに援護があれば……俺は空へ向けて魔法を放った。直線的に攻撃するのは魔物に阻まれる可能性があるため、避けた。俺が放ったのは光の槍。それが一本だけ、空へと射出され、魔族の頭上へと落下する。

 魔族は騎士達へ魔法を放とうとする。気付いていないのか無視しているだけなのかわからないが……刹那、魔族の脳天に光の槍が直撃した。それで魔族が滅ぶというレベルの威力はない。速度を優先した結果、魔法の攻撃力自体はかなり低い。


 けれど、相手の集中をかき乱していざ魔法を放とうとする魔族に対し、大きく怯ませることに成功した……魔法は強制的に中断。すかさずルードは、魔族へ向け総攻撃を指示した。


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