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光の槍

 俺が魔力収束――魔法を使う準備をした上、杖先に集めた魔力量を見て前方にいるニックとアルザは一度俺へ首を向けた。

 それに対しこちらは頷き返す……それで二人は理解したらしく、正面に向き直ると迫る魔物を叩き伏せた。


 騎士団が迫るため、魔族はこちらへ戦力を割く余裕が減っている……俺達の前方にいる敵を、ニックとアルザの二人が瞬く間に殲滅。俺達と魔族の間に大きな空間ができる。

 そして、遠視魔法を使わずとも魔族を捕捉……ここで魔族は魔物へ命令し盾としながら俺達へ警戒した。攻め寄せるルード達騎士団にも注意しなければならないが、視線を向ける頻度はこちらが上だ。


「とはいえ、もうこの状況では遅いけどな」


 杖先から魔力が溢れる。魔物を盾にして姿を隠そうとするが……この距離まで近づけば、容易に位置を捕捉することができる。よって、


「これで、終わりだ――!」


 声と共に放たれた魔法は、光の槍。この戦いで生み出してきた魔法の中で一番威力があるもの……俺は魔族を魔力で居場所を察知し、槍を解き放った。

 大気を切り裂き、光の槍が真っ直ぐ狙いへと突き進んでいく。それを阻んでいる魔物達は、光の槍に貫かれてあっさりと滅びていく……槍が到達するまでのわずかな時間、魔族は可能な限り魔物を使って防御しようとした。だが、その全てを俺の魔法は滅していき、そして、


 グオッ――轟音と閃光が戦場を一時満たす。俺の狙いは正確で、確実に魔族に直撃した。光の槍による余波で魔力がかき乱されて魔族がどうなったのかすぐ確認はできないが……やがて、


「よし、倒したぞ」


 魔族が消滅していることを確認。同時に、魔物達の動きがどこか散漫となり――それに乗じて包囲していた騎士達が、魔物を押し込んでいく。

 魔物達の動きは二種類。一つは魔族からの命令を遵守して騎士へ攻撃を仕掛けようとする個体。あるいは、周囲に近づく者を威嚇し、攻撃しようとする個体。


 魔族の命令が残っている間は戦い続けるはずだが、元々あまり命令を与えられていなかった魔物については、本能のまま行動するようになる……が、既に包囲は完了している。例え逃げだそうとしても、無理だった。


「包囲を維持して、殲滅しろ!」


 ルードの声が聞こえてくる。騎士達はさらに勢いを増して魔物を駆逐していく。その中で俺達もそれに加勢し、魔物の数を減らし続けた。






 ――魔物を完全に討滅したのは、魔族を倒してからおよそ一時間後のことだった。最後の最後で逃げに徹するような個体が現れたことで、少しばかり手間取ったが……数を考えれば恐ろしいほどの短期戦で倒し尽くしたことになる。


「ディアス、ニック、助かったぞ」


 そしてルードは俺達に近寄ってきて言及した。


「魔物の能力を考えれば騎士団でも対処はできたと思うが、少なからず犠牲が出たことだろう。しかし、二人とその仲間達の存在によって、怪我人すらゼロですんだ」

「それは何よりだ」


 俺の言葉にルードは改めて礼を言う……と、ここで俺は、


「そっちも作戦会議をした時に言っていたとおり、腕は鈍っていなさそうだな」

「鍛錬はしているからな」

「でも持久力はなさそうだ」

「……少しは痩せる努力をするさ」

「酒の量を減らさないと無理そうだけど」


 俺の指摘にルードは参ったな、という風に顔に手を当てた。


「痛いところつかれたな。まあいい、話を戻すとするか。魔族による攻撃を防ぎ、滅ぼすことに成功した。敵の数を考えれば被害がほぼゼロなのは奇跡的だが――」

「これで終わり、という雰囲気じゃないな」


 俺が言及。ルードはそれに首肯し、


「この場にいた魔物だけで王都を陥落できるとは到底思えないな」

「魔王が侵攻するより前、魔界側は情報収集していたはずだ。ニックを始めとした『六大英傑』に加えて主要な戦士や騎士について……ひいては軍事力なども調査していたはず。であれば、これだけの戦力かつ、あの程度の能力でどうにかなるなんて魔族は思わないはずなんだが」


 やはり、どこかにまだ同様の軍勢がいるのだろうか……? 疑問に思いつつ俺はルードへさらに問い掛ける。


「戦いは終わったが……騎士団は当然警戒を続けるだろ? 俺達はどうすればいい?」

「難しいところだが、まずは情報を集めて聖王国の現況を確認するところから始めたい。可能であればディアス達は砦へ滞在してもらって――」

「――ルード様!」


 そこで、伝令の騎士が駆けてきた。何事かとルードが目を向けると伝令の手には書状が。


「王都からの連絡です」


 何かつかんだのだろうか? ルードが中を確認すると、


「……ほう、そうか」

「どうしたんだ?」

「すまないがディアスとニック、このまま砦に戻り、遠征準備を頼む」


 彼の言葉――つまり、


「ここで戦ったのと似通った軍勢が、いくつも王都へ向かっているようだ。こちらは速やかに、迎撃に向かわなければならない――」


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