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得意な技能

 山の近くに騎士団の駐屯地があり、俺とミリアはまずそこを訪れた。規律が行き届いた騎士や兵士の動きに加え、天幕も綺麗に組み立てられており、士気の高さが窺える。

 そして俺のことを知っている人がいたため、依頼を受け話がしたいと拠点を守る騎士へ告げたら、あっさり隊長がいる天幕へと通された。


「その武勇、しかと聞き及んでいます」

「そう畏まる必要はないって……で、状況は?」

「魔族の拠点は木造の砦であり、城壁も備えかなり堅牢です。建造物自体も木々に囲まれており、魔物が周囲を固めていることから正攻法での戦いはかなり大変でしょう」

「魔物の総数とか、魔族の詳細は?」

「資料にまとめています」


 俺にあっさりと見せてくる。こういうのは機密情報だろうけど……戦士団として実績があるからこそ、だろうか。


「ふむ……魔物の数は現在も増えている?」


 資料をめくりながら問い掛けると、隊長は頷いた。


「はい、どうやら魔物を容易く生成できる能力を魔族は持っているようです」

「……兵数を確保できる魔族じゃないと、こんなところに単独では来ないか」


 魔族に詳細については――斥候が確認できた身体的な特徴が記されている。ただ名前なんかはわからないな。


「わかった。俺はどう動けば?」

「何か案はありますか?」

「うーん……たぶん騎士達と一緒に行動すると足並みを乱してしまう可能性があるよな……」

「それでしたら、ディアス様はご自由に動いていただいて構いませんよ」

「いいのか?」

「はい。攻撃は明日……とはいえまずは様子見です。魔物を倒しつつ相手の出方を窺うような形をとろうかと思うので、よろしくお願いします」


 ――俺とミリアは天幕を出る。ちなみに騎士達はミリアに一瞥したが仲間だろうとして言及はなかった。俺の魔法はちゃんと通用していて、魔族だとバレてはいない。


「ミリア、身体的な特徴だけでどんな魔族かわかるか?」


 そう言って資料にあった内容を告げると、


「うーん……さすがに擬態はしないと思うけれど、特徴だけでは判断つかないわね。ただ」

「ただ?」

「この場所から感じ取れる気配は、それほど強くはない……私基準で、だけど」

「魔物の生成能力に特化していて、他の能力は低いって感じか?」

「かもしれないわね。たぶんだけど、魔王自ら聖王国へ軍事侵攻をする……その援護を任されたわけだけど、主軸はあくまで魔王であり、ここを拠点とする魔族は魔物を生成して混乱を生む役割ではないのかしら」

「なるほど、魔物を大量に作って場をかき回すってことか」


 俺はそう告げると、砦のある方角へ目を向ける。


「ミリア、気配というのは近づけばもっと明瞭にわかるのか?」

「ええ。ただこの場所からだと魔法を使っても正確には……」

「なら俺が魔法で補助すればどうだ?」


 こちらの言葉に対し、ミリアは俺を見返した。


「魔法?」

「魔力を探知する能力というのは、魔法で強化できるからな。それを利用して、索敵範囲を上げる……そうやって敵を見つけることもあった」

「なら、試してもらえる?」


 彼女の言葉に俺は杖を振る。無詠唱による強化……俺が持つ最も得意な技能である。

 攻撃魔法だけでなく、仲間の強化も瞬時に……戦争においてはこちらの方が重要かもしれないと考えることもあった。魔族との戦いは俺一人生き残っても負けるしかない。よって、仲間達をどれだけ支えられるか。それが何より重要であり、だからこそ得た技法だ。


 魔力が付与された瞬間、ミリアは目を丸くした。感覚が鋭敏となり、気配を探知できる範囲が劇的に広がったはずだ。そしてミリアは砦のある方角へ目を向け……結論を出した。


「この気配は、感じたことがある。実力は――」


 ミリアが語った魔族は、推測通り魔物生成に特化した存在であり、ミリア自身が戦っても勝てるとのことだった。


「やっぱり魔王と呼応して妨害工作をしようとした魔族かしら」

「けれど魔王が滅び、だからこそ好き勝手に……あるいは弔い合戦のつもりか。どちらにせよ、魔物がこれ以上増えるより前に倒さないと被害が出るな。魔物は、魔族を倒せば消えるのか?」

「ごめんなさい、そこはわからない」

「そっか……明日騎士団は動き出す。それに合わせるように俺達は行動を開始するとしようか」

「ええ、わかった」


 彼女が承諾したので、俺達は騎士達に許可を取って休むことに。それなりに名が売れているためか、天幕を用意してもらった。とはいえ、さすがに個人個人で用意はできないので、ミリアと一緒に寝る必要性があるのだが――


「私は構わないわよ」


 野宿でも、とか思っていたのだが彼女はあっさりと承諾した。


「というか、戦いが控えているのにそこまで考えるの、悠長よねえ……」

「まあそうかもしれないけど」

「それに、明日はあなたが頑張らないといけないわけで、むしろ私が野宿すべきじゃない?」

「……んー」


 頭をかく。反応にミリアは首を傾げたのだが、


「頑張るかどうかはわからないな」

「どういうこと?」

「明日になってみればわかるよ」


 その言葉に、ミリアは疑問符を頭に浮かべたままだったが……結局、尋ねてくることはなかった。


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