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妖神学園  作者: 織優幸灔
三年生
186/201

85.火音と白葉の流れ弾で死者が出てしまう。

 大きな爆発音が鳴り響き、皆が外を見に行くと水虎と水明が最後まで残っていた。

 月火が確認すると同時に水虎が意識を失い、水明が慌てて支え、炎夏が走っていく。



「全滅……」


 小中学生はなぎ払われ、今際の際と言わんばかりに怯え、大学生はほとんど気絶している。



 一級達も守りと抑えに徹したようだ。



「おかしいですね……?」

「どうしたんですか?」



 まだ九尾たちは力を半分も出していないはずだ。



 予定では水明率いる一級トップ組が必死に食い下がり、早くても夜中の一時まではかかる予定だったのだがそんなことはなかった。

 まだ始まって小一時間ほどだ。




「思ったより弱いみたいですねぇ」



 医療コース生が校舎から飛び出してそれぞれ、手当が必要な人の元へ行く。



『ねぇ弱いわ! 弱いし不味いの! なんなの!?』

『黒葉五月蝿い……』

『また主様が危険になるじゃない! はぁ!?』


 しっぽを地面に叩き付ける黒葉を落ち着かせ、元の大きさに戻した。

 あの大きさで暴れられると地震が起きる。




「先輩、怪異って妖心ですよね」

「暴走したら怪異よりもよっぽどタチが悪いですよ。気を付けなさい」

「……はい」



 月火は水虎の顔に手をかざすと神通力で傷を治した。


 どうやら胸部に深い傷があったそうでのたうち回り、炎夏が慌て始めたが月火は無視して水明も治す。



「相変わらず凄いですね……」

「どうも」




 月火は水月と火光が窓から外を覗いたのを確認し、また九尾を五体出した。



 水明と水虎の表情がこわばる。



「一級と学生達は全員端に寄りなさい! 今から貴方達が目指すべき特級の戦いを見せます。巻き込まれたくなかったらおとなしくしていること!……火音さん、お願いします」

「うん」



 水月と火光も降りてきて、特級三人は九尾を見上げる。



「でっか。前、こんな大きかったっけ……」

「月火が成長してるんだから妖心も成長するでしょ」

「無駄口叩いてると殺されますよ〜。暴走しかけてるのでー」



 月火はそう言うと同級生三人と弟子の首根っこを掴んで勢いよく後ろに下がった。


 と、同時に黒葉がしっぽで地面を叩き付ける。




「こわーい!」

「汚い……」

「あはは、的が大きいと楽だね!」


 火光と水月は高笑いし、火音は割と本気で砂埃を払う。



『妖心術 漸狂(ざんきょう)

『妖心術 雷暝(らいめい)



 鋭い光の筋と稲妻が交互に飛び回り、その攻撃と同時にゾーンに入った火光が黒葉を袋叩きにする。



「はい一体〜」

「火光代わって〜。案外弱そ……」

「先俺な」



 水月より先に火音が飛び出し、火光と交代する。



「えぇ!? 火音ずるい取られた!」

「行ってきていいよ。援護するし必要ないでしょ」

「ほんと?」

「嘘もホント」



 水月も黒葉に向かって飛び出し、火音は白葉を、水月は黒葉をそれぞれ二体ずつ相手にする。





「あーまずい……! 伏せて!」



 端に寄っていた月火は周囲に声を掛けると同時に瑛斗と凪担の頭を抱えてしゃがみこんだ。



 火音と白葉の流れ弾で死者が出てしまう。




「ちょっと兄さん火音さん! 危ないんですけど!?」

「あ、ごっめーん! 適当に避けといて〜?」

「ごめん気を付ける」


 水月は合掌して適当に謝り、火音は誠心誠意気を使う。



 同じ特級でこの対応の差はなんだろうか。

 やはり水月には人として大切な部分が欠けている。





 少しすると火音が白葉を祓い、水月の邪魔をした火光によって黒葉が一体祓われた。



 キレた水月によって火光は物理的に縛られ、火音も一旦引いて休む。



 屋上の手すりの上にあぐらをかいて頬杖を突いていると、水月が残りの二体をほぼ同時に祓った。


 膨大な妖力が一気に月火の元へ戻ったせいで月火は崩れ落ち、校庭に暴風が起こる。



「っ……汚ねぇなぁ」

「ねぇこれ解いて?」

「あぁ、うん」



 罪人縛りにされている火光の上に跨り、手と足のロープをナイフで切る。


 罪人縛りとは、手足を背中側一箇所で拘束、足を伸ばそうとすると首が絞まる縛り方になっている。




 火音の袖から出てきたナイフはいつも通り、護身術用だ。

 火音はバタフライナイフ、月火はサバイバルナイフ。




「物騒なもの持ってるね」

「最近物騒じゃん?」

「確かに。刀は目立つしそういうの一本あると違うのかな」

「結構便利」



 ロープを切ってもらった火光は足に巻き付いたロープを落とすと水月と月火の元へ帰った。


 流れ弾の件で説教喰らっている。




「やぁやぁ水月君。よくも縛ってくれたね?」

「あっ……ご、ごめん……」

「アドレナリンが分泌されると調子に乗ってクズになるのは重々承知ですけど。周囲への被害は常識並みに叩き込んでおけと言いましたよね?」



 月火の説教は終わりそうにないので、炎夏と玄智で流れ弾の犠牲者を確認する。


 月火の声で身を守ったものは多いが、何人かは瓦礫で怪我をしたらしい。


 ご愁傷様。





「月火、どうすんの。予定より弱いけど」

「これじゃあ一級の訓練にも耐えられないでしょ。予定狂う……」

「やらせますよ。三週間の苦労か三週間後の死か、私はどっちでもいいんです」



 月火は凹んだ水月の背を肘で殴ると姿勢を正させる。


「戻りましょう」

「誰も集まれませんけど」

「無理矢理集めます」





 三人は突っ立っている特級組を呼ぶと朝礼台まで戻る。



「はーい集まれ〜」



 黒葉が出現し、片っ端から襲って意識のあるもの達を中心に集める。




 初等部中等部は泣きわめき、僅かに集まった大学生と一級はそれを心配なのか嫌なのか、じっと見ている。


 特級組は四人とも鬱陶しそうだ。



「……で、自殺願望者は何人ほど? たぶん二十五日はこんなに苦しむことはありませんよ。まぁ……失神中に心臓止まるぐらいです」

「月火、炎上するよ」

「……面倒くさ」

「何そんなに苛立ってんの」


 炎夏と玄智が小声で話しているといきなり月火が大声を上げた。




「今夜十九時! 雪でも地震でも津波でも関係ありません。総力底上げ訓練を始めるので再度ここに集まりなさい。来なかったものには、まぁ……死んでも炎上はしませんよね」

「最後投げやりすぎない?」

「己を鍛え、己を磨け! 妖輩者として恥じぬ行いをしろ」

「家族を守りたいなら、生き続けたいなら今の苦労を耐えろ。たった一ヶ月間の詰め込み教育だ。十八年間の地獄に比べたらまだマシでしょ」


 月火は玄智の足を踏み、炎夏も玄智の腕をつねる。



「今から決戦の日まで、体育館、柔剣道場、弓道場、校庭、プール、全て自由解放します。一級達は何を使ってもいいので底辺達を育て作り上げなさい。こちらも全面的に協力しますので。以上解散!」





 一級の返事が聞こえた後、月火は体を返す。



「瑛斗、凪担さん、訓練の続きです。校庭に出なさい」

「はい」


 月火は火音に妖刀三本を頼むと水明に声をかけた。



「水明さん、一年に長巻使いがいるんです。教えてあげて下さい」

「分かりました。……私よりも月火様の方が上手い気がしますが」

「基礎は固まっているので型の応用をお願いします。水虎さんは一年と二年に体術を教えて下さい。二年はほとんど出来ていないんです」

「分かりました」



 水虎と水明に当人達を指さし、玄智に連れて行ってもらう。



樫崎(かしざき)(くろがね)、久しぶりです」

「月火様! 炎夏様も玄智様も、お久しぶりです」

「お久しぶりです」


 樫崎は遠い昔に玄智に引きずり回され、鐵は炎夏に打ちのめされた人達。

 今はこうして一級三位と四位になっている。



 この順位は一級の中で勝手に出来た順位で、毎年開かれては一対一で戦っているらしいが月火は呼ばれた事がない。

 水月も火音も火光もだ。


 一位になった水明によると呼ぶだけ無駄だから、と。



 一見ただの悪口だが、たぶん強さが特級相当だったからだろう。

 さして興味もなかったのでずっと放置している。



「怪我はどうですか」

「もうピンピンですよ! すみません、せっかく任せていただけたのに」

「我々も強くなってせめて玄智様には勝てるようになります」

「遠回しに僕が一番弱いって言ってるって捉えていい?」



 玄智がからかうと二人は慌て、月火は呆れて炎夏は小さく笑った。




「二人は初等部の基礎をお願いします。子供は好きでしょう」

「お任せ下さい」

「精一杯努めます」


 この二人は大丈夫だ。




 一級一位水明、一級二位炎夏、一級三位鐵、一級四位樫崎、一級五位玄智。


 この上位五人は、やる気次第では遊びの特級に勝てる程度には育つだろう。育てなければならない。


 水虎も三級だが月火が毎週のように一級推薦状を送っているし、水明も説得しているので近いうちに一級に、上がってくれたらいいな。




 他の一級にも中等部と高等部二年の訓練を頼み、最年長の飛島(とびし)(かつら)には大学部の根性叩き直しを頼んだ。



 炎夏は氷麗を、玄智は洋樹を、水月は桃倉を、水明が瑛斗を、火光は結月を、火音は凪担をマンツーマンで教える。



 今日から基礎が固まる第一週間は授業と部活を停止している。




 他コースもどんな状況に陥っても対応出来るよう、上層部のベテランに教えてもらっている。

 補佐や情報に等級はないので、本当に経歴と技術力を見極めなければならない。


 妖輩は天才が万年四級、サボったのに一級もいるのでそうともいかないのだ。





 十九時になるまでは各自、準備をしたり肩慣らしをしたりで忙しなく過ごす。


 瑛斗は延々と月火に切りかかっている。




「踏み込みが甘いですね」

「地面だと滑って上手く踏み締めれないと言うか……」

「力の掛け方の問題ですよ」



 月火と瑛斗はしゃがむと、月火はそこら辺に落ちていた石で絵を描く。



「砂は並行しにしか動かないんですから真下に踏めばいいんです。少しでも斜めると坂と……同じ原理で滑ります」

「今の間はなんですか」

「お気になさらず」




 凪担にも一度、一対一で教えなければならない。

 あの型は秘伝だ。他人に教えていいものではないが、月火が薙刀を継がないと知った時には弟子に教えてと言われた。


 弟子ではないが唯一の薙刀使いである凪担に教えなければ、紫水(しすい)の努力が消えてしまう。




 月火がいつ教えようかと考え、黙り込んでいると背に手が触れた。



「火音さん、調子はどうですか」

「凪担に負けたかもしれない」

「刀使います?」

「うん」



 月火は腰に差さっていた白黒魅刀を渡す。







 その日の夜、校庭には深夜の一時まで悲鳴と絶叫が上がっていた。

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