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昨夜の出来事

「とまぁそういう訳なんだけど⋯⋯話、ついてこれてるかな?」


 俺は三好君の表情を伺うように尋ねる。

 こんなファンタジーまがいの話、途中で何を言ってるんだと一蹴されてもおかしくはないのだが、三好君はなんだかんだで最後まで話を聞いていくれていた。

 まったくもって良い青年である。


「正直100%理解したかと言うとまだ半信半疑です⋯⋯。でも、僕自身昨日の記憶があやふやな以上、とりあえずはこの話を受け入れるしかない、というか⋯⋯」


 三好君はゆっくりとそう答える。

 俺たちの話を100%信じきっている訳ではないものの、なぜ自分の記憶が曖昧なのかについては説明ができないため、この話を理解しようとしてくれているようだった。


「ちなみに、昨日何か怪しげなものを見たり聞いたり、大したことじゃなくても良いので印象に残っていることがあれば教えてもらえますか?」


 アシュリーさんは少しでも情報を聞き出したいようだ。


「うーん⋯⋯。あ、そうだ。昨日塾の帰りにコンビニに寄ったんですけど、コンビニを出て西坂通りに行くまでの間、車や人を全く見かけなくて、それはちょっと不思議に思いました。確かにあの通りはそんなに人通りは多くないですけど、流石に車も通らないってことはなかったので⋯⋯。すみません、こんなことで」


 三好君は言い終わると申し訳なさそうに頭を下げた。



「コンビニ付近に潜んで魔術師がターゲットを選別してたってことですかね?」


 俺は三好君の話を聞きそう呟く。


「その可能性はありますね。西坂通り方面に向かった彼をターゲットにして、その他の人間に関しては魔術で人払いをしたという線が濃厚かと」


「なるほど」


 今まで出会った魔法師達は皆良い人ばかりだが、やはりその力を悪事に使われるとなると大分厄介だな、と俺は思う。夜中に人払いをされ誰もいなくなった場所で、邪悪な魔法師に襲われるところなど恐ろしくて考えもしたくない。


「ですが、そのような手段を取ったとや気を失った三好君を放置していたことを考えると、三好君に対して特別に恨みがある者の犯行ではなさそうですね」


「どうしてですか?」


 三好君が不思議そうに尋ねる。


「仮に三好君に恨みがあった場合、面倒な人払いなどせずに直接自宅にでも乗り込んでいくでしょう。それに、恨みがあったとすれば、気を失う程度の魔術をかけて放置しておくなどという生ぬるいことはしないかと」


 アシュリーさんの言葉に背筋がゾワりとする。

 ちらりと三好君を見ると、彼もまたアシュリーさんのセリフに怯えているようだった。


「で、でもとりあえず、個人的に狙われてる訳じゃないっていうだけでも、三好君にとっては朗報だよな」


 俺はなんとか三好君を落ち着かせるべく三好君に向かって笑いかける。


「はい、まぁ⋯⋯」


 結局、三好君はたまたま事件に巻き込まれてしまっただけということ、そして彼の体も特に異常は見られないということから、アシュリーさんが自宅まで送り届けることになった。


 アシュリーさんと三好君が俺の家を出て10分程したところで、再び家のチャイムが鳴る。

 

 今日はアシュリーさん以外家に来る予定はなかったので、誰が来たのかと不思議に思っていると、外からビビの声が聞こえてきた。


「空ー! いるよね? レインの部屋に集合だよー!」


 ビビはそう言いながらドアをドンドンと叩いている。不思議系原宿ガールのような見た目の割に意外とせっかちなところがあるな、と俺は思う。


「わかった! 今いく!」


 俺は玄関の手前でそう叫ぶと、リビングのテーブルに置いてあったスマホを片手に外へと向かった。


「ていうか、何で俺の部屋に集まってくるんだよ」

 

 レインの部屋に着くと、不機嫌そうな表情のレインが目に入ってきた。


「だってビビの部屋には来て欲しくないし、コルネリスの部屋には女の子がいるかもしれないでしょ?」


「残念ながらしばらく誰も訪れてないけどねー」


 自虐交じりにコルネリスが呟く。


「だったらこいつの部屋で良いだろ。引っ越して来たばかりで綺麗だろうし」


 レインは俺を指差す。


「ビビは出会って間もない人の部屋には気安く上がり込まないの! そういうの、常識だよ、レイン」


 まったくーと言いながらビビはソファに腰掛ける。


「それで、呼び出したのってもしかしなくても昨日の件だよね?」


 コルネリスは期待するような目でビビを見る。


「もっちろーん! みんな聞きたい? 聞きたい?」


 ビビはもったいぶるようにそう言うと俺たちの顔をぐるりと見渡す。

 どうやら本人は話したくてしょうがないようだ。


 それにしても昨日あれだけ日本酒を飲んだあと任務に向かい、帰ってきてからも確保した邪気について調べていたのかと思うと、ビビのこの元気の良さはどこから出て来るのだろうと不思議になる。


「早く話せよ」


 レインが興味のなさそうな声を出すと、ビビは一瞬レインをジロリと睨みつけたものの、一息おいて話し始めた。


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