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9 プロポーズ?!





「チェーリオよ。そろそろワシに聖女を紹介してくれ」

 国王がベッドの上で上体を起こし、王太子チェーリオに声を掛けた。

「父上! 大丈夫ですか?」

「ああ。急に身体が軽くなった。気分も良い」

「良かった……。父上、紹介いたします。こちらが、昨日、ニホンより召喚された新聖女トメでございます」

 少し緊張しながら、国王に挨拶をする彩音。

「トメと申します。国王陛下、よろしくお願い致します」

「トメよ。ワシが国王アルフィオだ。ワシに憑いた悪魔を祓ってくれてありがとう。礼を言うぞ。ウソみたいに身体が楽になったわい」

「それは、ようございました」

「ときにトメ」

「はい、陛下」

「ワシと結婚してくれ」

「へ?」


「だぁ~っ!!」

 王太子チェーリオが変な声を出した。

「父上! 何を血迷った事を仰っているのです!?」

「いや、だって、トメはこんなに美しいし、その上、ワシのことを悪魔から救ってくれたのだぞ。これはもう結婚するしかあるまい」

「だぁ~っ!!」

 再び奇声を発するチェーリオ。

「父上! バカな事を仰らないで下さい! トメは国の宝『聖女』として昨日召喚されたばかりなのですよ。トメを不安にさせるような言動は慎んでください!」

「不安にさせる? 何故だ? 国王であるワシの妃になれば一番安心ではないか。決まりじゃな。ワッハッハ」

「何が決まりじゃ!? このアホ親父!」

「何だと! この童貞王太子が!」

「ち、ちが~う! 人前で言うな~!!」

 何やら、えらく低次元な父子喧嘩が始まってしまった。彩音は完全に他人事として聞き流していた。あ~、お昼ご飯は何かしら?


「トメ! トメはイヤだよな? こんなオッサンの嫁になるなんて!?」

 チェーリオが必死の形相で彩音に同意を求める。

「ええ、イヤです」

「ほれ、見ろ!」

「だって、陛下は結婚なさっているのでしょう?」

「王妃は10年前に亡くなった。今は独身じゃぞ」

「嘘つけ! 正妃だった母上は確かに10年前に亡くなったが、その他に側妃が11人もいるだろーが! どこが独身だ!?」

 11人!? 側妃イレブンってか? 


「絶倫か……」

 ボソッと呟いた彩音の声が聞こえてしまったらしい。

「トメ。その通りじゃ。ワシはすごいぞ。23歳にもなって童貞のチェーリオなんぞ、比べモノにならん。アイムストローング!」

 何で嬉しそうなの? 国王にとっては褒め言葉だった? 文化の違いというヤツか?

「トメ! もう行こう! このオッサン、ダメだわ!」

 チェーリオは彩音の手を取ると、さっさと部屋を退出した。チェーリオの従者や護衛達が慌てて付いて来る。もちろん、彩音の侍女アンナと護衛ジルドもだ。



「はぁ~っ……」

 国王の部屋を出た途端、大きな溜め息を吐く王太子チェーリオ。

 その場に居る臣下達は皆⦅ 殿下、ドンマイ ⦆と、心の中で秘かに彼を慰めた。

「トメ、すまない。あのオッサ……いや、父上があのような世迷い事を口にするとは思わなかった。本当にすまない。悪魔を祓って助けてもらったというのに、トメにあんな失礼な事を言い出すなんて――父上は、どうしようもないな。おまけに私のことを貶めるとは……クソッ」

 チェーリオは疲れた声で彩音に謝罪した。最後の方は小さな声だった。

 

 彩音はチェーリオの背中をポンと軽く叩く。そして、力強く励ました。

「殿下、ドンマイ! 女性経験が無い事は別に恥ずかしい事ではありません!」

 臣下達は思った⦅ トメ様すげぇ。言っちゃうんだ!? ⦆

 チェーリオは、顔を真っ赤にして慌て始めた。

「ち、ち、違うんだ。ホントに違うんだ。信じてくれ、トメ!」

「ハイハイ。うふふ。チェーリオ殿下ったら可愛い」

「ちが~う!!」

 王太子チェーリオの絶叫が王宮に響いた。


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