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7 国王と面会





 彩音は、のんびりと王宮の東庭を散策した。そこに咲いている花は、見たことのないモノばかりだった。彩音は特に花や植物に詳しい訳ではないが、それでも、これらが日本、いや外国も含めて元の世界には無い花だと、はっきり分かった。

 本当にここは異世界なんだ……

 改めて感じる彩音。

 元の世界には、もう二度と戻れないのだろうか? 

 昨日からの出来事が全て夢だったら良かったのに……ぼんやりと、そんな事を考えていると、彩音を呼ぶ声がした。


「トメ様~!」

 あれは確か王太子の従者だっけな?

「トメ様、王太子殿下がお呼びでございます」

「……すぐに行きます」



 彩音が王太子チェーリオのもとへ行くと、彼は優しく微笑みながら、

「トメ。昨夜はよく眠れたか? 不自由している事はないか?」

 と、彩音に話しかけた。彩音は、

「はい。ありがとうございます。大丈夫です」

 と、答えた。王太子はホッとした表情になる。

 彼なりに彩音のことを案じているのだろう。

 もっとも、突然異世界に召喚された側からすれば、「アンタらがやらかしといて案じるもクソもあるか! ボケ!」と、どついてやりたいところだが――まぁ、ここでそんな事をしても、彩音にとって何のメリットもない。王族とは仲良くしておくのが得策だろう。どこの世も、結局モノを言うのは金と権力である。


「今日は、国王陛下に会ってもらいたいのだ」

「国王陛下?」

「ああ。私の父だ」

 王太子チェーリオの言葉を聞いて、⦅そういえば、王太子がいるからには国王がいるはずじゃん!⦆と、初めて思い至った彩音。当たり前の事なのに、国王の存在なんて今の今まで考えもしなかった。自分では、こんな状況にもかかわらず落ち着いているつもりだったが、やはり冷静ではなかったという事か――


「実は、陛下は今、床に臥せっておいでなのだ」

「え? ご病気ですか?」

 国王が病気って大変な事じゃないの?

「それが……2ヶ月前に先代聖女が亡くなると、その3日後から突然陛下の体調がおかしくなって、それ以降、日に日に容態が悪化している。医者に診せても何の病か分からないと言うんだ」

 沈痛な面持ちの王太子チェーリオ。

「それは……先代聖女が亡くなった事と、陛下の体調に何か関係があるという事ですか?」

「分からない。それも含めて何も分からない。けれど、とにかく陛下に新たな聖女の召喚に成功したことを報告したところ、とても喜んで下さって、トメに会いたがっていらっしゃるのだ。短い時間になると思うが、陛下に挨拶してくれ」

「はい。わかりました」

 高貴な方へのお見舞いなら、やっぱり持って行くのは銀〇千〇屋のメロンよね? 銀座本店だけじゃなくて、確か新宿にも店舗があったはず……などと考えたのだが、そのまま国王のもとへ連れて行かれた。

 まぁ、ここは異世界だ。どちらにせよ銀座にも新宿にも行けないか……。



 国王の寝室に入るなり、彩音はギョッとした。

 思わず声を上げそうになったが、何とか堪えた。


 ――ベッドに横たわる国王の身体の上に、悪魔が乗っかっている――

 

 どういう事? どうして誰も何も言わないの? もしかして他の人には見えてないの?

 その悪魔は6歳くらいの白人の男の子の姿をしていた。けれど、何故か彩音には、その子が悪魔だとハッキリ分かったのだ。

 人の子の皮を被った悪魔――ダミアンだわ!? まさにリアルダミアンがここにいる!? 

 

 部屋に入るなり顔色を変えてワナワナ震え始めた彩音を見て、王太子チェーリオも他の者達も困惑した。

「どうした? トメ?」

 チェーリオが震えている彩音の肩を抱く。

 彩音は意を決して声を張り上げた。


「ダミアン! 陛下の御身体の上から退きなさい!」


 突然大きな声を出した彩音に、チェーリオも周りも驚く。

「ト、トメ? どうしたのだ? 父上の身体の上に何か居るのか?!」

 やはり、彩音以外には見えていないのだ。

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