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サイカソシエ  作者: エクラ
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災禍を見つけ、暴く

ーーターゲットの声にならない叫びと、死を目の前にした恐怖の面持ちが見えた。路地裏、人の気配が無い場所に追い込んだら、仕事用のナイフを取り出す。ターゲットは肥えた中年紳士だ。いや、紳士とは言い難いものがあるのも事実。その事実が私が彼を追っている所以である。


「あんた誰なんだよ……!」


 街の中心から郊外近くまで走ってきたからか、ターゲットは息を切らして座り込んだ。汗と脂が混じり合い、少ない髪をベッタリと肌に密着させている。それにすかさず近寄って、肩に手をかけた。そしてナイフを肩に軽く当てて囁く。


「……国家公務員のエクラです」


 処理の仕方は最初に上司から教わった。正面から勢いで刺すのはナンセンス。彼の身体が強張り暴れようとする前に、肋骨の位置を探りその間を、刺す。ぐにゃりと柔らかい感触が手を伝った。丁度肺に刺さったのか、ターゲットの喉が、か弱い鳥のようにひゅ、と鳴った。いつもこの瞬間は慣れない。



ーーサイカソシエ。



 それが、私の仕事。これが、正義。


 何回も浅い息をしたかと思うと、ターゲットが呻き、意識を失ったのを確認した。大動脈は外したものの血なまぐさい臭いが鼻を嫌にまとわりついて咳払いを一つする。あまりに濃い血の臭いに頭がグラリとした。

 しかし、サイカソシエの仕事はここからが本番だ。傷から漏れ出た黒い血からサイカーー災禍ーーが出てくる。黒い煙のようなサイカが私に向けて助けを求めた。


「天に還してあげるからね」


 私の魔法で柔らかい光に包まれ、サイカは蒸気に満ちた空へ消えていく。




ーーこれは、そんな劣等魔法使いの冒険譚……にも満たない、ただの備忘録をなけなしの語彙で小説化したものである。社会経験が少ない世間知らずのため、上級魔法使いの皆さんがこの本を手にとってしまった場合、多少の未熟さは見逃していただきたい。

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