エピローグ
王都でモンスターを狩り尽くした俺たちは王都の修繕に追われていた。
「重!なんだこれ」
「フユ特性の超合金にゃ。ま、素材はその辺に転がってた瓦礫だけどにゃ」
「また面倒くさいもの作りやがって…誰が!運ぶと!思ってんだ!」
フユの反転の能力を使えば元の素材がから更に上の物へと昇華することが出来る。
崩れた家屋なんかの瓦礫を集めてフユ特性の超合金へと作り変える。
俺たち男たちはそれを運ぶ役として駆り出されていた。
「筋力オーバーの俺でこれだぞ?アレンは…大丈夫か?」
「これ、身体の上に落としたらどうなるんだろうね」
「骨ごと粉々だろうな。ま、俺は死なないから粉々にはならないけど」
「羨ましいよ…骨ごと砕けたら葬式をささやかでいいから開いてほしいな」
「頑張れー」
筋力がDのアレンは生まれたての子鹿みたいに全身をプルプルさせながら一歩ずつ確実に進んでいく。
「それにくらべ…魔力持ちの2人はいいよな」
「オレを誰だと思ってる。最強ぞ?これくらい持てないようじゃオレの剣は振れないからな」
「俺にも魔力補強してくれよ」
「自分で鍛えろ、稽古の一環だ。そもそも、魔力補強はあの魔法使いにしてもらえばいいだろうが」
「リコは家に帰った!だから最強に頼んでるんだろうが」
「なぜ俺に頼む。こいつに頼めばいいだろ」
「デバフ盛られそうだから嫌だ」
そう言って最強が指すのは白い髪にローブのような物を羽織っている人物。
「酷いなー精々麻痺盛って動けなくなったところに鉛玉撃ち込むだけだよ」
「だから嫌と言ったんだ。それに何事も無かったように作業に参加してるしよ!」
「女王陛下のご命令だよ。奴隷術を施されてるから反抗出来ないんだよね」
俺に向かって砕けた話し方をするこいつは昨日まで戦っていた戦友だ。
腐っても神であるこいつは王都の復旧にはうってつけの人材だ。
石化を解除するのと引き換えに女王の奴隷となった戦友は女王の許可なしには魔法陣を開けないようにされていた。
「昨日はあんなに殺すとか言ってたのにやけに大人しいな」
「武器もなしに君に敵うとは思わないからね。それにお互いに不死身ならいつでも殺せるってことじゃないか。女王陛下の許可さえあれば暴れてもいいと言われているからね」
とかいう理由で平気で混じって作業している。
こいつの正体だって俺とリコと女王と最強以外は知らない。
アレンたちはただナイト・コアの友人だとでも思ってるんだろう。
「この復旧作業が終わったらリューたちはどうする?」
今回の件で心配したリコの父親は旅には出さないといいってリコを連れて行ってしまった。
「どうするかな…旅を続けるかな」
「魔法使いなしでか?」
「そうなるな、今回は流石に強くは出れないからな」
俺が居てこれだからな。反抗のしようがない。
「そうか、諦めるのか」
「まあ、それがリコのためでもあるしな」
「…お前がいいならオレはこれ以上口出しはしない」
ナイト・コアは少し不機嫌になりながらも作業に戻った。
俺自身、まだリコと旅はし足りない。
もっと色んなところ行きたいし色んなことを話したい。
リコの色んな表情を見たいし色んな顔をさせたい。
だが俺がリコを守れなかったのも事実。
俺がもっと強ければな...強ければ...死なないって最強と同じ事じゃないか?
俺も頭が良くなったな。
そうと決まれば!
「最強!あの黒くて丸いやつがでるの使ってくれ!」
「お前、いきなり語彙力失ってないか?黒いのってゲートのことか?」
「多分それだ」
「どこに行く気だ」
「リコの屋敷」
俺が答えると最強はニヤリと笑った。
「なら運ぼう。屋敷の前でいいな?」
「おう」
最強の能力により俺は王都からリコの屋敷のあるシルフィードまで飛んだ。
「えっと…たしか2階の左から4番目だったよな」
屋敷の壁をよじ登り刀で窓を盛大に斬った。
「な、何事ですか!」
「騒ぐな。静かにしてろ」
昼間で俺の姿を確認したリコはすぐに大人しくなった。
そして待つこと数秒。
「リコ様いかがなさい…貴様!」
「ここの領主に伝えろ。娘は預かった。今度は絶対に返してやらないって伝えろ。じゃあな!」
「え、あ、おい!待て!外だ!外に逃げたぞ!」
1回目と違い今度はちゃんと要求があったっからちゃんと伝えた。
「やっぱり、来てくれたんですね」
「まあ、まだ旅の途中だしな」
「貴族との鬼ごっこは嫌なんじゃなかったんですか?」
「鬼ごっこ?上等だ。銃とやりあった俺に死角はない!リコを守るためなら誰であっても容赦しない。今度は...ちゃんと守るから」
「よろしくお願いしますね♪では早速ジャンを止めてください」
ですよねー。居ますよねー。
「リュー!貴様!王都を救った英雄であっても誘拐など許されないぞ!」
「言っただろ?『今度は絶対に返さない』って!」
リコを横抱きにしてジャンの剣戟を全て避ける。
「待て!リュー!」
「しつこいなー、ちょっと速度あげるから捕まっててくれ」
「はい!」
ゲートの場所までジャンと鬼ごっこをした俺たちはリコを攫って王都に戻った。
「リューさん?私を攫った責任は取ってくださいね?」
リコに始めて会ったあの時なら面倒とか思ったんだろうな。
今となってはこの答え以外ありえない。
「上等だ。責任くらい取ってやるよ!」
この話を持ちまして本作は完結とさせていただきます。
ここまで来れたのも皆さんの応援あってこそです。
ありがとうございます!
約1年ぶりのファンタジーで見苦しい所もあるかと思います。それでも応援して下さる読者様には感謝しかないです。
さて、ここでもう次回作の話をします。
今度はまたラブコメです。
『またかよ』と思うかもしれませんが、今度は一味違うラブコメをお送りしたいと思います!
初投稿は8月1日からになります!
作者が珍しく設定などを考えたので少しはマシになるかと思います...多分...恐らく...きっと...