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第68話 不屈の英雄

屋敷を飛び出した俺は王都への道を最短で走り抜けていた。

モンスターの群れも盗賊の野営地も全て無視して走り抜ける。


「走りながらでいい。聞け」


いつの間にか追いついた最強が喋りながら並走してきた。


「メイドからの情報だ。今、王都では魔法が使えないという状況らしい」

「俺には関係ない」

「そうかもしれないがオレからすれば重大な問題だ。オレだけじゃない。この世界の住人全てが戦闘不能になると思え」

「そうか」


他の奴がいない方が、好きに刀を振り回せる。


「今回オレは援護に徹することになる。頼んだぞ…不屈の英雄」


不屈の英雄…意味はわからないが悪い気はしないな。

最強から何か言われたことなんてなかった。すこしは最強に近づけたか。


最強の前に黒い空間が現れると最強の姿が消えた。

ヒュドラと戦った時に使ったあの能力。人や物を強制的に移動させる能力。


シルフィードから王都まで7日かかる道のり、馬さえいればもっと早く着くんだが仕方ない。

今は休まず走り続けるしかない。


屋敷を飛び出してしばらくした時、後ろから急速に近づいてくる2つの気配。

振り向くとメイとロウがこちらに走って来ていた。


「ご主人様!1人で飛び出すなんて危険です!」

「悪い急いでたから」

「もう!最強の人から聞きました、今王都は混乱状態だと」

「らしいな。だが俺たちには関係ないだろ?」

「それはそうですけど…危ないので私も行きます!」

「危ないならメイは屋敷で…」

「私だってパーティメンバーなんです。危なくても行きますよ」


「後戻りは出来ないぞ」

「構いません。この世界に来た時点で、後戻りのことなんて考えてませんから」


ロウの背中に乗り王都を目指した。


その頃王都では正体不明の集団による侵略が起きていた。


「兵は前へ!陛下には擦り傷一つ負わせるな!」


兵を随時投入するもことごとく返討ちにあう。

相手はたったの4人、それなのに全く歯が立たない。


魔法が封じられていることに加え、相手は高威力の遠距離武器を使う。

魔法という遠距離攻撃を封じられ弓も射る前に撃ち殺される始末。


玉座の間は今や地獄絵図となっていた。


「これはこれは、メア女王陛下お初にお目にかかります。白色と申します」

「なんのためにこんなことをするの」

「なんのため…かつての戦友を殺しに来たんです」


笑いながら答えた。

彼にとって王都の陥落などどうでもいいこと。戦友を殺すことが第一優先なのだ。


「貴方達がなにをするか知らないけど、そう簡単には行かないわよ」

「ええ、そうでしょう。彼女がここにいる時点で1人の男を敵に回してるんですから」


灰色がおぶっていた袋をメアの前に下ろした。


「リコ!?」


目隠しに猿轡をされた親友の姿にメアはリコに駆け寄った。


「リコをどうするつもり…?」

「彼女には触媒になって貰おうかなと。といっても、僕には必要のないものですがね」

「触媒?」


「そいつはこの王国を我らの物にする為の兵器だ。強き者が権力を得る時代は終わるのだ。今宵、王国は生まれ変わる」

「そんなことさせないわよ!『ワープ』!」


メアが叫ぶがなにも起こらない。


「無駄だ。女王特権のことは知っている。魔法が使えなければ女王特権も使えまい」

「そんなの…有り得ない…」

「現実だ。我らは元々魔力値が低いがこの娘のように高いと身動きすら取れない。準備の差だ」


リコが攫われたその日のうちに王都は陥落した。


「ロウちゃん…大丈夫ですか?」


シルフィードからリーンフォードまでの道のりを本来2日かかるところを1日とかからず走り抜けたロウは疲労のあまり地べたにへたり込んでいた。

流石に無理させすぎたか。


「悪いなロウ、無理させちまった」


ここまでは順調に来ている。だが問題は5日かかる道のりだ。

5日もかかって王都についたのでは遅い。ロウがこの調子なら早くても着くのは3日後、遅い遅すぎる。

ロウより速い乗り物はない。

クッソ…助けることは不可能なのか?あれだけ稽古したのにそれを使う間もなく終わるのか?


「ご主人様…?泣いてるんですか?」

「え…?」


メイに言われて頬を触ると手に水がついた。


「別に泣いてなんか…」

「泣いていいと思います。ご主人様のことですから、自分のせいだーとか助けることは出来ないーとかそんなこと考えてるんでしょうけど大丈夫です。私はご主人様の努力は知っています。出会って成功ばかりしてきたご主人様も最強に出逢って自分を変えました。自分を変えられるならこの状況も簡単に変わります。ので…そんなに自分を責めないでください」


メイの胸に顔を埋めた状態で枯らしたはずの涙が溢れてきた。

この世界にきて初めての涙。子供の時に泣いたきりだったから大声で泣いた。それしか泣き方を知らなかった。


ひとしきり泣いた後俺は泣き疲れて寝てしまった。


「今日は休みましょう。ご主人様」

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