第65話 未知数
最強、ナイト・コアとの稽古を済ませた俺は訓練場の真ん中で大の字で寝ていた。
「お疲れ様ですリューさん」
「あぁ…滅茶苦茶疲れたぞ…」
今まで戦ってきたなかで1番動いたかもしれない。
それくらいの運動量はあったはず。
「リューの動きはいつ見ても異次元だね」
「フユだって本気出せばあれくらいで動けるにゃ」
人間と亜人を比較対象にするな。
そっちは元々身体能力は上だろうが。
「お前らも鍛えればこいつぐらいにはなるさ」
「ナイト・コアが汗かいてる…!」
「そんなに珍しいことでもないと思うが…」
人間と同じ体なら普通に汗だってかくだろうし疲れだってあるはずだ。
「汗って激しい運動した後か気温が暑い時じゃないと出ないだろう?気温はそんなに高くないだろうから激しい運動をしたってことなんだよ」
「だからなんだ」
「ナイト・コアが苦戦した相手なんだよ、リューは」
嬉しくもない。
俺が喜ぶとしたらナイト・コアを超えた時だ。
「俺が稽古してる間リコ達はなにしてたんだ?」
「魔法の訓練です」
「フユはみんなの稽古を見てたにゃ」
「僕は防御のコツとか料理についてだね」
「弓の使い方なんかを教わってました」
それぞれの戦力を上げていたようだ。
「なにか分かったか?」
「はい。魔力消費を抑えられて少し威力も上がりました」
「リュー喧嘩したら雷受けることになるんだから気をつけなよ?」
「大丈夫だ。耐性ついてきたし」
「なら次は火ですね」
火はシャレにならないから止めてください。
「結構有意義なことを聞けたよ。イリス様直々の御指南だからね」
「イリスはああ見えて最初は敵だったんだぞ」
「主...その恥ずかしいのであまり話さないでいただきたい」
「恥ずかしがることでもないだろ。誰にだって慢心はある」
ナイト・コアのからかいに耳まで真っ赤にする戦闘神。
神と言われる奴でもリコ達と同じ女なんだな。
「最強の仲間って全員女だよな」
「そうだな。羨ましいのか?」
「そうじゃねぇけど...色々大変そうだな」
パーティに男が少ないと権利とかがないから色々不便なことが多い。
特に女たちで結託されて袋叩きにされるのは結構キツイ。
「なんか旅してたらこうなった感じだからな今更なにも感じない」
「そんなもんか」
「そんなもんだ」
最強曰く、『パーティに男はいらないだろ』とのこと。
そんなことないと俺は思う。
力仕事とか男にしか話せないこともある。男のパーティメンバーは需要がある。
☆
数日に渡り俺は最強からの稽古を受けていた。
「最初に比べればよくなったな」
「っしゃ...やったぜ...」
稽古終盤はいつもこんな。
満身創痍でフラフラ。今だって立ってるのがやっとだ。
「明日にでもギルドカードの更新に行って来い。多少なりあがってるだろ」
「ああ...そうする...」
疲れ切った俺の意識はそう長くはもたなかった。
次の日、リコと一緒にギルドへ向かった。
「ギルドへようこそ!ご用件はなんですか?」
「私達のギルドカードの更新をお願いします」
「分かりました。ではこちらへどうぞ」
通されたのは水晶が鎮座する部屋。
「どちらから更新なさいますか?」
「私が先でお願いします」
名前;リコ・シルフィード
職種;魔法使い
筋力;E
耐久;E
俊敏;D
魔力;SS
幸運;S
知力;S
「ここの枠、フユの筋力と同じ文字だな」
「魔力値が大幅に上がりました!お昼の時にも魔法を使ってたのがよかったみたいです!」
まあ、あれだけの威力を昼間からバカバカ撃ってればそら魔力値は上げるわな。
まあ、これでパーティの戦力が強化されたと言っていいだろう。
「次はリューさんですね」
名前;リュー
職種;剣士
筋力;ー
耐久;D
俊敏;SS
魔力;F
幸運;E
知力;E
ありゃ...うまく作動しなかったようだ。
筋力の枠がちゃんと出ていない。
「一番筋力が気になってたんだけどな...仕方ないか。んで、なんで2人とも黙ってんの?」
「オーバーフロー...」
「なんだそれ」
「リューさんの強さはこの水晶で出すことは出来ないということです...」
「故障じゃないのか?」
「いえ、過去に一度だけこのようなことがありました」
なんだあるのか。なら珍しい物でもないだろ。
「その例というのが、最強、ナイト・コア...ただ1人なのです」
最強の強さは今となっては誰も知らない。最後に計った時にはもうすべての枠が『-』で埋まったという。
俺の筋力がーという未知数。
あれだけ攻撃受けたんだから耐久も上がってもいいと思うんだけどな...基本防御しないから仕方ないか。