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第63話 夕飯の肉はなに肉にしようかってくらい大事

シルフィードの街中、無言で歩く俺たちはお互いに気まずさを感じていた。

ガキの頃から戦いしかしてこなかったから女との接し方なんてわからない。

普段はなにも考えなくても話せるのに今回ばかりは話題が一切思い浮かばない。

それはメイも同じようで何度かなにかを言おうとしているが声は出せないでいる。


大通りの真ん中まで無言のまま来てしまった。


「ここまで無言だったけどさ、なにする?」

「そ、そうですね…なにしましょうか…」


いつもより元気がない。

やっぱり俺と2人きりは嫌だったのだろうか。

俺がもっとデカくてカッコよかったらメイの反応も違ったのかもしてない。


「あ、あの…!ご主人様は緊張とかしますか?」


出かける用のスカートの裾をギュッと握ったメイが聞いてきた


「緊張か…ここ最近ないな。1番最近で緊張したのはスナイパーライフル相手に突っ込んだ時だ」

「スナイパーライフルに突っ込んだ…?」

「ああ、逃げ場もなかったし助けも来れる場所じゃなかったからそれじゃあ俺が殺そうかなって」


スナイパーライフルならまだ優しい方だ。

ハンドガンとかマシンガン相手に正面から突っ込むことだって多々ある。

逆に動いて弾をばら撒かれるより動かないで一撃即死の方が安全なんだ。

当たらなきゃいい話だから。


「すごい世界観ですね…」

「そうか?俺からすればメイの暮らしてた日本の方が信じられないけどな。東京で暮らしてたなんて」

「怖くはなかったんですか?」

「怖くても立ち向かわなきゃいけないんだ。じゃなきゃ生きられない」


うーん。暗い話ではないと思うんだがな…

俺の話を聞いたメイの顔はどんどん曇っていく。

悲しませたくて話したわけじゃないのに。


「そんな暗い顔すんなって。今はこうしてメイ達と旅出来て結構満足してるから」

「私…役に立ててますか?」

「十二分に立ててるからそんな顔すんな。そうだな…ナイト・コアにやられて寝てる間に見た夢の話をしよう」

「夢…ですか?」


興味があるのか暗い顔から徐々に明るくなっていく。


「不思議な夢でな。夢の中にリコが出てきたんだ。それで説教された」

「どんな説教されたんですか?」

「諦めるなとか足枷がどうのって難しい話をされた。そのあとハイド、コールマン、ジジィに会った」


今考えてもあれはどう考えても死者の世界。

ただ俺とハイド達で決定的に違ったのはこの世とあの世を隔てる壁の厚さ。

ハイドは厚いと言ったがそんなに分厚くは無かった。


死んですぐだからか俺の意識が不安定だったからか…それはもうわからない。


「リコさんのお陰で戻って来る気になったんですか?」

「半分はそうだな」

「もう半分は?」

「ジジィの稽古が嫌だったから」


ジジィに一太刀入れられるんだったから俺はあんな風に死にそうなくらいの怪我はしない。

それくらいにジジィは規格外だ。


「勿論、リコだけじゃなくてメイのことも心配だったからだ。戦闘慣れしてないメイはこのパーティが解散したらどうするんだろうって」

「それもそう…ですね…戦えない私を入れてくれるパーティなんてないでしょうし…奴隷落ちするしかないですね」

「それは責任重大だな」

「本当に思ってますか?」

「思ってるって」


夕飯の肉はなに肉にしようかってくらい大事。


他愛のない話をしながら街を観光している。

特に店に入ったりするわけじゃなくただ大通りをぶらりと歩くだけ。


たまにはのんびり仲間と話ながら歩くのも楽しいもんだ。

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