第58話 海...?
太陽が俺達を焼き殺そうとしているくらいに思える。
さっきまではそんなことなかったのに今、この場所だけは灼熱地獄だった。
「なんだこの暑さ...余裕で死ねるぞ」
「シルフィードのこの土地ではナイト・コアと全能神ゼウスの戦争によって大気系統と日光系統への影響が出てる場所なんです。なんでも、世界を終わらせるほどの魔法どうしの衝突だったので...」
あんの馬鹿...余計なことを...
海に入れない俺にとってこの場所は地獄以外のなにものでもない。
「ご主人様も入ればいいじゃないですか」
「傷が完全に塞がってないんだ。塩水は勘弁」
入ることは出来なくはないが、激痛が襲うこと間違いなしだ。
「それよりリューなにか言うことがあるんじゃないかい?」
分かってたのにわざわざ言うなよ...誤魔化せると思ったのに。
リコは持前の銀髪が目立つ黒いビキニだ。
胸を大きく開けて涼し気で大人っぽさがある。白い肌なだけに一層目を引く。
元々が美少女なだけに周りからも目を引く存在だろう。
メイはビキニはビキニだがヒラヒラがついていて胸の形などは分かりづらい。
色は白い生地に花が描かれた水着だ。店で見たものよりかなり俺好みだ。この世界でも珍しい黒髪の持ち主としてかなり注目を集めている。
フユは上下がつながっているタイプの水着だ。体の成長はあまりみられずケモ耳と尻尾さえなければ子供に見られてもおかしくない。残念体型だ。
「あっれーおかしいにゃー。今もの凄く失礼なこと言われた気がする」
「思っただけで言ってないから気にすんな」
「リュー丁度良かったにゃ。西瓜割りの西瓜がなかったんだ。変わりにリューがそこに埋まれにゃ!」
持っててよかった日本刀。
「フユは兎も角として、2人とも可愛いじゃん」
「あ、ありがとうございます」
「恥ずかしい...」
2人は顔を赤くしてもじもじ倍増。
うん、可愛い可愛い。
「よ、よし!海に入りましょう!」
「そ、そうですね!暑いですし早く入りましょう!」
そう言ってリコとメイは逃げるように海へと走って行った。
「僕もいってくるよ2人だけじゃ心配だし」
「おう。でも鼻血は拭いてけよ?」
「ああ。分かった」
で、残された俺とフユはパラソルの設置に取り掛かった。
と言っても広げて刺すだけなんだがな。
「二人の水着、どうかにゃ?」
「結構可愛いと思う」
「店で見たのとは大違いにゃ?」
「気づいてたのか、ってそういえば亜人は五感が鋭いんだったな」
ありましたねそんな能力。
この場においては厄介以外のなにものでもないんだがな。
「店で話聞いてたならフユが聞こうとしてることはもうわかるにゃ?」
「いや、全くわからないけど?」
「…」
そんな「ここまで言ってわからない?」みたいな顔されても俺にはわからない。
察するだけの知識がないから。
「2人のことどう思うにゃ?」
「可愛いと思う」
「その可愛いというのは付き合いたいっていう可愛いのか客観的に第三者視点からのことなのか!はっきりするにゃ!」
「まずなに言ってるか分からない」
「あー!もう!少しは知識をつけろにゃ!」
うがー!と隣で騒ぐフユだがいきなり大人しくなった。
忙しい奴だな。
「リューさん!一緒に泳ぎましょう!」
「馬鹿言うな、この傷でどうやって泳げって言うんだ」
「我慢あるのみです!」
…人の話をちゃんと聞こうか。
いくら包帯を巻いていると言っても所詮は布、水が染み込むしなにより傷を見られるのは抵抗がある。
「ご主人様!ビーチバレーなら出来ますよね!」
「やり方分からないし…」
「大丈夫です!私が教えますので!」
メイに教えられ一応のルールはわかった。
しかし…
「明らかに人数がおかしいだろ」
まずは男女対抗戦ということで男女に分かれてた。
「そっちにはリューさんがいるんですからいいじゃないですか。ハンデですよ」
「そっちにだって俺より筋力ある奴いるじゃん。しかもそっちには魔法が使える奴もいるし」
「男なら見せてみるにゃ根性ってやつを!」
うるせぇやい。
どうせ魔法ありの魔力合戦になるんだろうが。それでも…
「おら!」
勢いよく撃ち落としたボールは砂煙はあげたものの地面にはついていない。その前に止められてしまった。
「クッソ、魔法がずるいな」
「そうだね。昼間だと言ってもリコさんは全く使えないわけじゃないからね」
「次はこっちから行きますよ!『ウィンド』」
リコのスパイクは突風と共に地面へと着弾した。
「あんなの間に合わないだろ…」
「僕も一応魔法を使ってるんだけどね…勢いが強すぎて止められないんだよ」
男対女の戦いは女の圧勝に終わった。
なるほど。これが夫婦の縮図というやつか。ナイト・コアが言っていた意味がやっと分かったぞ。
次の対戦はフユとメイ、俺とリコ。
フユの剛腕は勿論、メイの隙を狙った攻撃も油断ならない。
「それじゃ…いくにゃ!」
フユはボールを空高く投げるとそのボールに追いつく勢いで飛び上がった。
振り下ろされる豪腕、それに伴ってボールも垂直に落ちていく。
メイから聞いたバレーボールとはかけ離れている光景だがこれもバレーボールでは普通のことなのだろうか。
「負けるか!」
俺も負けじとリコの援護を受け、ボールを相手のコートめがけて打ち込もうとするが、うまくボールを捉えられず逆に、ボールに弾き飛ばされてしまった。
弾き飛ばされた先に居たのはリコだった。
「え、えぇ!」
俺を受け止めようとして腕を広げたのはいいがそのままリコのおっぱいにダイブすることとなった。
全ての衝撃はリコの大きなおっぱいに吸収され俺は怪我はなかった。
「気持ちいい…もう少しこうしていたい…」
「いやぁぁぁぁぁ!」
「ぶっ!」
リコの強烈なビンタを食らった俺は顔面から砂浜にダイブすることになった。
一生バレーボールやらねぇ。