第57話 結構なもの好き
「お腹も膨れたしこれからどうしようか」
「なんか有名なところとかあるのか?」
「そうですね...海なんて...どうでしょう?」
「うみ...」
あまりいい思い出はないいんだよな...
「リューは泳げないんだったね」
「水辺に近づかなきゃいいだけの話だ。それか一撃で仕留めればちょっと泳げればそれでいいんだ」
「そんなムキにならなくても...」
別にムキになってねぇし。
猫娘がからかいの目でこっちを見てるから悔しいとかじゃねぇし。
「別に泳がなくてもいいのでは?ご主人様はアレンさんの見張りということで」
「あれー僕がなにかする前提で話が進んでるような気がするよ」
「海は泳ぐだけじゃなく砂遊びやビーチバレーなんかも楽しみの一つですよ。あ、でも私水着持ってないんですよね...」
「私のを使いますか?」
「そのサイズが...」
「まあ、おっぱいの大きさ全然違うもんな」
リコとメイじゃ差がありすぎる。
つけても落ちるだろうよ。
「探しに行けばいいんです!ご主人様も持ってないんですからそれでいですよね!」
「怒ることないだろ」
「怒ってないです!ご主人様のデリカシーがないから怒ってるわけじゃないです!」
怒ってるじゃん。
怒ったメイに引きずられて街までやって来た。
水着なんて必要ないだろ...パンツで十分だ。
「ご主人様はそうかもしれませんけど!女の子は色々あるんです!」
「そうですかー」
メイに引きずられてやってきたのは服屋。
その一角に水着売り場がある。
「じゃあ僕たちは僕たちで選ぶから女性陣はごゆっくりどうぞ」
男と女に分かれて水着を選ぶようだ。
「君はどんな水着をお望みで?」
「動きやすいの」
それ以外に希望なんてない。
「いつもその注文だね。動きやすいのだとこのブーメラン型になるけど...」
「普通の半ズボンで頼む」
逆にその水着だと動きにくいだろ。
いや、全裸に近いから動きやすいのか...?それならそっちの方が...
「まあ、君の場合傷があるから出来るだけ隠したほうがいいよね」
「なんで」
「全員が全員、傷を見てなにも思わないわけじゃないよ。中には気持ち悪がる人もいるからね」
この程度の傷でギャアギャアいうなよ...と思ったけど右肩から盛大に左腰まで斬られたんだったな。
そら気持ち悪いわ。一応包帯は巻いてるけど自分で巻いたからすぐ取れるしな。
「アレンはどんなのにするんだ」
「僕は普通に短パンタイプのやつだよ」
「んじゃリコ達の所に行こうぜ」
「それは止めておいた方が...行っちゃった...生きて帰ってきてね」
アレンを置いてリコ達の所に向かう。
そんな広くない店内でリコ達を見つけるのは簡単だった。
「あの...これは少しは肌が出すぎではないですか?」
「メイさんは綺麗な肌をお持ちなんですから出さなきゃ勿体ないですよ」
「そうそう。リューにアピールするチャンスなんだからこれくらいしないとダメにゃ」
俺にアピール?どういうことだ?
「それでもビキニなんて着たことないですし...」
「大丈夫です。私も同じようなものを着ますから」
リコとメイはビキニか。
ビキニってどんなだ?海なんてまだ両親は生きてたころ行ったきりだからな...あーそのころの事、全く覚えてないわ。
「あとはデザインですね」
「あまり派手なのは...ちょっと...」
「メイの好きな色はなにかにゃ?」
「えっと白...とか青とかです」
「なら橙なんてどうかにゃ?寒色系だけなら暖色にも挑戦にゃ」
フユが持つ水着はオレンジだとか黄色の派手な色。
そういう色は太陽に当たると光るから辞めてほしいんだけどな...ま、俺がどうこういう問題じゃないから黙っとくけどさ。
「ご主人様はどう思いますかね...」
「さあ、本人を呼んでくればいいんじゃないかにゃ?」
「それは恥ずかしいので辞めてください!」
顔を真っ赤にして手をブンブン振る。
「大体、アレのどこがいいにゃ。常識知らずで恥知らず、好き嫌い激しいし行儀悪い。まるで子供にゃ」
「それがいいんですよ。世話を焼きたくなるといいますか、守ってあげたくなるんです」
「その気持ちよくわかります。リューさんのいい所ですよね」
「えぇ...理解できないにゃ。いいように捉えすぎにゃ」
俺は...やっぱり子供なんだろうか。
まず大人ってのが分からないし逆も同じで子供ってのも分からない。
アレンの真似をすれば大人なのかアレンと逆のことをすれば子供なのかそれが分からない。
ま、例え分かったとしても実践できる気はしないがな。
「ご主人様は多分...いえ絶対に私より酷い環境で過ごして来たんだと思います。今まで楽しいことを出来なかった分、この世界で楽しいことをたくさんさせてあげたいんです。その為にも!海は絶好の機会なんです!」
「一緒にリューさんを楽しませましょうね!」
「はい!頑張りましょう!」
「.......」
張り切るリコとメイに啞然するフユ。
うちのメンバーって結構なもの好きだったりする。
「で、結局リューのことはどう思ってるのかにゃ?」
「可愛いい弟みたな感じです」
「じゃあ、リコは?」
「わ、私は....」
これ以上の盗み聞きは色々とマズい気がするからアレンの所に帰ろう。そうしよう。
「あ、ちゃんと生きて帰って来たね...どうしたの?顔が赤いよ?」
「別に。暑いだけだ」
それから数十分ほどしてリコ達が出て来た。
「さあ!海へ行こう!」