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第56話 知られてはならない能力

「なぜ貴方がここに…?」


私達の前に現れたのは現最強、ナイト・コアだった。


「お前を拐いに来た…って言ったらどうする?」

「こうするにゃ!」


フユの大槌が彼の体を捉えた。

しかし、


「さすが亜人、筋力だけ言えば申し分ない。だが、技術はない」

フユの槌を押し返した。

「ににゃ!」


それだけでフユの体は後方まで吹き飛んだ。


「そんな殺気を出さなくても大丈夫だ。今日は伝えるべきことを伝えに来たんだ」

「伝えるべきこと?」

私が聞き返すと彼は頷いた。

「お前らのパーティリーダーである黒井龍輝…リューはある能力を持っている」

「そんな素振りは見せなかったけど?」

「ある特定の条件下でのみ発揮される能力だ。この能力はめんどくさくてな。俺にもない能力だ。その能力は…」


ナイト・コアから聞かされた能力は私達の戦う気力を奪うには充分なものだった。

しかし、その能力があったとしても不思議ではなかった。逆にそうでなければ合点がいかなかった。


「あいつがこの能力を知ったらどうすると思う」

「今以上に考えないと思います」

「それどころか、無敵になるかもしれないね」

「なるかもな…あいつ、結構無茶な戦い方するからな…ま、あいつには知られないようにしとくんだな。あいつを失いたくなければ…なんか言葉がおかしい気がするがまあ、いいか」


じゃ!と手を上げてナイト・コアは消えていった。


「リューさんに能力があったなんて…」

「別に不思議なことじゃないと思うにゃ。メイは『魔力なし』と『矢がリューの方向に飛んでいく』能力というかハンデというか…そういうのがあったにゃ。けどリューは今のところ『魔力なし』っていうのしかなかったにゃ」


メイさんと同じならもう一つあるはず…でもあの能力って…あんまりだと思います。



俺が大狼と帰るとリコ達はなぜか悲しいような空気だった。


「どうしたんだよ」

「リューさん…狼は飼えませんよ」

「こいつめっちゃいい奴だぞ!食材集めるの手伝ってくれたんだぞ!」

「街に入るにも一定以上の大きさのモンスター及び動物は入れないんです」


残念だ。こいつにはこの屋敷の護衛を頼むとしよう。


「どこで拾ってきたんんだい?」

「なんか腹減ってそうだったから狩った奴あげた」

「結構懐いてるにゃ…」


飯で繋がった絆は中々切れないんんだ。


「で、なんで皆んなそんな落ち込んでたんだ?」

「それは…その…」


リコは言葉を言い出せないでいた。


「君がどんな獲物を獲ってくるか心配だったんだよ。僕はあくまで冒険者、料理人じゃないから調理が難しいものは持ってこられても…と思っていたんだよ」

「俺だってそこんとこちゃんと考えてるぞ」


本当は大狼を土産にしようと思ったけどいい奴だから今回は諦めた。

大狼へ笑いかければワン!といい声で吠える。

こいつがこの森の長だっていうんだから驚きだ。

これくらいの狼なら普通に倒せるからな。あ、そういえばリコがシルフィードは始まりの地って呼ばれてるって言ってたっけな。

そりゃ、モンスターも弱いわけだ。


「腹減った。アレン後は頼んだ」

「任せて!」


リューが獲ってきた食材は猪と鹿。どちらも大きさがあるけど両方子供だね。

リューには美味しい食材の見分け方を教えていたから猪には雄を獲ってきてくれたようだ。


「我々もお手伝いしましょうか?」


リコさんのところのシェフさん達だ。


「それは有難いです。ぜひお願いします」


猪と鹿を同時に調理するにはかなりの人手がいる。

ここでの助っ人は非常に有難いね。


僕は猪を調理することにしよう。


まず最初に猪肉を一口サイズに切っていく。

この時に可能であれば人によって大きさをイメージして切るといい。うちの剣士は大食らいだからね。


植物由来の油を垂らしてフライパンで焼き目が付くまで焼き上げる。

大体焼き色がついたら野菜を一緒に炒めていく。


残念なことにリューは肉系しか獲ってこなかったからオルディンで獲ってきた野菜とヴァイスで買った野菜を使うことにしよう。

オルディンは年中を通して暖かいから赤茄子や紫茄子や西瓜がよく育つ。


今回は赤茄子を使って調理していく。


肉と一緒に炒めた野菜がしんなりしたら赤茄子を潰して鍋に移し替えて煮立つまで待機。

煮立ったら風魔法で空気圧を高めて加圧。


出来ればニンニクというものも入れてみたかったけど臭いがキツすぎたから今回は止めておこう。

女性も少なからずいるこの場で使う食材ではないみたいだし。


「あの…鹿肉のカットってこのサイズでいいんですか?」

「ああそれで構わないよ」

「薄くはないですか?その方が火の通りも早くて時短にはなりますが、火が通り過ぎて硬くなりやすいですよね?」


さすが領主専属料理人。

僕より圧倒的に詳しい…けどそれは調理法に関してのみ。


「ローストにするつもりなので大丈夫です」

「ロースト…?」

「こうして薄く切った肉を塩などで下味をつけてフライパンで焼く調理法のことです。お酒なんかがあればもっと風味がよくなったり柔らかくなったりするんですが流石にそこまでする時間もないですし今回は軽く行きます」


鹿肉の両面に塩と胡椒を振りかけて強火のフライパンでちょっとずつ焼いていく。

歯ごたえを残すために今回はお酒は使わない。


これを全部に火を通せば完成。


猪肉の赤茄子煮と鹿肉のロースト。

シェフさん達に手伝ってもらってサラダもつけた。リューには少し野菜を摂らせないと健康に悪いからね。


「おまたせ!いやー今回は張り切っちゃったよ」

「めっちゃいい匂いがするぞ!」


「リューさん落ち着いてください」とリコに言われるがこれが落ち着いて居られるか。

一度も嗅いだことのない匂い。酸っぱいような野菜のような匂いと肉の匂い!

腹の虫が鳴り止まない。


「アレンさん、これは?」

「猪肉だよ。上に乗っかってるのはオルディンで獲ってきた赤茄子とヴァイスで買ったネギだね」

「すごい…!この世界にもトマトとネギがあったんですね!」


リコもメイもなにを難しいことを…肉があればそれでいいじゃない。


「リューは野菜もね」

「うへー…苦いんだもん…」

「リューさんは怪我人なんですから好き嫌いせず食べてください!」


っく!肉を食べるためにはこの緑色の葉っぱを食べなきゃいけない…

苦いんだよな…


「メイはなんでそんなにバクバク食えるんだ…」

「そんなバクバクなんて食べてません!ただ日本でも野菜は獲ってたので慣れてるだけです!」

「昔の日本に生まれなくてよかった」

「私からすればご主人様が生きた環境の方が劣悪だと思いますけどね」


生きるには辛いかもしれないけど食べ物は充実してなかったから葉っぱなんて食べる機会なんてなかったぞ。


早く肉が食べたい俺は意を決して葉っぱを口に入れた。


「に、苦い…」

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