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第55話 これがうちの魔法使いの権力です

「リューさん!」


焦りを含んだリコの声が処刑場内に響いた。

それに嫉妬したのか、数人の兵士が俺目掛けて切りかかってきた。


最上大業物の肥前忠吉の切れ味は金属の鎧だろうと簡単に刃が通る。

この世界で金属の鎧というのは強固な証でもあった。

それは、並の剣では刃が通らないからだ。


「こ、こいつ…!」

「やめとけ、主要な筋肉を斬った。すぐには動けないぞ」


セイスの暗殺術。すぐに相手を殺すのではなく、相手を動けなくしてから殺す。

一見悪趣味に見えるがアレン曰く、自分の罪を認めさせるとかすぐに成仏出来るようにするためだとか。

実用性に優れた戦いかただ。手加減が苦手でも筋を切れば相手を無力化できるから俺でも出来る。


「リュー…やはり強いな」

「俺なんてまだまだだ。ヴァイスでナイト・コアと戦った。アレと比べたらまだまだ未熟だ」


人を殺すことを目的してる訳じゃない。

今の仲間と楽しく旅出来れば文句はない。


「なにをしている!大罪人の分際で…」

「大罪人にしたのはそっちだろうが。あんたの言いつけ通り、手は出してない」

「だからどうした!我が愛娘を拐った時点で死罪に値することを覚えておけ!」


めんどくさい父親だな。フユのところの父親を見習って欲しいものだ。


「行くぞ大罪人よ!私を止めたくば私を殺してみろ!」

「2人とも止めてください!」


空がすごい勢いで曇り始め一つの光の束が処刑場を貫いた。


「もー!止めたのになんで止まんないんですか!」


「売られた喧嘩は買わないといけないという義務感があった」

「愛する娘を救わないといけないという使命感が生じてな…」


焼け焦げた処刑場で正座させられる剣士といい年こいたオッサン。

2人とも所々焼け焦げていて周囲は焦げ臭い。

その焦げ臭い現場に正座させられ我がパーティの魔法使いにどやされている。


「喧嘩はなしです。いいですね」

「俺はいいぞ」

「…」

「お父様?」

「…彼に手を出さないと誓おう」


うちの魔法使いはある意味強すぎる。


「終わったかにゃ?」

「ええ、2人とも仲良くしてもらえるそうです。ね?」

「お、おう」「も、勿論だ」


これがうちの魔法使いの権力ですはい。


「腹減った〜」

「暴れるからですよ」

「じゃあ、お昼にしよう。キッチンをお借りしても?」

「その必要はない。常駐している専属のシェフがいる。その者に任せればいい」

「アレンの飯は美味いぞ」


いろんな街へと旅をしてそこの土地特有の料理を食べてアレンの料理レパートリーは格段に増えてる。

この屋敷に篭ってる料理人よりずっといい料理を作るだろう。


「私もアレンさんの料理を食べたいです」


リコの一押しによりリコ父は渋々許可してくれた。


「ってわけだから、リュー食材の確保を頼むよ。血抜きはこの前教えた通りだよ」

「おう!任せとけ!」


食材を求めて俺は屋敷を飛びだした。


アレンの料理は俺たちが取った食材によりメニューが決まる。

この世界の食材はどれも美味い。

アレンが加わる前は焚火で焼くだけだったがそれでも十分美味かった。

まあ、リコは物足りなさそうにしていたがな。


「お、あれは美味いやつだ」


猪みたいな動物は焼く系の料理に向いている動物だ。

一般的な猪だと肉は硬いがこいつは程よい硬さを持っている。


気配を感じ取ると逃げてしまうため、気配を消して忍び寄る。

すぐ近くの茂みに身を隠して一撃で仕留めた。


「うっし、後一体なにか狩って…」


猪を仕留めた俺を覆ったのは大きな影。

見上げると涎を垂らした大狼がこちらを見下ろしていた。


「これなら全員分あるな」


2本目の刀。肥前忠吉を抜くと大狼は俺めがけて走り出した。


「リュー、どんなの獲ってくるかな」

「この辺りだとうり坊とかだと思いますよ」


そう思いたい私です。

あのリューさんのことです。大人の猪を狩ってきても驚きません。


「ご主人様は予想の斜め上を行く人ですからね…」

「ただの斜め上ならまだいいにゃ。処理が大変なものばかり持ってくるから辛いにゃ」


リューさんと旅をすると度々そういうことが起きます。

最初こそ驚きましたが、今はもう驚きません。


「…森が騒がしいにゃ」

「なにか聞いたんですか?」

「…大変?…大狼…襲われる…」


フユが目を閉じて周りの動物達の言葉を聞き始めた。


「森で狼がだれか襲ってるみたいにゃ」

「助けに行かないと…!」

「まあまあ、今森の中にはリューがいるから。狼が暴れてるならリューと出会うと思うからリューに任せてればいいと思うよ」


「悠長だな」


応接室で待機していた私達に投げられた言葉には聞き覚えがあった。

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