表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/77

第51話 帰還

木の天井が見える。

外の喧騒が聞こえる。

薬の匂いがする。


「帰って来たのか…」


ゆっくりと身体を起こすと少しだが腹あたりに痛みを感じた。

身体中に新品の包帯が巻かれその包帯にも血が少し滲んでた 。


部屋には俺が寝てるベッドと桶と濡らされたタオルしかない。

部屋にいるのも俺1人。

リコ達は出かけてるのかそれとも俺が死んだから俺を置いて旅を続けているか。

だがその心配はないようだ。

扉が開いたかと思ったら相当泣いたのか目を腫らしたリコが入ってきた。

一瞬外の喧騒もなにもかもが聞こえなくなった。

音が消えたかと思うとリコが俺の方向に突進してきた。


「リューさん!」

「痛っ!リコさん?俺怪我人なんだけど?」

「そんなの知りません」

「えぇ…」

「今はこうさせてください…おかえりなさい、リューさん」

「ああ、ただいま。リコ」


めっちゃ痛いけど今だけは我慢だ。

心配させてしまった分もあるし、こっちに戻って来る気になったのはリコの存在があったからでもある。


「やあ、起きたみたいだね」

「心配かけて悪いな」

「全くだよ、本人がいないから言うけどリコさんとメイちゃん、君が倒れてからずっと泣きっぱなしだったんだからね」


アレン達にも俺の生存報告をして今はアレンに看病されている。


「お前、医師の資格持ってるんだな。回復役いらねぇじゃん。盾役に料理人に医者とか万能だな」

「僕は元々1人で冒険者してたからね色んなことしてたのさ。それに、医師の資格を持っていても完璧ではないからね。しかも僕のは施術方式、魔法で回復する回復師とは比べ物にならないくらい効率は悪いよ」

「それでも十分だ。死ぬほどの怪我を何回もするわけじゃない」

「ほんとは一回もなければいいんだけどね」


俺だって死にたくてこんな大怪我したんじゃないわい。


「ただいまにゃー」

「帰って来たみたいだね」

「リューさん、怪我の具合はどうですか?」

「だいぶ良くなったよ。ありがとう」

「しぶとい生命力にゃ」

「フユだってオロオロしてたじゃないですか」

「それはリューが死んだら攻撃役がフユになってめんどくさいなと思ったからにゃ」

「で、でもフユさん泣いてましたよね?」

「メーイ?それはなにかの幻覚にゃ。リューが倒れたショックで混乱していただけにゃ」


そんなに俺のために流す涙はないと言いたいのか?

泣くぞ?余裕で泣けるぞ?


「まったく…死なないなら先に言って欲しいにゃ」

「無茶言うな」

「意識を取り戻すのは早かったよね。こんなに大怪我してるのに」

「ああ、向こうの世界で色々あってな」

「向こうの世界って死者の世界的なアレですか?」

「そう。向こうの世界でハイドとコールマンと話し合ってな、責任だの夢がどうのって散々に言われた」

「それだけで帰って来たにゃ?」

「なんだよ…おかしいか?」

「人の言うことをまともに聞いたことがない奴がそう言われたからって簡単に帰ってくるとは思わないにゃ」

「実を言うとな、向こうの世界でリコと会ったんだ」

「私…ですか?」

「俺は魔法で来てるもんだとばかり思っていたが?」

「そんな魔法、夜状態の私でも使うのは難しいですよ」


じゃあアレは幻覚だったのか?

いやでも結構長い間話してたのに俺は気づかなかったのか?


「私はリューさんの横で手を握ってたくらいで…なにもしてないです」

「照れることないだろ。俺は嬉しいぞ」

「あ、ありがとうございます」

「薬の調合をしたのは僕だけど薬草を集めたのはメイちゃんなんだからね」

「メイもありがとな」

「は、はい」


「これが世に言う『天然女誑し』にゃね」

「これが計算だったら相当な策士だけどね」


傷が癒えるまでの間俺は宿で待機ということになった。

ナイト・コアの持つ剣は魔剣と言われるものらしく、黒い魔剣は虚無の魔剣、白い魔剣は断罪の魔剣と言うそうだ。


「そういえば、セイスに返し損ねたな…」


セイスがシュト戦に使っていた、肥前忠吉という最上大業物。

俺の秋水は大業物でオルディンのカイトが持っている大曽祢興里は最上大業物。

この世界に来てどれくらいかは分からないが、大業物があればリコ達を守るのに事足りていた。

しかし、それはモンスター相手での話であって、ナイト・コアにセイス、コロシアムに出ていた名だたる冒険者達を相手にするには少し心もとない。


大業物と最上大業物の違いはその切れ味。

秋水で斬れなかったムキムキになったハイドの筋肉も肥前忠吉ならば簡単に斬ることができる。


それくらい戦闘に於いて重要な刀だというのにセイスはこの刀を置いていった。


アレン曰く、『わしにはもう必要ないき、気にせんとつこぉてくれ』

と言ったそうだ。

ま、使っていいなら思う存分使おう。


「ご主人様、具合はどうですか?」

「だいぶ回復はしてきてる」

「それは良かったです…ご主人様は化け物…なんですか?」

「は?…いきなりなに言い出すんだ」

「あの、その、最強の人が言ってました。『この化け物が…』って」

「全く意味が分からん。俺はナイト・コアに惨敗したんだ。アイツが怖がるようなことなんてしてないだろ」

「そうですよね…すいません変なこと聞いちゃって」


化け物…あの最強が俺のことを化け物呼ばわりとは俺のなにが化け物だっていうんだ。

最強すら恐れるなにかが俺にはあるのか…?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ