第48話 コールマンVSクリュー
「それは夢じゃなくてやりたいことだぞ」
「同じことさ。彼の夢も最強になること。つまりはやりたいこと。言い方の違いさ」
言葉って難しいね。
「そろそろ限界なんだけど任せてもいいね?」
「任せろ!」
「せい!」
アレンが剣を弾きコールマンは後ろへと下がった。
「なにか話をしていたみたいだが?」
「ああ、お前がさっきからチクチク傷口を抉ってた夢の話をしてたんだよ!」
踏み込んで自分の間合いに入った瞬間に抜刀。
ハイドみたいに身長が高いなら懐に入るまで抜刀はしないがコールマンみたいにそんなに身長差がないなら即抜刀した方が相手に詰められることはない。
「人の旅はそこで終わりとか高みがどうのって…余計なお世話だ馬鹿野郎!」
「小さな夢ではすぐに潰れる!昔の私のように!」
「んなもん!叶えてからまた新しいもんを見つければいいんんだよ!」
「それが出来たら苦労しない!夢なき人生は、人生の無駄遣いだ!」
「うるせぇ!」
「くっ!」
『おっと!コールマン選手の優勢かと思われたが飛び入り参加枠の問題児クリュー選手!前回2位の実力者相手に引けを取りません!今大会、誰が優勝するのか分からなくなって参りました!』
『コールマン!』『コールマン!』
会場は完全に不利。
まあさっき喧嘩売ったからな仕方ないか。
互いにぶつかる武器の音が次第に大きく、観客が黙るほどでかくなった。
互いに魔法は使わず、己が実力をぶつけ合う。
「小さな夢では私には勝てない!」
「うるせぇ!うおっ!」
下手に突っ込むと上段からの振り抜きで斬られる。避けに徹してたら勝てない。
迷いがなく真っ直ぐな剣筋、もしあれが体に当たったら…直撃を防いでもしばらくは使えなくなる。
くそ…やりにくい。
「下がるな!」
後ろから飛んできたアレンの声。
「…!マジかよ…俺はこいつに恐怖してたのか…ああ!クソ!」
どうせこのままやっても埒があかない。
だったら大胆に動くしかない。
『一刀奥義ー居合ー真空』
『剣神解放ー両断』
まず肉眼では捉えられない速度での移動。
魔法が使えればもっと速度を出せるんだろうが今の環境だとこれが限界だ。
コールマンの眼前へと迫ると振り上げていた剣が俺の頭目掛けて振り降ろされた。
振り降ろされた剣をギリギリのところでいなしていなす為に上げた刀を斜めに振り下ろした。
コールマンの真っ白な鎧にヒビが入っていく。
バリンという音を立てて鎧が割れ血を噴き出したこと思ったらそのまま後ろ向きに倒れた。
「っしゃああああ!」
『な、なんと!前回第2位の実力者、コールマンが倒れた!今この場で100年前の大番狂わせが再来している!』
「私は…負けたのか?目的を持たぬ冒険者に」
「違うな。お前の敗因は俺のささやかな願いを『小さい』とバカにしたことだ。お前らはないだろ、7歳の頃に親を目の前で殺され夢を持つ暇もない日々を送ったことが。戦場に行けば弾丸が飛び交い無傷で帰ったことはなかった。歳はどうかしらないが、俺の方が過酷な場所で過ごしたのは確かだ」
「元の経験値が違った…というわけか」
「そういうことだ。てか、お前まだ喋れんだな。心臓を真っ二つにしたはずだが」
「すぐに死ぬとも。今喋っているのは溜めに溜めた魔力で延命しているに過ぎない。願わくば、本名をお教え願いたい」
「黒井龍輝」
「そうか。貴殿が…あの方の言う通りだ…」
『勝者、クリュー、アン!素晴らしい戦いを示した挑戦者に拍手を!』
「アン。さっきはありがとな」
「そのことなんだけど、僕はなにも言ってないよ」
「声はアンのものだったぞ…アイツか」
入口のところにいたのはナイト・コア。
敵を一瞬で殲滅出来る魔法が使えるなら声を変える魔法が使えても不思議じゃない。
「よう。いい戦いだったぞ」
「途中、アンの声で叫んだのはお前か」
「なかなかにいい案だったろ?」
「お陰で助かったが、バレたら失格だぞ」
「構わんさ。オレは別にこの大会には興味ない。ただの暇つぶしで出ているだけだ。もしかしたらオレを超える冒険者が現れるんじゃないかってな」
「いるさ、ここに1人な」
「あの正直馬鹿との戦いでボロボロになってるようじゃまだまだだな」
「俺が本気出せばもっと行ける!」
「なら勝ち上がって来い。そしてこの観衆の前で見せつけろ。真の最強は黒井龍輝だと」
☆
「凄かったですね」
「馬鹿力なだけにゃ。無理な体勢から斬ったから肩とか手首とか関節を痛めてるはずにゃ」
「ここからよくそこまで見えますね…」
「亜人は人間より身体能力は高いにゃ。視力も当然いいにゃ」
「でもあのコールマンを討ち取るのはすごいことですよ?彼はかなり前にナイト様に負けてから一度も負けなしの人でしたから。こうしてやられるのは意外でした」
無事2位は撃破出来ましたがまだ強豪が残っています。
大丈夫でしょうか?
「あ、ミミ。こんなとこにいた」
「屋敷にいないから探した」
「ごめんなさい。ナイト様が気にかける冒険者が気になってしまって」
「あ、それなら私もきになる!」
「もう終わってしまいましたが、前回大会の2位を倒したところです」
「2位の人って強い?」
「どうでしょう…冒険者よりは強いという感じでしょうか?」
「なんだ。それなら私でも倒せるわよ」
「シェリーは神様なんだから当たり前」
「そんな真面目に応えなくてもいいじゃない。ま、魔法が使えない中2位に勝ったというのはすごいことなんじゃない?ナイトには敵わないと思うけど」
「そんなことないです!リューさんは強いです!」
「2位に圧勝出来ないようじゃナイトには到底敵わない。聞いたことない?神との聖戦を」
「あります。しかしそれは過去の話。今現在もその力を有していたとしてもリューさんが負ける理由にはなりません」
「あんたね…」
「シェリー大人気ない。ご主人は最強。勝って当たり前」
「でも悔しくないの!?尊敬してる奴が冒険者に負けるって言われてるのよ!?」
「ただの冒険者じゃないですよ。ナイト様と同じです。ですのでナイト様が負ける可能性は大いにあります」
「ああ、それなら謝るわ。ナイトと同じならアレよね」
「そうなる」
「アレとは?」
「「「理不尽なほどまでの能力」」」