第42話 モンスターフェス
今回から6月30日まで毎日投稿します。
思ったより筆が進んでしまったのでこうしました。
「おかえりなさ…どうしたんですかその傷?」
「矢に弄ばれた」
「ざまぁみろにゃ」
あの猫耳娘にも追尾するようになんねぇかなー。
矢に追いかけられて逃げるフユの姿を見て煽りたい。
「あれ?メイちゃん、目のとこに涙の跡あるけどまさか…」
バチバチ!ブンッ!
「お二人さん?これは何かな?いきなり雷魔法と棍棒なんて持ち出して」
「メイさんになにしたんですか?」
「なんで涙の跡があるにゃ?泣かせたにゃ?」
「待て待て落ち着け!取り敢えず雷宿った杖と槌を降ろしてくれ。俺はなんにもしてないぞ!なあ、メイ?」
「ぐす…はい…その通りです」
「リューさん?」「リュー?」
「ほんとに違うんだって!メイ、なんで泣く?泣くようなことはないだろ」
「ご主人様のせいですから…」
リコとフユの殺気高まる中2人きりに何があったのか説明してやっと理解してもらえた。
「そのリューの無鉄砲というか命がけの人助けは注意が必要にゃ」
「そうですね…メイさんのような頭のいい人だったから良かったものの…もし犯罪奴隷などであればこちらが罪に問われるかもしれませんから」
「大丈夫、俺だって人は選ぶ」
「それはどうだろうねーメイちゃん本人はどう考えてるんだい?」
「え、その…嬉しいです…」
「メイ?リューはただメイを人間として極々当たり前のことをしてるだけにゃ。そんな運命の人に告白された時みたいな表情はしなくてもいいにゃ」
「そんな顔してますか!?」
「それはもうリューに惚れてますって並みに赤いよ」
「で、でも!この世界では奴隷に人権はなくて、ご主人様がよほど寛容じゃないとダメなんですよね?」
「アレは寛容なんじゃなくてなにも考えてないだけにゃ」
「それでも私を必要としてくれたってことじゃないですか!それがもう嬉しくて!」
「リュー?メイにどんな魔法かけたにゃ?誘惑?下僕?」
「その前に俺は魔法が一切使えない。なんでメイに気持ちを伝えたくらいでこんなに騒がれなきゃいけないんだ…」
想定外すぎて情報処理が追いついてないです。
へるぷみー
☆
その後、リコ達にはたっぷりと同じ説明をしてなんとか理解してもらった。
「馬の調子はどうだ?」
「明日にでも出発はできますが急ぐ旅ではないのでゆっくり行きましょう?」
「まあ、そうだな。コロシアムは飛び入り参加もアリだって言われたし。ゆっくり行こうか」
「それで…その…」
「どうした?」
「今度は私と仕事を受けて貰えませんか?」
「んまあ、いいけど?」
「では受付に行きましょう!」
「テンション高いな!」
リコに手を引かれ受付まで来た。
「メイ、こんなこと言うのもあれだけど、うかうかしてると取られるにゃよ?」
「誰に誰が取られるって言うんですか!」
「リューがリコににゃ」
「フユさん…楽しんでない?」
「そう見えるかにゃ?」
「今までで一番目がキラキラしてるよ」
「可愛いにゃ?」
「天使以外の何者でもないね」
「仕事受けるって言ってもリコは昼間戦えないだろ?」
「それはそうなんですが…」
「まあそこまで強くなきゃ守れるからいいけどさ」
「はい!お願いします!私も!出来る限り援護はしますので!」
なんだこの張り切りようは。
今まで昼間は魔力の消費が数十倍になり魔法がほとんど使えないとか言って戦いを出来るだけ避けてきたのに、今回に限ってはやる気に満ち溢れている。
ま、やる気に満ち溢れようが体質は変わらないから魔力消費も数十倍のままなんだけどな。
今回リコとの仕事で受けたのは、コボルトの群れの討伐。
村の近くに犬型のモンスター、コボルトが巣を作っているらしく時折降りてきて悪さをするから討伐してほしいとのこと。
仕事の依頼場所である裏山。
薄暗い道を俺を先頭に進んでいく。
辺りに気配はあるものの攻撃してくる様子はない。どっちかというと誘いこんでいるようにも感じられる。
「リコ、索敵の魔法は使えるのか?」
「はい。炎や風みたいに現象を起こすことは厳しいですけど自他を強化したりは出来ます」
「よし、敵が結構近いから警戒しといてくれ」
そう言った直後だった。
コボルトが攻撃をしてきたのは。
しかし…
「これが…攻撃?」
「葉を投げてるようですけどここまで届いてませんね」
「ぎゃうぎゃう!」
「なんか言ってるな。でも理解できないや」
「フユなら出来るのでしょうけど…私は出来ないです」
「なにを言いてぇんだ…言葉話せる奴はいないのか!」
「すまんのー。儂以外はまだ若造での喋ることは出来ないのじゃ」
「貴方は?」
「これは失礼。コボルトの長老、コルクと申します。此度は儂らの話し合いに応じていただきありがとうございますじゃ」
「話し合い?コボルトはこの下の村を襲っていたのではないんですか?」
「それは遊び半分で下に降りた若造の仕業です。儂らは下の村に危害を加えるつもりは一切有りませんのじゃ。危害どころか協力して欲しいのですじゃ」
「協力?」
「はい。儂らが元々住んでいたのはここより東、オルディンの近くなのですじゃ」
「なんでここまで移動してきた?」
「儂らは住処を追い出されたのじゃ。小規模ではあるがモンスターフェスなるものが起きてる」
「それは本当なんですか?」
「本当じゃ。明後日の夜、この村にモンスターの大群が押し寄せることでしょう。それを少しでも食い止めるためにこの裏山を住処とし戦いに備えているのです」
「なるほどな。ここに来るまでの間でモンスターが多かったのはそのせいか…」
「どうか。お頼みします…貴方方の力を貸して頂きたい」
どうすっかな…正直、俺たちは明後日までにこの村を離れればいいだけの話だ。
馬の準備は出来てるし出ようと思えば今すぐにでも出ていける。
だがしかし、
「どうしますかリューさん?」
「当然やるに決まってんだろ?」
「そう言うと思ってました…」
「夜ならリコも動けるしな。頼りにしてるぞ」
「はい!任せてください!」
村に降りて事情を説明すると血気盛んな村の人達は快く承諾し戦闘の準備に入った。
「リコ、俺は前線で戦うからリコ達は後ろにいてくれ」
「はい。メイさんと私は後ろからの援護になりますから」
「アレンも連れて行け。最強のナイト・コアくらいじゃないと殲滅は難しいんだ。モンスターが抜けてきたら危ないからな」
「え…でもアレンさんは防御の要では?」
「まあ、そうなんだがフユと一緒に置いた方がやる気もあがるだろ。それに、俺はあまり盾役が多いと満足に攻撃出来ないからアレンは後ろでもいいんんだよ」
「分かりました。そうしますね」
ああ。そうしてくれ。
味方の士気をあげるのも大事なことだ。
そして夜。
俺達人間とモンスターの群れは村から少し離れた場所で対峙していた。
背後には追加の戦闘員、コボルト軍団が控えている。
最強が一瞬にして殲滅したモンスターフェスは一体どれほどのものなのだろうか。