第40話 心理テスト
「村が見えたよ」
「村の割にはデカくないか?」
「どんな村を想像してたの?」
「もっとこうこう小さく密集してる感じ」
「それだとモンスターの襲撃にあったら対処出来ないにゃ」
「これでもまだ小さいほうなんですけどね」
「ヴァイスが近いから若い人がそっちに行っちゃうんだよね」
「日本でもありましたね...過疎問題」
村に入ると屋台が並び結構賑わっていた。
「結構賑わってるな」
「降神祭の真っ最中らしいね」
「なんだそれ」
「豊穣の神、慈愛の神など神様を祭るお祭りみたいですね」
「神ね...」
「ご主人様は信じてないんですか?」
「そういうメイも同じような顔してるが?」
「実は私のいた日本ではそういう神を名乗って詐欺をする人が多かったんですよ。だからあまり印象がよくないなって...」
「二人とも罰当たりにゃ。神様は実在するにゃ」
「その根拠は?」
「前にも話が出たけどナイト・コア。彼自身が神なんだよ。それだけじゃなくてその仲間も神に近しい存在となったと聞いているよ」
「彼らはそれぞれの神となり今もどこかで恩恵を授けていることだろう」
「まあ、逸話では彼らは神を倒してるからそれくらいの強さはあってもおかしくないにゃ」
アレンの話によると、
全能神、ナイト・コア
奇跡神、ミミ
恋愛神、シェリー
精神神、カトレア
暗殺神、シア
慈愛神、ララ
戦闘神、イリス
とナイト・コアのパーティメンバー全員が神となっているという。
一度は死んだナイト・コア。奇跡も女神ミミによって復活を遂げたらしく打ち倒した全能神ゼウスの代わりをしているという。
「神がコロシアムに出るとか反則もいいところだろ。神に勝てるやつなんているのかよ」
「いないね。過去ナイト・コアがチャンピオンになってからその記録は越えられてないね」
「あれで制限がついてるっていうんだから怖いにゃ」
制限付きで名だたる冒険者を返り打ちにしてきたのかよ...化け物だ。
だからと言って逃げるつもりはない。
折角強者とやり合えるチャンスなんだみすみす逃す気はない。
「そういうのは、ヴァイスについてからにしましょう。今は体を休めましょう」
「そうだな。んじゃ、モンスター狩ってくる!」
「リューさん?人の話聞いてました?」
「聞いてたぞ」
「だったらなんでモンスター狩りなんて言葉が出てくるんですか?」
「いや、さっきまで寝てたし休む必要はないかなと思ったから」
「駄目です。さっきまで寝たとしても実際は疲れています。しっかり休んでください」
「えー」
「痺れさせなきゃだめですね」
「えちょま!」
麻痺状態となった俺をアレンがおぶって俺は宿に連行された。
「部屋で大人しくしてるから見張らなくて大丈夫だぞ」
「一応ですよ。それに、いままでこうして皆さんで集まることなんてありませんでしたから」
「集まってなにすんだよ」
「心理テストなんてどうですか?」
「心理テスト?」
「私が今から質問をします。それに答えるだけでいいんです」
「それでなにが分かる?」
「それはその質問によって変わりますどうでしょう?」
「面白そうですね。それなら縛られたリューさんでもできますよね?」
「そうだな。いい加減解いてくれませんかね」
「明日になったら解いてあげますからね」
「では質問です。貴方の目の前に長い麺があります、それを食べきるまでにどれくらいかかりましたか?」
「それは麺1本を食べる時間と考えてもいいのかな?」
「はい。その時間をお答えください」
「分からない。ヒントくれ」
「心理テストにそういうのないです」
「麺...なにを暗示してるのでしょう」
「フユは20秒!」
「私は1分」
「僕はフユさんと同じ20秒かな」
「ご主人様はどうですか?」
「麺1本だろ?3秒もあれば食えるだろ」
20秒だとか1分だとか、どんだけ長い麺なんだよ。
「このテストでわかるのは、『キスをして満足できる時間』です。ご主人様は3秒、フユさんとアレンさんは20秒、リコさんは1分間キスをしてないと満足出来ないということが分かりました」
「1分て長くね?」
「違いますから!私そんなにがっつきませんから!」
「メイはなんて答えたにゃ?」
「えっと...5分...」
「5分間キスしてるって結構きつくない?」
「肉食系女子だな」
「これだから男は...失礼って言葉を知らないにゃ」
「そうですよリューさん。5分間キスしてなくても顔近づけてイチャイチャしてるだけでも幸せなんです」
「そうしたことないから分からない。アレン、お前は分かるか?」
「僕も残念ながらだね。フユさんだけを見てきたから、そういう経験はないよ」
「つ、次行きますよ!コホン、一隻の船を貴方は見ています。その船はどちらに進みますか?これは4択です」
・貴方から遠ざかっている
・貴方に近づいてきている
・右に進んでいる
・左に進んでいる
「私は遠ざかっているですかね」
「フユは左に進んでいるにゃ」
「僕は右に進んでいるかな」
「俺は近づいて来てるだ!」
「このテストでわかるのは『恋の課題』です。皆さん違うので一人ずつ言いますね」
「リコさんの課題は『異性との距離の取り方』です。好きな人が気づいてなくて勝手な行動をしてもいつも通りに接することを心掛けてください」
「フユさんの課題は『現実を見つめること』です。ほんわか気分で過ごしていてなにを考えてるか分からないといった印象を与えるので現実を見て過ごすことをお勧めします」
「アレンさんの課題は『周りとの連携』です。その連携が取れていなければ貴方の頑張りも無駄になることもあるので注意してください」
「最後のご主人様ですけど...」
「なんだよ。言いにくいことなのか?」
「ご主人様の課題は『空気を読むこと』です...」
「にゃはははははは!リューらしい答えにゃ!ぴったりすぎて笑えるレベルにゃ!」
「チャレンジ精神旺盛ではあるんですけど、その言動が相手にとって驚異になったり理解不能になったりするので注意...とのことです」
「アレン、今すぐこの縄解け。切り刻んでやる」
「申し訳ないけど僕も笑ったよ。分かりやすい答えだったね」
クソ、なんで変なテストやって俺の恋の課題なんかが分かるんだ。
そもそも、恋なんて興味ない。
恋してる暇があるなら戦闘をして自分の強さを磨く。
「大丈夫ですよ。リューさんの奇行は今更ですから。今からなにしても驚きませんよ」
リコさんや。それは慰めてるのか?それとも馬鹿にしてるのか?
メイが出すテストは二度と答えないと心に誓った。