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第34話 ハイド戦

「なんだこの音」

「鐘の音でしょうか?」


「アキ、ちび達を中に入れろ」

「う、うん」


「なあ、今の音ってなんだ」

「討伐司令の鐘の音だ」


カイトは顔を真っ青にしていた。


「討伐司令ですか…それはなんというか…」

「災難だったにゃ」

「どこの誰かは分からないけどね」

「あ、あの…討伐司令ってなんですか?」

「討伐司令っていうのはモンスターの討伐司令のこと」

「で、その討伐司令が出されるのは街にモンスターが侵入して誰かが殺された時だ」

「そんな、だとしたら誰かが死んで…」


なるほどな。

街にいるモンスターを駆逐しろとそういうわけですな。


「そんな悲しそうな顔をすることないだろ。ただのモンスター討伐だろ?」

「ただのモンスターじゃない。関所を突破して兵士に捕まらないくらいの強さがいる。少なくとも、おれやリューくらいの強さだ」


兵士ってそんなに強いか?

リコのところのジャンにしたって王都の騎士団長にしたってそんなに強者って感じはしなかったぞ。


「とにかく!危ないって話だ」

「理解した。で、気づいてるか?」

「ああ、もちろん。」


さっきから浴びせられる殺気。

俺らにしか向けられてないのか誰も気づかない。


「出てこいよ。そこにいるのはわかってるぞ」

「リ、リューさん?誰に話かけてるんですか」

「殺気を向けて来る奴」

「え、あ、う…」

「怖いなら側にいろ。メイもな」

「あ、ありがとうございます…」


そう言ってメイが俺にくっついた瞬間、藪の中から火が放たれた。


「アレン!」

「了解!」


アレンの盾により火球は爆発した。

その爆発の威力は爆風だけで木々を大きく揺らすものだった。

人に被弾していたら骨すら残らず粉々だろうな。


「すげぇ火力だな!」

「呑気だな」

「凄いのは分かる」

「リコ、あれはどれくらい凄い?」

「えっと、夜でも私はそう簡単には出せないです」

「なるほど。火だけで言うならリコ以上ってことか」

「おい、リュー。そんなヤベェ奴に狙われるようなことしたのかよ…」

「そんなことしてな…したかもしれんわ」

「お前が原因じゃんかよ!」

「えへへ」

「えへへじゃねぇぞ!ふざけんな!」

「喧嘩してる場合じゃないにゃ!もう一発来るにゃ!」

「んじゃ火山行った時みたいに頼むよ」

「しゃーねーな。ちび達のためだ」


『グルアアアアアアアア!』


モンスターのような奇声を上げて再び火球が投げられる。

威力はあれが本気なのかさっきと変わらない。

アレンの盾で防いで凌ぐ。

爆風を切って俺とカイトは盾から飛び出す。


流石にさっきのを連射はしてこないだろうと思っていた時が俺にもありました。

なんだこいつ連射してくるじゃねぇかよ。

あの球、速度もあるし当たったら即死とかいう鬼畜。

せめてカイトみたいに刀に水を纏わせることが出来ればな…楽なのに。

今は避けて対象に近づくしかない。


「もらった!」


やっとのことで接近し斬った。

しかし、その刃は空を切った。


「デカイ図体して素早いな。ホント懲りないな…ハイド」


俺達…というよりこの街を襲ったのはハイド・ウェスターだった。

通りで火ばっかなわけだ。


「知り合いか?」

「まあ、一応」


知り合いって程でもないがな。王都で絡まれてぶっ飛ばした仲だ。

まあ、一方的に脛殴っただけだけど。


「どうにかしろ。リュー、お前のだろ。まったく…なにをしたらあんなに暴走するんだよ」

「なんにも特別なことはしてないんだがな…とっとと終わらせますよ」


一度戦ったことある奴との戦闘ってつまんないんだよな。

パターンもわかるし弱点もわかる。

暴走化したハイドにあの弱点があるのかが問題だが、まあなんとかなるだろ。


「今回は殺してしまっても構わんのだろ?」

「ああ、構わんからはよ」


連射できると言っても銃の連射力よりは遅い。

それなら避けられる。


火球が校庭の地面を抉り砂ぼこりを生み出す。

砂ぼこりに隠れて次の球が見えずに中々近づけなかった。


「チッ魔法ってのはつくづく厄介だな」

「それだけ便利ってことだ。こいつは魔法の使い方を間違えてるがな」

「あー!もう!面倒くさい!」

「おいおい。まさかアレをやるのか?」

「それしかない」

「まあ、合わせるけどさ」


火山に行った時に偶然できたもの。

出来たのは本当に偶然だったから成功するとは限らない。

が、やらなきゃ校庭に穴が量産される。


「『清らかな水よ!』」

「『一刀流多段技ー天叢雲剣』」


カイトが放った水球を天叢雲剣で斬り刻む。

魔力を伴う水を斬ることにより、水の斬撃がハイドへと飛んでいく。

火球に当てて煙にしたらすかさずそこに突っ込んでハイドの首を狙う。

が、暴走化しているとはいえ元々ムキムキだから筋肉を強化されてまともに攻撃が通らない。

丸太並みに太い腕に俺の刀はあっけなく防がれてしまう。


「この世界にはムキムキのやつしかいないのかよ」

「意味わからないこと言ってないで避けることに集中しろよ!」

「パターンは読めた。避けるのはそんなに苦じゃない。問題はこいつに決定打を与えられないってことだ」

「そうだよなー。リューの刀が防がれたてことはおれの刀も無理だろうしな…打つ手なしか…」


俺のパーティの主戦力が俺とフユ。

だが、フユはこいつに怖がってアレンの後ろから出てこない。

リコも今は昼間だからこいつに致命傷を負わせるのは不可能。

メイは俺に標的が行くから使えない。


ちまちま攻撃はできてもいつのまにか傷は塞がっている。

夜まで粘ればリコが戦えるがその前に校庭がデコボコだらけになる。


手があるとすれば…少し危険だがな。やるしかない。


「メイ!矢で援護しろ!」

「え、でも、私の矢は…」

「俺が動いてなんとかする!その代わりにちゃんと狙えよ?」

「わ、分かりました!やってみます!」

「カイト!まだ水の球出せるか!?」

「あと一発が限界だ」

「頼む!次に来る火球にぶつけてくれ!」

「本当に大丈夫なんだろうな」

「多分大丈夫だ!」

「多分て…わかった。ああ、これ持ってけ。」

「いいのか?」

「お前なら使いこなせると思っただけだ」

「あんがとよ」


カイトから武器ももらった。

あとは…走る!


カイトの水球とハイドの火球が衝突。

その場で大量の煙を出して懐ではなく背後に回る。


「メイ!今だ!」

「はい!」


フユが龍の髭で作った矢は強弓なんてもんじゃない。

人が引けるように魔法が付与されているそうだがその威力はそのままで強化魔法で強化したところでほとんど意味がない。

効果があったとしても体を貫通しないということだけだ。

目の前のハイドのように。


背中に矢が刺さり、気をとられたのがこいつの最後だ。


『二刀流奥義ー龍爪激烈』


カイトの刀を預かった俺は無防備な背後から二本の刀で横一直線に切った。

さすが大業物の二本。


その辺の木より太いハイドの胴体を真っ二つに斬ることが出来た。

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