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第33話 喧嘩するほど仲が良い

翌日。


「リューさん、昨日はずっとなにしてたんですか?」

「遊んでた」

「なにして?」

「火山でリザードマンを狩って」


「火山攻略が遊びと言えるのはリューくらいだよね」

「そんなことないだろ。昨日は全然獲物いなかったし」

「それは、君が見つけ次第殲滅してたからだよ」

「それが仕事だろ?」

「殲滅じゃなくて討伐が仕事だけどね」


俺馬鹿だから難しいことわかんない。

探す、見つける、殺す

このテンポの三拍子で仕事が完了するんだから楽なもんだ。


「誰と遊んでたんですか?」

「1人じゃないのかい?」

「リューは字が読めないから仕事は受けられないにゃ。だれかが一緒にいたはずにゃ」

「俺だって仕事くらい受けられるし。…ギルドの人に適当に持ってきてもらうだけだけど。昨日一緒にいたのはカイト。俺達と同じ冒険者だ」

「へぇー、リューに協調性とかあったんだ」

「意外にゃ」

「ぶった斬るぞお前ら」


俺がそんな無遠慮で失礼なやつだと思ってやがったのか。

否定は出来ないが他人にいきなり斬りかかったりしないぞ。

そういう常識はもっとけって師匠が言ってた。


「噂をすれば、カイト!おーい!」

「ギルドで人の名前を大声で叫ぶんじゃね!迷惑だろうが!」

「こいつが昨日一緒に火山に入ったカイトだ」

「誰だこいつら」

「リコ、フユ、アレン、メイ」

「名前の話じゃねぇよ。…ああ昨日言ってた仲間か」

「そそ」

「はじめまして。オルディンで冒険者をしている、カイトだ」


誰だこいつ。

昨日いきなり斬りかかってきた奴と同一人物だとは思えない。


「それは、お前がアキに手ェだしてたかろうが!」

「手を出していた…?」

「落ち着けリコ。取り敢えず深呼吸だ。話をしよう」

「カイトさんと仰いましたね?昨日の話聞かせてもらえないでしょうか」

「こいつがおれの幼馴染に言い寄ってましたー」

「嘘つくな馬鹿!」

「なんのことだかわかりません」


うっわこいつ超性格悪い!ここで斬り捨てても問題ないよな?

まあ、その前にリコの雷に俺が耐えられればの話だが。


その直後、俺の頭上から雷が落ちてきた。

せめてもの足掻きにカイトの腕をつかんで一緒に痺れて貰った。


「テメェ…殺す!」


「いらっしゃ…結構な大所帯ね」

「すまんな。こいつを止められるのはアキしかいないと思ってな」


俺の横では抜刀したカイトが今にも斬りかかりそうな所で止まっていた。

なぜ斬らないかというと俺がここまで逃げてきたから。

孤児院の校庭にはちらほらと子供達の姿が見える。

子供達に死体という凄惨なものを見せたくないんだろうな。


「カイト。なにされたか知らないけど武器はしまって。」

「こいつが!雷をおれにまで感電させて来たんだぞ!」

「転びそうになったから捕まっただけさ☆」

「ちょっとここから離れようや。切り刻んでやる」


このおにいちゃんこわーい。


「狭いけど入って入って!」

「俺達は仕事受けてくるから、お前らは子供達と遊んでてくれ」

「あ、それでしたら私も一緒に…」

「男2人の半裸を直視できるのか?それに、俺達が受けたやつだし気にすんな」

「そ、そうですか…」


リコ達を孤児院に残してギルドへと向かう。

その行く途中で少し寄り道をした。


「あの毒女、仲間を呼びやがったよ」

「ほとんど女ばっかだったじゃねぇか」

「あの細身の武器を持った男2人は危険だぞ」

「だが今はいない。攻めるなら今じゃね?」

「帰ってくるまでに…」「ああ、そうだな…」


「あ、リューさんおかえりなさ!きゃあああああ!」

「うるさ。叫ぶことないだろ」

「血!返り血は流して来てください!」

「お前の相方って血ダメなんだな」

「ああ、温室育ちのお嬢様だからな」

「ふーん。大変そうだな。毎回水魔法でずぶ濡れにさせられるの」

「ここはあったかいからまだ平気だ」

「そういう問題じゃ…」


リコによってずぶ濡れにされた剣士2人は乾かすために孤児院に向かった。


「またこんなに濡らして…乾かすこっちの身にもなってよね」

「すんません」「悪い」


下を脱ぐわけにはいかないから上だけ渡して外で稽古を始めた。

稽古を始めたのは成り行き木刀が目に映ったから。


「っしゃら!」

「舐めんなって!」


最初こそ剣筋なんかを気にしていたがやってるうちに単なる殴り合いになって来た。

そんな危ない現場の横で当事者達の保護者的立場の人間が談笑していた。


「仕事終わらせたばかりだってのに元気よね」

「そうですね。2人とも似ているところがありますから気が合うのかもしれないですね」

「ほんとそれ。気が合いすぎでしょ、あの2人。でさ、気になることがあるんだけど」

「なんでしょう?」

「なんで貴方みたいな清楚なお嬢様があんなやつと一緒にいるの?彼はそんなに気品溢れるって感じじゃないしどっちかというと野生溢れるって感じじゃん。その2人とか合わなさすぎるでしょ」

「そう言われるとそうですね。でも、彼は私にとって恩人なんです」

「恩人?」

「気の向かない縁談をしなきゃいけない時に彼と出会ったんです」

「それのどこが恩人?」

「彼は私を外の世界に連れ出してくれたんです」

「それで恩人ね」

「アキさんはどうなんです?」

「え!私?」

「私が話したんですからアキさんもですよ?」

「私はほら、幼馴染で生まれた時から一緒だからそういう運命的なものはないわよ」

「ほんとですか〜?」

「本当よ」」


「っしゃ!勝った!」

「テメェ!魔法は卑怯だろうが!」


「元気ねー」

「そうですねー」

「リコ!今の見てたろ!?あれはずるいだろ!」

「魔法が使えないリューが悪いんだろうが!」

「「ああん!?」」


「はいはい。2人とも喧嘩しない。子供じゃないんだから」

「仲良しですね」


こいつとなんて仲良くなりたくないね。

同じ刀を使う剣士として懐かしい感じはするが、こいつは魔法を使う。

魔法を使う剣士は外道だ。


カーンカーン!


カイトと睨み合っているとどこからか鐘の音が聞こえて来た。

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