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第25話 負けたら〇〇ね!

「ああ!ああああああああああ!」

「筋肉は補強出来ても骨までは完全に補強出来なかったみたいだな!」


ハイドの身長は俺より断然デカイ。

そのため、首を狙うのは厳しい。

腹回りなんて筋肉の塊なんだから効果は薄い。


ならどこを狙えば効果的か。

簡単な話だ。

脛を狙えばいい。


階段でぶつけただけでも痛いのに刀なんかで殴ったら骨が粉々になってもおかしくない。

しかし、完全ではないものの骨を少し補強していたハイドの骨はヒビすら入らなかったが痛みがないわけがない。

痛みを堪えるため蹲っている。


「どうする?まだやるなら俺はいいけど?」

「テメェ…俺に逆らってどうなるか分かってんだろうな…」

「さあな。どうなるのか俺は今からガクブルだぜ」

「ふざけやがって…こんの卑怯もの」

「卑怯?そんなデカイ図体で女の子に迫っておいて人のこと言えるかよ」


求婚自体は悪いことじゃない。

むしろめでたいことだ。

ただハイドの場合、自分の家の凄さを自慢して半ば脅しのように迫ったことが悪かった。

ま、リコが結婚するとかなったら確実に結婚式をぶち壊すがな。


「行くぞ」


俺はリコの手を引いて王城へと向かった。

ハイドのせいで余計な時間をくってしまった。

女王だって常に暇してるわけじゃないだろうから早めにいかないとな。


「あれ、リコじゃない。どうしたの?護衛までつれて…」

「本当は1人で来るつもりだったんですけど…道中ちょっと危険があったのでリューさんについてきてもらいました」

「そ、これからお昼なんだけどリコも一緒にどうかしら?」

「いいの?」

「どうせ、静かで詰まらない食事より1人でも多い方がいいわ」

「そういう事なら一緒に食べましょ」


リコに連れられて女王の後を追う。

最初に会った時は考えなかったが、ずっとドレスを着てるわけじゃないんだな。


「当たり前でしょう」


そうでしたね。心の声が聞こえるんだったね。


「ドレスを着るのはパーティーとか正式な場だけそれ以外は普通の服よ」

(動きやすそうな軽装だが普段からそんな服装なのか?)

「ええ、そうね。基本的には動きやすい服が中心ね。理由は沢山あるけどやっぱり1番は非常時の行動のしやすさかしらね。そういう貴方こそ冒険者なのに装備もつけずの軽装じゃない」

(俺は素早く動く必要があるから装備は邪魔なんだ。そもそも、防具が必要なのは攻撃を受けるからで、受けなきゃいらないだろ)

「リコ、この人は強いの?」

「それなりにって感じですね。騎士団長と同じくらいかそれ以上ですね」

「俺より強い奴がいるのか!」

「騎士団長ならおそらく...」


騎士団長って俺がドラゴンに乗って帰って来た時にいたやつか?

あーでも名乗られてないしな...。


「カインなら今頃、訓練場に...リコの護衛って行動力はあるわね」

「あはははは...」


訓練場に近づくにつれ声が聞こえて来た。

歓声?

訓練中になぜ歓声?

訓練場を覘くと兵士が円形になり、真ん中で2人が稽古をしていた。


「今は休憩中のようですね」

「いつのまに...てかどうやって追いついた?」

「メアの魔法でここまで転移して来ました」

「王城の中ならどこへでも飛べるのよ。まあ、飛べるのは王城の敷地の中だけだけどね」


魔法って便利なんだな。

走った方が鍛えられていいのに...


「ちょっと行ってくる!」

「行ってらっしゃい」

「止めないのね」

「止めてもリューさんは隠れて行こうとしますよ」

「子供みたいね」

「子供ですよ。姿かたちは私達と同じように見えても、心はまだまだ子供なのですよ」


リコからの許可も下りたことだし、乱入と行こう。


「貴様...!あの時の!」

「どもーこの間はどうも」

「どうやって城内に!」

「普通に正面から入ったが?」

「!そういうことならいい。で、何しに来た」

「稽古に参加しようと思ってな」

「いいだろう。正式な入場をしているなら訓練に参加するくらいなら陛下もお許しになられる」

「リコ!どの程度ならやっていい!」

「怪我させなければどこまででも」

「分かった!」


「彼女は?」

「仲間」

「仲間?今の会話を聴いていると保護者に近い気がするのだが...」

「多分それもある」

「あるのか」


戦闘しか出来ない俺がここまでこれたのはリコのおかげだろ。


「では、行くぞ」

「っしゃ、こい!」


開始の言葉とともに俺とカインは丁度真ん中でぶつかった。

カインの武器は盾と剣。

どちらも白く、血を吸った形跡はない。


訓練場内に響く金属がぶつかり合う音。

誰もが息を呑むその剣戟は見る者を魅了した。


「流石、領主の娘を護衛するだけはあるわね」

「でもリューさん、本気じゃないですね」

「え、あれより上があるの?」

「私は怪我をさせないようにと釘を刺しましたから。勝ち方は寸止めです。そうなれば必然的に力を抑える必要があります。リューさんもただ剣を振っているのではなく、手加減を習得しようとしてるんです」

「カインが王国で一番強いと思ってたのにね」


訓練の方は早くも進展がない状態となった。

それは、お互いに戦闘というものを知っていることにあった。

余計な動きは入れず、必要最低限の動きで最大限の能力を発揮する2人はここまで動いて全くの息切れもなし、お互いの武器に欠損はなし、負った傷もなし。

俺は俺で、背後に回ったりして攻撃を試すが盾で防がれるか剣で弾かれる。


アレンの盾と違ってちゃんと軽いから盾を防具としてではなく武器として使うことも可能ってことだ。

盾による打撃は骨に響く。

さっきのハイドみたいな筋肉マッチョマンじゃないと受けた瞬間に食べた物が出てくる。

出てくるだけならいいがそれがかかることも視野にいれる必要がある。そのため容易に盾による打撃は使えないと考えてはいるが警戒するにこしたことはない。


「カイン!負けるんじゃないわよ!」

「陛下!いつからそこに!?」

「ずっと居たぞ。俺がリコに声かけた時から」

「お見苦しい所をお見せしました。これよりこの者を排除いたします!」

「リューさん!負けたらご飯抜きですからね!」

「カイン!負けたらまた料理の練習に付き合ってもらうからね!」


「「絶対に負けられない!」」


お互いに負けたら~という条件を突きつけられ冷静ではなくなった俺達に待っていたのは、


「ぜぇぜぇ...鬱陶しい盾だな...」

「そっちこそ...動きが目障りだ...」


無駄な動きが増え動けなくなるという結末だ。


「ちょっと耳かせ。いい案を思いついた」

「なんだ」


そんなわざわざ息を切らしてまで殺し合う必要はないんだ。

要は負けなきゃいいんだ。


「騎士団長カイン対リューの戦いは、両者降参により引き分けとする!」

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