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第24話 髭くれ

一眠りして翌日。

アレンとリコは相変わらず素材集め。


「リュー。リューにとある素材を取ってきて欲しいにゃ」

「俺に頼むなんて珍しいな」

「リュー にしか取れない素材にゃ」


確かに素材名を聞いたら俺にしか取れないだろう。

それほどの強敵だ。


俺は一人で素材採取へと向かった。


「というわけで、髭をくれ」

『なにがというわけでだ。我は素材庫ではないぞ』

「仲間の武器にお前の素材が必要なんだ。くれ」

『髭は神経が通っているのだ。痛いのだぞ』

「そうなのか、くれ」

『話を聞かない人間だな。誇り高きドラゴンに自らの身体を要求するとは』

「必要なんだ」

『代用出来るであろう?』

「お前の髭が丈夫って聞いたから取りに来た」

『帰れ』

「髭くれたら帰る」


話が全く進まない。

髭の一本くらいいじゃないかと思うんだがな。


「ドラゴンの髭並の強度の紐状のものあるか?」

『知らん。我自身、自分の髭がどれほどの強度か分からんのだ』

「んじゃ、それを試すからくれ」

『それとこれとは話が別だ、馬鹿者』


勢いで押し切れると思ったのにな。惜しかった。


『だいたい、仲間の武器とはなんなのだ』

「弓。弓のあの紐みたいなところに使うんだ」

『植物の蔦でいいであろう…』

「仲間は特異体質でなんか属性とか魔法が付与出来るものがいいんだそうだ」

『だからって何故我の髭なのだ』

「付与出来る素材の中で最高峰だから。だそうだ。あと、その特異体質は矢が狙った獲物関係なく人の方に飛んでいく特異体質でな。今は解決出来るまで戦えないんだ」

『うーむ…』

「戦えないとパーティから追放しないといけないし、そうなるとアイツ女だから酷い目に合わされるかもしれないんだ。出来ることなら俺は追放なんてしたくない。」

『何本必要なのだ…』

「二本もあればいいらしい」

『二本だけでいいのだな。お前さんの刀で二本だけ斬るといい』

「ありがとう」


このドラゴンチョロいぞ。

今のも、ドラゴンからすれば知らんの一言で済んんだはずなのにな。

バカだ。


「助かった、これで武器が作れる」

『今回だけ特別なのだぞ。金輪際、素材は提供しないからな』

「わあってるって。あんがとさん」

『分かったらとっとと帰ることだ。いくら弓とはいえ魔法付与などで時間がかかるのだからな』


ドラゴンの洞窟を後にした。


「早かったにゃ」

「ドラゴンがチョロかった」

「ドラゴンを騙すなんて罰当たりにゃ…」


失礼な。

何一つとして嘘はついてないぞ。

ただ事実を悲しいことかのように喋っただけだ。


「それが罰あたりと言ってるにゃ…ま、取ってきてくれてありがとうにゃ。弓の完成まではだいたい2日にゃ」

「分かった。それまでは適当にギルドから仕事受けて過ごすわ」

「あ、リューさん。お暇でしたらメアの所に行きませんか?」

「なんで?」

「メアがお話したいと言っていたので」

「敬語が使えない俺と喋りたいとか変な奴」

「大丈夫ですよ。もし粗相をしたら夜ご飯なしですから」

「本当に勘弁してください」


明日への活力である飯を抜きにされたら普通に死ねる。


リコの案内で王城がある上級層へと進む。

さすが貴族とか大商人が住む区域なだけある。

建物、装飾から街灯まで何から何まで豪華だ。

奴隷商のあった下級層には街灯はないし建物自体ボロボロなものが多い。


「リューさん?そんな嫌そうな顔してどうしました?」

「いや、こういうあからさまな身分差別に慣れてなくてな気分が悪い」

「すいません…」

「リコは別にそうは思ってない。威張ったりしないし傲慢でもないし」

「リューさんの故郷では身分とかなかったんですか?」

「明確にはなかったな。役職で偉い偉くないはあったがな」

「王国、特に王都はそれが顕著ですよね」

「権力があるだけで威張る、権力なんて武力の前では無力なのにな」


たとえ、王族だろうと権力だけで武力を制圧出来るわけがないんだ。

だから、フユの父親みたいなタイプが俺と意見が合うんだ。


「おい!」


背後からのいきなりの大声に道行く人達が何事かと声の方向へと視線を向ける。


「お前!俺の求婚を断って置きながら他の男といるとはどういう了見だ!」


なんだこいつ。

角刈り頭にガタイは俺より断然デカイ。その上声がでかくて意味不明なことを口にする。

完全に不審者である。

その不審者がズンズンと大きな足取りでこちらへと近づいてきて俺とリコの前で止まってうえから威圧するかのように見下ろしてくる。


「誰?」

「ウェスター家の長男、ハイド・ウェスターさんです」

「そのウェスター家のご長男様が何の用だ」


あ、今敬語使えたんじゃね?

ご長男様は敬語だよな!


「お前、俺の女に手ェ出してんじゃねぇぞ」

「お前の女じゃないから手を出したんだ。断られたのに付き纏うとか気持ち悪いな」

「んだとテメェ!」

「そうやって声をでかくすれば相手ビビるとでも思ってんのか?馬鹿だな」

「お前。俺が誰だか分かってるのか?あ?」

「ハイド」

「ハイド様だ。火の魔術師と呼ばれる家系だぞ?お前なんて消し炭に出来るんだぞ」


こいつから漂う小物感。

火の魔法?そんな子供の火遊びなんて怖くないぞ。

毎回フユと喧嘩するたびに雷食らってるんだから今更火なんか怖くない。


「リコ、こいつの対処で俺を連れてきたわけじゃないよな?」

「…そんなわけ無いじゃないですか…」

「だったら目を合わせろ。あと言い切れよ」

「『深淵なる業火よ!』」


ハイドの詠唱。

だが遅すぎる。ほぼ無詠唱で雷を落としてくるリコより数秒遅い。

戦闘態勢を取れれば回避するのは簡単だ。


「リコはここにいてくれ」

「リューさん、さすがにここで殺しはダメです。それに私はメアとの面識があります。最悪の場合、王族の権威喪失なんてこともあり得るので…」

「つまり?」

「殺さずに無力化してください」


無茶振りすぎる。

アレンみたいなヒョロヒョロだったら簡単だがこうもデカイと峰打ちの効果が薄かったりする。

まあ、力加減出来ない俺からすればどのみち無茶振りなんだがな。


『黒井流奥義ー平鉄』


首狩りと抜刀の仕方は同じ。

違うのは打ち込むのは峰の方だということ。

細身の刀身は素早く動作をちゃんとしていればそれなりの重さも生まれる。

しかし、弱点も存在する。


「軽いんだよ!」


体格のデカイ奴には打ち込み切れず効果が薄いこともある。

それに相手は魔法で身体の硬度や速度を強化出来る。

だから自分より格下でも油断はできない。


「やっぱ無理だぞ。峰打ちが効かないなら後はもう斬るしかない」

「頑張ってください」

「余所見すんな!」


ハイドは魔法を火などの現象として出すより、魔法で武装して殴りかかる武闘派だ。

魔法で強化されている分攻撃は通りにくいし逆に向うの攻撃は強くなっている。

フユの父親ほどではないがハイドもそれなりの筋力を持っているだろう。


「これならどうだ?『速斬』」

態勢などを考えないただの斬撃。

踏み込みも甘いから簡単に防がれてしまう。

ただしそれは筋肉あるところに攻撃した場合の話。

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