第18話 奴隷を買いましょう!
キラリと光るなにかをギリギリの所で避けて鍔に指をかける。
「おい、どうなってる」
「奴隷を買う人を狙う野盗ってところかな」
「悪い人か」
「そんな可愛い人達であればいいけどね」
「お前は見えてるのか?」
「リコさんみたいに魔力の質がいいわけじゃないから完全には見えないけど形なら見えてるよ」
「俺は見えないから援護頼んだ」
「君の前に出たら斬られないかい?」
「あいつらには上手く言って置くから安心しろ」
「僕に味方なっていなかったんだね...」
アレンの言葉が合図となり野盗どもが動いた...気がする。
正直気配でしか誰がどこにいるとか分からないから直感が頼りとなる。
アレンの場所も気配でしか分からない。
斬ったらごめんね。
「数多くないか?」
「そりゃ大金を手に入れる機会そうそうないからね」
「金貨20枚は大金なのか」
「一般的にはそうだね」
「面倒だから一気に決める。分かってるな?」
「練習、全くできてないけどね」
「失敗したらお前が死ぬだけだ」
「はいはい。頑張りますよ」
「一刀流多段技ー五月雨」
「発動までが速いって!」
アレンが俺の横から滑り込み狭い路地にアレンとの決闘の時に放った5連撃が野盗どもの首を捉えていく。
「野盗って言ってもこんなもんか」
「リコさん達に会う前に水浴びしようね。返り血酷いよ」
「これくらいでキャーキャー言うから可愛いって言うんだ。俺の故郷じゃ法なんてもんはあってないようなもんだたぞ。無法地帯のいい例だった」
少し邪魔が入りながらも奴隷商までくることが出来た。
「いらっしゃいませ。よくぞご無事で」
「表の奴ら、あんたの指示か」
「いえいえ、滅相もない。私とてお客様がいなければ生活できませんからな」
この男、どこか掴みどころがない変な奴だ。
飄々としてはいるがちゃんと俺達のことを警戒してやがる。
そして、店の中にも気配があり、数は2人しかも俺より全然強い。護衛かそれとも野盗の仲間か...
「本日はどのようなご用件で?」
「今日は下見のつもりできたんだ。イイ子が居たらお金は用意するよ。外にああいう人達がいるのは知っていたからね」
「ではお買い上げいただけますよう。うちで一番の子を用意しましょう。ご用件などはございますか?」
「遠距離攻撃が出来る子がいいかな。決めるのは彼だから数人だけじゃなく全員連れてきて貰えるといいかな」
「かしこまりました」
奴隷商の男が置くへと引っ込み部屋には俺とアレンだけが残された。
「王都の奴隷商だからね、相当な人数がいると思うよ」
「お前が言った奴隷商はどれくらいいた?」
「僕が頼んだのが近接攻撃が得意な女の子だったけどその時だけで20人以上いたからね。君が頼んだ『遠距離攻撃が出来る子』だと40人以上はいると思うね。もっとも、情報を絞ればその分人数は減るけどね」
「絞るようなこともないから今回はこれでいい」
「お待たせいたしました」
部屋の中でアレンと話していると奴隷商の男が再びやって来た。
「全部で40人ほどいますがその中でも遠距離攻撃に優れ、尚且つ従順な者を選出しました。私共は外で待っていますのでどうぞご覧ください。説明など必要でしたらお呼びください」
赤いカーテンを潜ると鉄格子に囲まれた部屋の中に数人の女の子がいた。
「なんで女なんだよ」
「僕たちが男だからだよ。男が買うのは基本的に女の子だからね。不満かい?」
「不満ではないが戦力的に不安がある」
「奴隷商に限らず商人は信頼が大切なものだからね。噓はつかないと思うよ」
そうは言っても男と女では基本的なところで力の差というものがある。
見たところフユと種類は違うものの亜人もいる。
力が欲しいならその子を選べってことなんだろうが、実力をみないことにはなんとも言えない。
「そこはもうギャンブルと一緒さ。選んだ子がどんな能力か、それは選んでみないと分からないもんさ」
「そんなドキドキ要素はいらんて。実用性を求めてるんだ」
「頑張って」
「はあー...全員手を見せてくれ」
俺がそう指示をすると文句の一つも言わず、手を差し出した。
従順というのは本当らしい...だが
「全員ダメだ」
「決め手は?」
「手のタコだ。俺の友人の話になるが弓を左手で持つ場合、小指の付け根と親指の関節の所に出来るはずなんだ。全員の手にはタコなんてないしここ最近は弓すら握ってないはずだ。噓がないってことはやろうと思えば掘り出し物は見つかるかもしれないってことだ...楽しい」
「結局楽しむんだね...ま、君がそう思うならいいんじゃないかい」
それから数回交代を繰り返して素質のありそうな子を残したり、面白そうな奴を残したりした。
結局残ったのは
「ああ!?オレを従わせられるなんて思うなよ!」
獅子の亜人で好戦的なオレっ子、『レオナ』
「.........」
兎の亜人で無口な静かな子、『カリン』
「ねえねえ!ご主人様たちはどこから来たの!?なにしてる人なの!?」
犬の亜人、さっきから喋りっぱなしな元気な子、『サリナ』
「あ、あの.......」
人間、緊張しているのか言葉がつっかえてる子、『メイ』
「ご主人様方の命に従います」
猫の亜人で礼儀の正しいイイ子、『リナ』
この5人がしっかりと練習をしていて素行に問題がなかった子達だ。
「...失礼だけどレオナちゃんは素行がいいとは思えないけど...」
「戦闘要員を求めてるんだ。好戦的な方が扱いやすい。まあ、物静かでも潜伏とか狙撃が容易に出来るから問題はないがな」
人には性格がある。それによって、持っている武器が同じでも役割が違ったりする。
一番使いにくいのは俺みたいな高速、広範囲で無差別な攻撃をするやつだ。
「悩むな...」
「今決めなくてもいいんじゃないかい?」
「いや、この5人は性格はともかく能力は本物だ。逃したくない」
「リューって独占欲が強いよね」
「一般的だろ」
「僕は男だからいいけどね」
「料理出来る奴が必要だから抜けさせないぞ」
「貞操の危機かな」
「よし、決まった」
「それじゃあ、帰ろう....」
「お前はここに残れ。俺は稼いでくる」
「ええ!今日買うのかい!?」
「そういってる」
「え...でも...」
「この5人と喋ってろよ。商人お前もそれでいいか?」
「私どもは構いませんよ?ただ、閉店までに貴方が帰ってこなかった場合、相方さんが奴隷に落ちると思ってくださいね」
脅しか、それとも真実か...どちらにしろ閉店までには用意する。
「今から金貨20枚を稼げる場所はあるか?」
「多分、一番早くてギルドの仕事を受けることだと思う」
「んじゃ行ってくる!」
「ああ!その前に僕のアイテムボックスを持っていくといい。僕の魔力依存の容量だからそんなには入らないけどないよりはマシさ」
「ありがとう!」
俺は奴隷商を飛び出し、ギルドへと走った。
「受付の人!一番報酬金は高いものを回してくれ。危険度は問わない」
問わないというより問えない。
俺だけだと文字が読めないから受付の人に持ってきてもらう。
「お前さんの強さだと...これなんかどうだ。ドラゴンの巣の調査。持って帰ってくるものによっては高値がつくぞ」
「なにが一番高い?」
「一番はやっぱりドラゴンの素材だ。王家からの打診があれば大金持ちも夢じゃないからな。その次が貴金属ものだな。これは専門に回さないと分からないがドラゴンを倒すより安全だぞ」
「分かった。場所は?」
「ここから真っ直ぐの洞窟だ。分からないなら案内をつけるが?」
「案内はいいや。んじゃ行ってくる!」
「無理にドラゴンと戦って死ぬなよ!」
「分かってるって!」
ギルドの滞在時間、2分
俺はドラゴンがいるという洞窟へと走った。