表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/77

第15話 旅の夜にはご用心

「アレンさん料理スキル全取得なんですか?」

「そうだよ。攻撃系スキルをとっても良かったんだけど僕の盾と相性悪くてかと言って防御系もいらないかなって感じがしたから料理系にしたんだ」

「スキルとかはよく分からねぇけど期待は出来そうだな」

「任せて!」


まずリューが狩って来たトロルという豚の下腹あたりの『ばら』と呼ばれる部位を薄く包丁で切る。

この部位の肉質は柔らかく脂と肉のバランスがいい部位で薄切りにして焼き物にして出すことが多いんだ。


今日は『トロルのピリ辛焼き』を作ろうと思う。

薄く切った肉に塩と胡椒で下味をつけて取り敢えず放置。

その間に背中部分にある『ロース』と呼ばれる部位を1~2㎝程度に切って軽く火で炙る。

それをアイテムボックスに入れていた野菜とともに木の器に盛りつけ。

それが終わったら最初に下味をつけたばらを焼く。

この時に脂身と肉の間に隠し包丁を入れて置くと固くならくなる。

少し焼き色がついたら大豆という豆から作られる調味料でさらに焼いていく。

最後に唐辛子を入れて完成。


「滅茶苦茶いい匂いがする!腹減った!」

「今出来たから。待って」

「流石、料理スキル全取得。焼き加減もバッチリにゃ」

「私もこれくらいは出来るようになった方がいいんですかね...」

「リコはまず死体を見るところからだろ。血が見れないなら料理は無理だと思うぞ?」

「そうですよね...」

「あらかじめ血抜きしておけば血は最小限で済むけどね」


僕の料理パートお終い。


「うめぇ~旅に出てこんな料理が食えるなんて...」

「屋敷にいた時より美味しいかもしれません」

「屋敷の料理人可哀そう」

「それくらい焼き加減も味付けもバッチリにゃ」

「料理スキルとっておいてよかった~」

「アレンをパーティに入れておいてよかった~」


軟派な男で防御しか取り柄がないと思われた男も料理が出来るとここまで役に立つのか。

確かに、料理が出来ると聞いて入れたがまさかここまでとは思わなかった。


「警備は俺とアレンでするから、リコとフユは寝てくれ」

「どれくらいで交代にゃ?」

「今日限りだが見張りは男だけでやる。色々あって疲れただろ」

「それはリュー達も同じことで...」

「大丈夫だ。男なめんな」

「フユ。休める時に休んでおいた方がいいですよ。いつ休めるか分かりませんから」

「そういうことだ」

「ならお言葉に甘えて休ませてもらうにゃ」


フユとリコが集めた藁の上で寝て起きているのは男二人。


「一応聞いておくけど気づいてないわけじゃないよね?」

「当然。そのために寝かしたんだ」

「じゃあ、行こうか」

「いや、俺1人で行く。アレンはここで待っていてくれ」

「...気をつけてね」

「ああ」


拠点としている場所から少し離れた開けた場所。

ここでいいか。


「気づいてるから隠れなくてもいいぞ」

俺の呼びかけには答えない。その代わりか刃物が一つ飛んできた。

雑気がないこの場所で殺気なんて見え見えだ。


「どっちか知らないが暗殺者までけしかけるとは馬鹿としかいいようがないなしかも、俺がこうして起きてるときに気配を知られるなんてこと、暗殺者としてもそれを雇うやつも馬鹿だ」


ここまで挑発しても一切姿を見せない。

よほど用心深いのかそれともそういう指示なのか。


『我ら、戦うことを望まず。ただ見守るのみ。』


森全体が話しているかのような響き具合。

これじゃどこから声が発せられるのかわからない。


「なぜ気配を俺に覚らせた。そのくちぶりからわざとという風に聞こえたが?」

『我ら、敵意なし、問題ない』


知られても問題ないから知らせたと


「攻撃しないという割には刃物投げて来ただろうが」

『刃物をよく見よ』

「刃物?」


地面へと落ちた刃物を拾うと紙が二重になって括りつけられていた。

そもそも結構隙だらけにしたつもりだが攻撃してこない。

アレンの声も聞こえない。

本当に攻撃する気はないのだろうか。

紙を開いてみてようやく理解した。


『娘をしばらく預ける。』『手を出したら殺す』


なんて書いてあるのか分からないが字の形が違うから書いたのはそれぞれ違う人だろう。

読み書きも覚えないとな...


「なんて書いてあるのか読めないが、これは2人の領主からでいいんだな」

『然り。我らそれを届けに来たのみ」

「なら昼間にこいよ。変装くらいできるだろうが」

『恥ずかしい。面と向かっては無理』


なんでだよ。刃物投げるよりは断然いいわ。


「手紙は受け取った。帰っていいぞ」


そう言うとさっきまであった気配全て消えあたりは静かになった。


「おかえり。どうだった?」

「これ、なんて書いてある?」

「娘を預ける、手を出したら殺す。って書いてあるよ」

「前の紙はフユの父親、あとの紙がリコの父親だな」

「字が読めないんじゃ?」

「文面からわかるんだよ」


放任主義と厳格主義とじゃ書くであろう文面が違う。

字が読めなくてもそれくらいわかる。


「取り敢えずは安全なのかな?」

「そうらしいな」

「よかった。じゃあこのまま朝までお互いの彼女について語り明かそうか」

「俺、彼女とかいないから」

「リコさんのことでいいよ」

「ちゃっかりフユをお前の物にしてんじゃねぇよ」

「まあまあ。小さい事は気にしない。リコさんのいい所を教えてほしいな」

「別に小さくは...まあいいか。リコのいい所...優しい。可愛い。物知り」

「そうなんだ。まあ魔法使いだから知力は高いだろうけどね。じゃあ逆に悪いところは?」

「すぐに痺れさせてくる。」

「それはリューが悪いんじゃないのかい?」

「そうだけどいきなり雷落とすことないだろ。昼間だったから弱かったけど夜だったら死んでたぞ」

「ああ、そういえばフユさんと喧嘩して2人とも落とされてたね」


あれは本当に痛かった。それにいたいだけじゃなく暑いから厄介だ。

こんな調子でずっとお互いの彼女(仮)について話あった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ