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第14話 馬の上から目線がむかつく

王都へは5日ほどかかるというリーンフォード領を出たばかりの道。


「昨日は大騒ぎだったね...」

「なんだ疲れてるのか?」

「逆に疲れてないの?」

「楽しかった」


もっと暴れられればもっと楽しかったと思う


「皆ありがとうにゃ...」

「大丈夫ですよ?例え捕まってもフユは被害者。誘拐犯はリューさんとアレンさんですから」

「リューに至っては領主を2人も誘拐した大罪人だよね」

「まあな」

「いばるところじゃないよ...捕まったら即死刑ものだよ?」

「行き当たりばったりの人生を楽しみたい」

「行き当たりばったり過ぎるでしょ...」


それで楽しいならそれでもいい。日本じゃ中々誘拐なんてできないからな。

親と離ればなれなんて当たり前。

安全に大切に扱われてたら最高の幸せ。

最悪なのはただの性処理道具またはストレス発散の為に痛めつけられ死ぬ場合。

それは男でも女でもあり得る結末。

それに比べ『捕まったら死』というのはぬるすぎる。


「そんな風に状況を楽しみたい...」

「そんな状況を楽しめるのはリューだけにゃ」

「そうですよね。僕がずれてるわけじゃないですよね」

「人を非常識みたいに言うな...」


「「非常識でしょ」」


えーただ結婚式を台無しにしたついでに領主を攫ってきただけじゃないか。

あの場にいた全員殺さないだけまだ常識人だと思うけど?


「馬車が欲しい」

「馬車?ってなんだ」

「馬の乗り物」

「それがあるとどうなる?」

「王都まで2日くらいで着きます」

「屋敷から持ってくればよかったにゃ」

「警備がガチガチすぎて無理だろ」

「そう思うから持ってこなかったにゃ」


馬車か...確かにあったら便利だろうが...


「その辺の馬捕まえて乗るってのは無理なのか?」

「どうやって捕まえるんだい?」

「なにか罠でもしかけて...」

「捕まえたとしても言うことは聞かないと思いますよ」


だめか...


「そんなことないにゃ」

「なにか策があるのか?」

「フユは半人半獣の種族にゃ。だから...おーい!王都の辺りまで連れてって欲しいにゃ!」


目の前の馬らしき群れに声をかけると数頭がフユの元へと走ってきて会話らしきものをしている。

実際に喋っているのはフユだけだが。


「食料と安全を約束してくれるなら乗せてもいいって」

「なんで上から目線なんだよ。お前を晩飯にするぞ」

「乗せてもらうんからしからないにゃ」

「...食料って草でいいのか?」

「.....エーテル草っていう草がいいって」

「エーテル草は魔力に反応する薬草ですね。そのため、魔力を持っている人が近づくと変色してしまうんです」

「リューがとりに行けばいいんだよ。リューはこの面子で唯一魔力を持たないからね」

「...わかった。どうせ俺達の食料も必要なんだ。狩りのついでにとってくる」


お互いに合意をし乗せてもらう。

俺は馬を扱えないからリコの後ろに乗せてもらった。

フユとアレンはそれぞれ一頭ずつ乗っている。


アレンの馬に乗ればいいじゃないかって?

男と相乗りとか普通に嫌だろ。


「こいつらの速度でどれくらいでつく」

「大体1日半にゃ」

「馬車より速いな」

「荷車を引いてないからですね。荷車は人や物を運べるかわりに、馬にとっては負担ですから」

「それでも安全ならまだマシって言ってるにゃ」


野生じゃあいつ死ぬか分からないもんな。

まあ、それは馬車も一緒だとおもうがな。


昼間は馬に乗って移動した。

吹く風が平和というのを知らせてくれる。


血の匂いもなにかが焼けた匂いもしない。

空には太陽がありいくつかの白い雲がある。

鳥が鳴き、馬が走る音だけが聞こえる。


たったこれだけの事。

昔の日本なら当たり前の出来事だったのかもしれない。

だが俺の知っている日本は常に焦げた匂い、血の匂いがしてそれには黒煙。

聞こえるのは銃声か悲鳴か断末魔というこことはかけ離れた場所。

平和ということばからかけ離れた場所。


「リューさん。なに考えてるんですか?」

「故郷のこと」

「私はリューさんについて私もなんにも知りません。だから気になってました」

「リコだけでも教えておくか...俺はここより遠い場所から来た。この服装もこの武器も故郷特有の物。読み書きが出来ないのはまだ幼い頃に両親が殺されたから。それから1人で暮らしてきた」

「寂しくはなかったんですか?」

「最初は寂しかったさ。親の死体までこの目で見てるんだからな。親を亡くした子供が泣かないわけはない。現に俺だって泣いた。数日ずっと泣き続けた。けど数日するともう泣けなくなった。涙が枯れたんだ。」

「辛くはなかったですか?」

「辛かった。最初は刀なんて使えなかったからな。剣術を習えたのも師匠の気まぐれ。あの爺まだ子供の俺になって言ったと思う?」

「なんて言ったんですか?」

「『子供だろうと役に立たなかったら食ってやる』そう言ったんだ。当時9歳くらいの子供にだ。そりゃ怖かったね」

「楽しかったですか?」

「今思えば楽しかった。友人もいたし道場に行けば師匠がいた。俺のそばにいた人間はかなりいた」

「リューさんは今いくつなんですか?」

「さあな。俺の誕生日は両親しか知らないし7歳以上ということだけしかわからん」

「私はもう18歳です!もしかしたらリューさんよりお姉さんかもしれないですね」

「歳なんて飾りだ。偉い人にはそれが分からんのです」

「逃げましたね」

「先にババアになる人に言われたくない」

「落としますよ?私の操縦によってはリューさんだけ振り落とすことも出来ますからね?」

「やめてください死んでしまいます」


最悪受け身を取れば骨折だけで済むかもしれないが。


数時間馬の上で会話をし気がつけば日が暮れそうになっていた。


「フユ!アレン!今日はこの辺で野営する!」

「分かったにゃ」

「俺は狩りに行ってくるから馬たちを頼んだ!」


森の中へと入って例の草と食料になりそうな動物を探す。

リコの遠隔で視覚を共有するという魔法をかけてもらったから草はすぐに見つけることが出来その草を食べていた豚を狩って食料とした。


「これでいいのか?」

「本当はもっと欲しいけど我がまま言うと狩られそうだからこれでいい。だって」

「ほう。本当に肉にしてやろうか」


この馬...いつか野生で会ったら速攻で肉にしたやる。


「よし!僕の腕の見せ所!料理スキル全取得の実力をみよ!」

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