第10話 グダグダ決闘
「アレンが決闘だってよ!」「相手は誰だ!?」
「最近冒険者になった新人さ」「体格差はそこまでないから五分五分か?ま、暇つぶしにはちょうどいい」
アレンが決闘だ!とでかい声で叫んだせいで人だかりが出来てしまった。
リコから怪我なくという指示が出てる以上殺すのは不可能。
殺すほど強くもないがな。
剣を握って振っては来てるが剣が重いのかよろけたり、振り下ろせてなかったりする。
『振る』というより『ふりまわされる』と言った感じ。
そんな剣に当たるほど間抜けじゃない。
「決闘だ、とか言うからもっと白熱したものを期待したが…退屈だ」
「はぁ...はぁ...ちょっと休憩...」
「なんで息切れしてんだよ。そんな動いてないだろ...」
普段から剣を振ってない証拠でもあるが...腐っても冒険者。
あの怪力娘を助けたことがあるってことはそれなりに冒険者としての力はある筈だ。
「こっちから行くぞ!」
避けてるだけではつまらないからな。
「『黒井流抜刀術─首狩り』」
低い姿勢からの首を狙った斬撃。
俺の体で刀は見えないし使い慣れた技ならば速さも相当なものだ。
息切れして体力を使い果たしたアレンに避けることは不可能。
峰で放ってるから死にはしないと思うが骨折くらいは覚悟して貰おう。
決闘という楽しいことを教えてくれてありがとう。
さようなら。
キン!
しかし、アレンの肩口を目掛けて放った筈の斬撃はアレンに届くことは無かった。
「?金属...?」
「『守護陣形、反撃技!カウンター!』」
「やべ!」
アレンに放った筈の斬撃はアレンが出した金属板によって反射された。
反射された斬撃を刀でいなし空へと送る。
「なんだ...今のは...」
「僕の固有技さ!どんな攻撃でもはじき返す。防御は最大の攻撃とはまさにこのこと!相手が強者であればあるほど効果がある技だ!」
「防御...盾使いか。珍しいな」
盾使いは基本パーティにいるものだ。
1人だと防戦一方になるし武具の消耗も早いからな。
「フユさんに作って貰ったこの盾さえあれば!僕は無敵だ!」
「無敵...へー」
「え、目が怖い」
「俺の猛攻にたえられたらお前の勝ちでいい。行くぞ!」
「ちょっと!待って!」
待てと言われて待つ馬鹿はいねぇよ。
「『一刀流多段技─五月雨』」
「『一刀流多段技─天叢雲』」
「『一刀流居合─無尽一閃』」
上から5連・3連・1連の合計9連撃をアレンの盾に叩き込む。
いくら金属の盾と言えど、天叢雲を受けた時点で9割の確率で壊れる。
時々、衝撃吸収とか撃ち込み方が悪いと壊れないがダメージが入ってる様子は窺うことが出来るはずなんだが...
「傷一つねぇとか化物かよ」
「フユさんに作って貰った盾だぞ!?そう簡単に壊れるもんか!」
こっちの世界には『魔法』とかいう未知のエネルギーがあるからな...多分その魔法関係の武具なんだろう。
「よく耐えたな。俺の負けだ」
俺がお手上げのポーズをすると周りの観衆から歓声が上がった。
「あのアレンが勝ったぞ!」「マジかよ!」「あの剣戟に耐えるなんて...化物かよ…」
フユが作るもの全て質がいいのは知っていたが…『あの性質』が見当たらないな…
「アレン。その盾、フユが作ったんだってな?」
「その通り!愛のなせる技さ!」
「その盾、不便に思ったことはないか?」
「?特にないよ」
「そうか...」
「強いていえば、重くて盾を出している間は身動きが取れないことだけど僕の筋力Eが原因なんだよ。アハハハ!」
それは致命的なものなのでは?
盾出してる間は後ろが無防備ってことだろ?
最強の盾を使いこなすほどの能力がなかったわけか…可哀想に。
「リューさん。お疲れ様です」
「言うほど疲れてないけどな」
「あの剣戟!凄かったですよ!」
「あ、ああ。刀1本じゃあれが限界だ。あれ以上撃とうとすると刀身が折れたり欠けたりするからな」
「リューさんの武器は確かに普通の件より細いですよね?細剣の同じ種類ですか?」
「こいつは『刀』って言ってアレンが使った剣みたいに両刃じゃなく片刃なんだ。だから峰で斬ろうとしても斬れない」
その分、刃の方の切れ味は剣より断然上だがな。
「私と初めて会った時にも持っていましたよね?」
「あぁ。師匠の形見でな。風呂以外は携帯するようにしてる」
「師匠さん...亡くなったんですね...」
「いや、生きてるぞ?」
「...形見って意味知ってます?」
「アレもいつか死ぬだろ?」
「アレ...師匠をアレ呼ばわり...私、少し悲しい気持ちになったのに...」
「感情豊かでいいことじゃないか」
パチパチ
「静電気!」
☆
「で、なんでこいつまでいるにゃ」
「決闘して勝ったんだよ!初勝利なんだよ!」
「暑苦しいにゃ…」
「フユが作ったって言うから簡単に勝てると思ったのにな…」
「相変わらず失礼な奴にゃ。フユの武具は人気にゃ!」
「防具だけな?」
「それは...そうにゃけど...」
そう、フユの作る武器、防具には必ずと言っていいほど付いている弱点がある。