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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

アウトブレイクが来い!?~杞憂過ぎる俺はゾンビ対策を怠らない~

作者: 黒好 光軍

バイオRE2が面白かったので衝動的に書いてしまいました。三千文字ぐらいの短い短編です。

「イヤッホウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥウウ!」


 俺は右手に持ったハンドガンでゾンビの頭をヘッドショットした。当然脳漿は弾け飛び、名も知らぬゾンビは二回目の死を迎えた。


 左手に持ったショットガンを適当に向ける。ゾンビは無駄に居る。適当にぶっ放した散弾は、ゾンビの身体を吹き飛ばした。二体目、三体目、四体目をハンドガンとショットガンを交互にリロードを繰り返して処理していく。


「怖えなぁ、本当に。マジ怖えよ。まったくっ!」


 発した声とは反対に、俺の顔は笑っているのだろう。ゾンビを殺していくだけで、何故こんなに楽しいのだろうか。


「備えていて、本当に良かったぜ」


 集まったゾンビを一発で吹き飛ばす為に手榴弾を投げる。爆発は伝播し、複数のゾンビをあっさりと処理してくれた。文明の利器は素晴らしい。


 町は燃え、車は無数に重なり、多くのガラスは割れている。人の影は全く見えず、ゾンビの影だけが揺れていた。転がっている死体の多くは、本当に死んでいるのか、ゾンビになるのか全く分からない。動かない内に頭を打っておこうかと思ったが、弾が無駄なので打つのを止めた。ナイフの耐久値が無限なら良いのに。


 杞憂から始まった備えは、遂に現実になった。努力は何時か報われるとも言うが、本当に報われるとは思わなかった。


 老いた身体を引きずって俺は、楽しく恐怖を満喫していた。余りにもサイコパスだが仕方あるまい。それが俺で、この環境がそうさせるのだ。


 話は数十年前に遡る。これは無駄を重ねた俺の、その無駄が開花する話だ。


◇◆◇◆◇◆


「怖えぇなぁ。全く、本当によぅ」


 俺は新人警官をコントローラで操作しながら呟いた。ハンドガンでゾンビの脳漿を吹き飛ばしながら、暗がりを進ませていく。


「このゲームリアル過ぎるぜ」


 ゾンビゲームを楽しんでいるのは確かだ。しかし感じる恐怖もまた確かだった。


 俺は新人警官が、黒幕の研究所を爆破した所でエンドロールに入ったことを確認する。ゲームクリア。悪夢の日々は終わったのだ。


 さて、皆に質問してみよう。ゲームが終わったら、その次は何をするのか、と。


 人によってはそのゲームをずっと続けるのだろう。別のゲームに手を付けることもある。ゲームを止めて勉強したり、飯を食ったり、寝たりする人間も当然居るだろう。


 ゲームが終わったなら現実に戻るのが当然だ。だって、あくまでゲームはヴァーチャル。リアルでは無いのだ。ゲームが終わればプレイヤーは現実に戻って普通の生活を送るに決まっているのだ。


 だが、悲しいことに俺は違ったのだ。何をしたかって?漢字二文字で表すなら、杞憂——なんだろう。空想と現実を混ぜこぜにした脳は、頭の中にある理性を蒸発させた。


「よし、ゾンビに備えるか」


 悲しいかな、俺は悪夢に苛まれた。空が落ちてくることを恐れるかのように、俺は実際にアウトブレイクが起こり、ゾンビが町中に溢れかえることを恐れてしまったのだ。


「まずは銃の取り扱いを知ることだな」


 悪夢に掛かった俺は、ネットを漁って銃の知識を頭の中にぶち込んだ。奇妙な話だが、俺は本気でゾンビを恐れていた。故に俺は、自衛の為に己が武力を高めることを決めたのだ。


◇◆◇◆◇◆


 そこからの俺の動きは早かった。高校卒業と同時に自衛隊を目指し、成って、六年間務めた。厳しい訓練に根を上げることは無かった。それ以上にゾンビへの恐怖が勝ったのだ。


 辞めた理由は簡単だ。自由な時間が少なく、拘束されていることが多いため、自分だけが逃げるといったことが出来ないからだ。利己的に思われるかもしれないが、自分の身は自分でしか守れないことを考えると仕方ないことなのだ。


 除隊した俺は次に警官になった。銃を所持出来る日本での職業など殆どない。拳銃を持てるということに安心感を覚えるのは、平和な日本の中で余りにも異常だ。しかし、これはゾンビを恐れるが故なのだ。これは普通の人間には分かるまい。


 しかし、気が付いてしまった。ハンドガンの装弾数が少なすぎる…………と。


 日本は平和で素晴らしい。しかし、武器が少な過ぎる。ショットガンもサブマシンガンも中々手に入れることのできない環境は、俺の精神を著しく削った。不安で不安で仕方ないのだ。


 免許もとって様々な武器を手に入れた。しかし、日本で手に入れることが出来る質と量では、全く満足出来なかった。


 故に俺は渡米した。銃社会の国家なんて、旅行でしか行きたくないと思っていたが、銃を手に入れやすい環境に惹かれてしまった。狂っていると思われても仕方ないし、狂っていると俺自身思っている。


 此処まで来て、俺は本末転倒なのではないかと思い始めたが、邪魔なノイズとして即座にその考えを捨てた。


 英語を学び、仕事をし、いつゾンビが来ても良いように訓練を続ける。馬鹿だ、アホだと指を刺されて笑われたいが、俺はこの恐怖を皆に隠していたので誰にも理解されなかった。される訳にはいかないが。


 仲間の存在は必要かと思ったが、俺の不安と恐怖を理解されるとは全く思っていなかったので、作ることは出来ないと諦めた。信頼できる仲間は必要だが、出来なくとも全員を敵と見做せば問題ないだろうと、危険な発想に至った。


 この頃になると、俺の身体は筋肉モリモリマッチョメンになっていた。その癖、顔は日本人らしく彼ら基準で幼い顔をしている為、アメリカでできた友人からはミスマッチボディとか言われてしまった。全く恥ずかしくはなかったが、俺の決意を理解されないのは少し寂しかった。


 多くの銃と爆弾らと、それらを保管する為の家を手に入れた俺は、そこそこの富豪になっていた。移動用の車には防弾機能を搭載し、頑丈に造らせた。家の頑強性は、シェルターとそう変わるまい。考えうる限りの設備と、武器を用意し、さらに増設増加も進めていった。


 そして、俺が五十になる頃。恐怖は逆に望みへと変わってしまった。目的と手段が逆になったようなものだ。ゾンビへの恐怖から備えてきたというのに、その備えを使いたいが為にゾンビを求めるようになったのだ。


 老いに向かう身体は、日頃の訓練の成果が出ているのか、全く衰えず力強さを醸し出している。家にため込んだ武器の山は、整備を欠かさずしているお陰か、全く問題なく扱える。ロケットランチャーを手に入れれたときは、絶頂を迎えるかと思ったほどだ。しかし、どんなに用意をしても、備えても、全くゾンビが現れる気配もアウトブレイクの予兆すらなかった。


 俺は焦り始めた。周囲からは成功者として羨ましがられるが、そんなことは関係ない。人生の多くを掛けた備えを結果して出力出来ないのは、俺の心を軋ませていった。


 このままいけば、平和で安心出来る日々を送れるだろう。しかし、一度芽生えた意思は変えられない。


 俺はマッチポンプ覚悟で大手製薬会社に秘密離に接触した。嬉しいか、悲しいか、ゾンビの研究はしていなかった。なので、させることにした。


 十年が経った。莫大な金が動いた結果、不死を研究していたチームはその一環でゾンビとしか言いようのない存在が生まれたのだ。当然、研究チームはそれを隠そうとしたが、俺の目は欺けなかった。


 俺は厳重封印されそうになったそのゾンビ化を、事故で解き放った。当然、パニックが起こった。リアルアウトブレイクの達成である。


 諸君らは俺のことを間違いなく外道だと思ってくれているだろう。サイコ野郎と罵ってくれても構わない。自覚しているのでノーダメージだが。


 かくして米国にアウトブレイクが発生し、俺は決して望んではいなかった望んだ現実を生み出した。


 燃える街並みを高見から眺め、ヘリが墜落していく様を見て笑う。人の命は紙より軽く、ゾンビの数は爆発的に増えていく。


 大量の武器を詰め込んだ、特注の車になって街に出る。


「怖えなぁ。本当に怖えぇよ、全く」


 バカの杞憂を現実に。ゲームの悪夢に実体を。賢しき愚者の外道な行い。恐らく俺は正義の味方に殺されるだろうが、そんなことは関係ない。死は既に恐れていない。そんな事を考える程度の理性は既に吹き飛んだ。人のエゴは世界を変える原動力であり、それを叶えた俺は、この瞬間だけ誰よりも強い筈なのだ。


「待ってろよ、ゾンビども。俺が一匹残らず殺し尽くしてやる」


 こうして空想は現実となった。後はこれを解決するだけである。神様よ、どうか俺に天罰を。


 さもなくば、俺は何度も同じことを繰り返してしまうだろうから…………


 お読み頂きありがとうございます。

 このマッチポンプは最低だと私でも思います。

 最近やっているリヴィジョンズってアニメの影響を受けていると思います。いやぁ、アレは本当に面白い。

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― 新着の感想 ―
[一言] 対策を立てたからこそ求めてしまう。なんというゲスさ(誉め言葉) ある程度続きものとしてできるんじゃないかなと思いました。
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