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第82話 正しい人形の集め方

ーーフィリーナ視点


 あたくしは、噂で聞いていた三人を手に入れる為の方法を用意していたわ。 


 交友を深めるためとポーカーに誘い、話をしながら打ち解けさせる。


 気持ちを高揚させる為、ポーカーも勝たせてあげる。


 そうすると、どんな人でも気持ちが大きくなっていく。


 そこで、梯子を外してあげるの。


 人は面白いものね。そうなると冷静さを保てない。


 大体はあたくしの言葉に乗せられて、大きな賭けを受けてくれるわ。


 あたくしの手のひら上で、踊っている事も分からずに、ね。


 全てを失い、奴隷の首輪を着けられてから気づくの。


 そうして、悔しそうな表情であたくしに言うのよね。


「騙したのねっ!」


 ふふ、うふふ、あたくしは人形がする、この時の表情を見るのが、一番満たされる。


 人形がする、この世で最後の感情表現。


 この後、人形達は全ての感情を失うのだから。



 アリシア・マーテル。


 彼女はヴィド教会国家の第一王女。


 わたくしは、彼女を何としても手に入れたかった。


 方法は大金を掴ませて、一気に崩す。


 動揺した彼女はとても脆かった。


 判断力が無くなって、持っているお金以上の賭けを行った。


 負けた彼女は、自分をかけると言い出したわ。


 そして、あたくしのお人形となった。


 この宮殿にいる美しい女性達は、全てこの方法で手に入れてきたわ。



 扉がノックされて、シュタイン王国から来た特使が部屋に入ってきた。


 あたくしも含めた部屋にいた全員が、釘付けになる容姿をした特使。


「いらっしゃい、シュタイン王国からの特使の方ね。あたくしはフィリーナ・ディ・サンブリア。この国の代表をしてるわ」


 あたくしは嬉しさのあまり、自己紹介をするのが精一杯だった。


 表情を作る事も忘れて。


 あたくしは部屋の奥に案内しながら、考えていた言葉を続けたわ。


「遠路シュタイン王国から、ここまで来たということは大切な話があると思うわ。でも話というのは、気心が知れないと本音で語れないと思うのね。まずはカードでお話しましょう」


 そう言って、三人を用意されたテーブルに案内したわ。


 あたくしは、三人以外には全く興味がないので、他の人をどうしようかと考えていたの。


 すると、あたくしの意を汲むように、別のテーブルへ他の人を誘導してくれる部下。


 あたくしは、その部下を後で昇進させようと心に誓った。


 あたくしは、テーブルについた三人と色々と話をしながら、ゲームを進めたわ。


 チップの意匠や質量に、驚いてくれているのは初々しい。


 価値を話したときに反応が薄かったのは、可愛くなかったけど。


 しばらくして三人の豪胆に気が付き始めたわ。


 三人共、ここぞという時の勝負感が素晴らしい。


 表情も変えず、淡々とゲームを推し進める。


 美しい笑顔からは感情を読み取れない。


 今まで、人形にしてきた人達とは全く違うわね。


 三人はまたたく間に、チップを五百枚、金額にして五千万円を手にしていた。


 あたくしは、頃合いだと考えディーラーに合図を送る。


 ディーラーが頷いたのを確認して、ある人形を呼んだ。


 美しい金髪を風に梳かれ、あたくしの隣に現れた容姿端麗な人形。


 あたくしの正面にいる女性は、その人形を見て青ざめている。


「アリシアお姉さま……? アリシアお姉さまですよねっ!?」


 人形にそっくりの女性は、震える声で口を開いた。


 今までの余裕は微塵も感じられない。


 他の二人も心配そうな表情になっている。


 あたくしの心の中は、歓喜に沸いた。


「ふふ、うふふ。貴女はアリシアをご存知なのですか? この子は、あたくしが奴隷として雇っているの。もし良かったら譲ってあげましょうか? ふふ」


「ど、奴隷っ!? フィリーナ公爵! お姉さまが、ヴィド教会国家の第一王女と分かってされているのですかっ!?」


「第一王女? この子はあたくしの所有物よ、地位など関係ないでしょう? それより、この子は要らないの?」


 正面にいる金髪の女性の表情は苦しげで、見ていて満たされる。


 横にいる二人の気遣う表情も美しい。


「フィリーナ公爵、どうすれば譲って、いえ、お姉さまを返してくださいますか?」


「アルティア様。それでは、ゲームをしましょうか。あたくしが賭けるのはアリシア、貴女が賭けるのはあなた自身よ。貴女が受けないのであれば、アリシアは戻すわ」


 あたくしからの提案に、アルティア様は深く考えている。


 銀色の髪をした女性が、席から立ち上がろうとしていた。


「もし、貴女が席を立つのでしたら、この話はなかった事にします」


 あたくしがそう言うと、銀色の髪の女性は困ったように、立ちかけた席に戻る。


 三人には先刻の勝負強さは全く感じられず、今までの人形と同じ雰囲気が漂いだしている。


「ふふ、アルティア様。どうされますか?」


 あたくしは、アルティア様を追い詰めるように聞き返した。


 アルティア様は左右の女性と頷き合うと、あたくしに強い意志の視線を向けて答える。


「フィリーナ公爵、お受けしましょう」


「アルティア様、お手柔らかにお願いね。うふふ、ふふ」


 あたくしは笑い出したい衝動を抑える。


 こんなに簡単に手に入るなんて思ってもみなかった。


 チェスター連邦からの手紙が届いた時から、心が踊っていたのだ。


 このゲームは仕組まれている。


 アルティア様が勝てる要素はない全くないわ。


 そして、わたくしはアルティア様、いえアルティアに勝利した。


 他の二人への見せしめに、早速、アルティアに奴隷の首輪を着ける。



 そして、あたくしは二人に向かって言うのよ。


「もし貴女方がこの二人を譲ってほしいのなら……」


 ふふ、うふふ、人形を手に入れるのは本当に簡単なんだから。

 

 

 


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