表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

89/151

第79話 芸術の国、サンブリア公国

 俺達を乗せたグングニルは、夕日を背にサンブリア公国の東にある、飛空艇の離発着場に着陸した。


 キャリー船長の操舵は相変わらずの特級品で、全く揺れが起こらない。


 俺達は、タラップに苦もなく降り立つことができた。


「今度も遅れるんじゃねえぞー!」


 キャリー船長がいつもの様に発破をかけてくる。


 俺達はいつもの様に軽い返事をして、タラップを降りて行く。



 離発着場には、幌馬車が停められており、軍服を着た男が三人立っていた。


 そのうちの一人が、俺達に気が付いて近づいて来る。


「シュタイン王国からの特使の方ですね。フィリーナ大公殿下より承っております。こちらにどうぞ」


 その言葉に合わせて、待機していた男の一人が、幌を上げて誘導する。


 俺は、待機していた軍服の三人を、訝しげに見てしまった。


 三人は不思議そうな表情で俺を見ている。


 俺が何故、彼らを見てしまったのかというと、例によってイケメンだったから。


 俺は、この世界に来て、周りの美男美女率に疑問を抱いていた。


 容姿に優れている人々が常に身近にいると、感覚がおかしくなってしまう。


 この国に至っては、入国した瞬間から、ハ○ス&アンド○&○スカルが控えていたのだ。


 ちなみに最後の人は、あらいぐまの事ではない。


 どういった経緯で、フィリーナ大公はこんなイケメン軍団を形成しているのだろうか?


 まあ、女主人✖イケメンという公式を見ると、何となく答えは出ている。


 そんなイケメンに、エスコートされているウチの姫様達は、無関心をキメこんでいる。


 むしろ、イケメンが見惚れている節があったりする。


 最後に俺が乗りこむと、幌馬車は動き出した。

 


 移動中の幌馬車は快適とは言えなかった。


 ハ○スっぽい男が馬を操り、後の二人は中で微動だにしなかった。


 しかし、何もしていなかった訳ではなく、視線は休まっている時がないほどだった。


 恐らくは、要人警護のシークレットサービスという体裁なのだろう。


 そんな彼らの幌内での様子は、非常に違和感があるものだった。


 危機管理の為、視線を巡らせるイケメン。


 だが、お姉ちゃんを見た途端に泳ぐ視線。


 すぐに軌道修正をはかり復帰する。


 次の俺でそのままスルー、次のティアで泳いで修正。


 更に次のエリーでも同じ動作をしていた。


 そんな状態だったので、俺達はリラックスして話もできない。


 居心地が悪い環境で、二時間くらい過ごした時、幌馬車の動きが変わる。


 坂を上っているのだろう、幌馬車の速度が少し落ちて、勾配を感じる。


 舟を漕いでいたルクールが、反応できずに馬車から落ちそうになっていた。


 お姉ちゃんは俺にグイグイ寄ってくる。


 ティアは俺の腕にしがみついてくる。


 それを見たエリーは、ティアを俺から離そうと引っ張る。


 更に、俺の腕へ抱きついてくるティア。


 ティアが、グラマラスデンジャラスボディなのは、世界の誰もが知る事実だ。


 えぇ、かなり盛りましたよ。これでもかっていうくらい。


 そこまで俺は追い詰められていた。


 前門の虎、後門の狼とは上手くいったものだ。


 どちらに逃げても食べられちゃう。


 おい、そこのイケメン二人! 見ていない振りはヤメロ! 助けてください!


 俺の心の叫びはイケメン二人には届かない。


 女神は俺を見捨ててはいなかったようで、勾配を感じなくなった。


 坂道を抜けたのかもしれない。


 しかし、何故か俺の状態は変わる事はなかった。


「きゃああ、弟君! この坂道険しいねっ!」


「ヤ、ヤクモ! わたくし、貴方の腕を離すと馬車から放り出されます!」


「ティア! ヤクモの腕を離しなさい! もう充分堪能したでしょう!?」


 おかしい、元々そんなに角度は感じなかったし、今は全くの平坦な道だ。


 俺はメンバーに助けを乞うべく、周りに視線を巡らせた。


 メンバーが全員、半眼になっている。


 イケメン二人は、羨望の眼差しを向けてきていた。


 そうしていると、幌馬車は停車して後部が開く。


 どうやら到着したようだ。 


 全員が俺達に見向きもせず、砂糖の塊を頰張ったような表情で幌馬車から降りていく。


 そんな中で、一人だけ俺達に近づいて来る男がいた。


 そして、もみくちゃにされている俺に、手を差し伸べてくる。


 お姉ちゃん、ティア、エリーは不機嫌な表情になった。


「リア充、爆発しろ。だったな?」 


「うるせえ! それより、早く助けてヘルプミー!」 


 俺に手を差し伸べたリア充。


 ジュリアスはニヤリとしながら俺を引き上げた。


「もうっ! ジュリアスは空気を読んで欲しいですねっ!」


 三人のほっぺは空気を含んだ風船のようだった。



 幌馬車から降りて、その光景に目を奪われる。


 小高い丘から見下ろす風景は、ルノワールの絵画を見ているかのようだ。


 そして、丘の上の建物は宮殿だった。


 宮殿の前には、手入れをされた花園があり、薔薇が整然と植えられている。


 区画を美しく切られた通路は、宮殿全体の印象を引き締めている。


 宮殿はベージュの色調で柔らかく彩られ、主人の感性の良さを表している。


 芸術の国という噂は、決して誇大広告ではない、と言える佇まいである。



 そんな、サンブリア宮殿の美しい装飾を施した扉が、開け放たれる。


 俺達は、アンド○と○スカルの先導に従って、その扉をくぐる。


 振り返ると、後ろで咲き誇る薔薇の花が、風によって揺れているのが見える。


 美しい薔薇の花びらは冷たい風に攫われていくのだった。


 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読んで頂いて本当にありがとうございます!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ