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第68話 ハンター、ロビン・マーテル(独身)

 俺はロビン・マーテル。


 言っては何だが、ヴィド教会国家のトップ、パウロ・マーテルの息子だ。


 しかも、立場は教皇職継承順位が一位の長男だ。


 次期教皇ということもあり、ヴィド教会国家で俺の意向に逆らう者はいなかった。


 そう、いなかったのだ。


 しかし、今、よりにもよって実の妹に逆らわれている。


 顔は可愛いが可愛くない奴だ!


 一緒に来た枢機卿の双子の息子も困った顔をしている。


 このままでは俺の威光に傷がついてしまう。


 早急に復旧しなくてはいけない。


 事の発端は一時間前に遡る。



 俺はセントラルテンプルで普段ツルんでいる枢機卿の双子と出会った。


 その時、俺は母上が手配したマッチョマン五人に運ばれていたわけだが……。


 マッチョマン達は、俺を降ろして何処かに走っていった。


「ロビン、お前は変わった遊びが好きだよな」


 双子らしく二人は俺に同じセリフを言う。


「お前達の目は節穴か?」


 これが新しい遊びに見えるとか、目が役割を果たしていないとしか思えない。


「うるせえよ」


 二人が同時に、いやらしい笑い方で返してきた。


 コイツラは枢機卿と同じ笑い方をする。


 なんというか、ニッチャリという擬音が似合いう笑い方だ。


 まあ、俺も人のことはいえないか。


 ブロンドの美しい髪に洗練されたスタイル。


 コイツらも俺ほどではないが、中々にイケている。


 よく言われることだが、類は友を呼ぶということか。


 俺達が話をしていると、「ロビンさまぁ〜!」という声が聞こえてくる。


 双子を見ると、またか、という呆れた仕草をしてきた。


 俺達は、このヴィド教会国家で、知らない者はいないと言われるほどの人気者だ。


 ルックス! 経済力! そしてポジション!


 俺達の存在を脅かす者などいない。


 そして、先ほどの黄色い声援があるというわけだ。


 俺達もモテ具合に物心ついた時は、色々とサービスをしていたが、今はそんな事はしない。


 向こうから勝手に寄ってきて、俺達が好き勝手にご馳走さまをするからだ。


 そんな俺達の冷たいと言われる対応がまた功を奏して、人気に拍車がかかっていく。


 『氷の貴公子』や『氷点下の王子』や『そうろうたまご』とか言われている。


 最後がよく分からないが、おそらく異国で最上級の名誉ある称号なのだろう。


 まとわりついてくる黄色い声に囲まれながら、双子と今日は何処に食いにいくよー? と歩き出す。


 当然、食うとは字のごとくではない。


 双子と話しながら、しばらく歩くと前方からさっき部屋にいた一団が、俺達の方に向かってきた。


 父上の部屋に行ったときの事を思い出す。


 あの三人はヤバかった。


 まあ、その内の一人はまさかのアルティアだったわけだが、妹もヤバいが他もヤバい。


 俺は教皇家の為、カリスマというスキルが身がついている。


 その俺が魅了されかけたのだ。


 プラチナブロンドの方は反撃してきて、シルバーストレートの方は完全に受け流していた。


 この氷の貴公子に、屈辱を与えた相手が前から歩いてきているのだ。


 絶対に落としてやる!


 俺は氷の仮面を脱ぎ捨て、熱い決意を本気で誓った。


 そうしていると、双子も前方の団体に気が付いたようだ。


「アイツ、可愛くね?」


「それな、あの黒髪がソソるな!」


 珍しく双子が別々の事を言ったと思ったら、黒髪がソソるだとっ!?


 黒髪ってオマエたち、あの先頭の男だけだろ?!


「オマエら、バイセクシャルだったのか!?」


「普通のプレイにも飽きたしね」


 双子はチャレンジャーだったようだ。


「それより、その黒髪の後ろを見てみろよ」


「んん? あー、なるほど、ロビンは面食いだな! この変態!」


「うるせえ! ちなみにあの右端を歩くのはアルティアだぜ?」


「おいおい、俺達、ロビンと兄弟になるのか? 教皇位継承権が手に入るとか?」


「そういう事だ」


「それはおもしれーな、とりあえず殺してでも奪いとる」


 気持ち悪くニチャリと笑う双子。


 俺は呆れるような仕草をして、前に進んだ。


 そして、黒髪とすれ違ったくらいの場所で声をかける。


「ああ、奇遇だね。まさかこんな場所であなた達と出会うなんて! そうは思わないかい?」


 俺はベタなセリフでジャブを放つ。


 そして、教皇家のカリスマがのったキラキラスマイル発動!


 正直、ここまでフルパワーを使い勝負をしたのは生まれて初めてだ。


 くっ! どうして騎士の隣にいる女は気持ち悪そうな表情なんだ!?


 ターゲットの三人はよく分からないニコニコとした美しい笑顔だ。


 ヤバい俺が落ちる。


 ここは食べ物で牽制をかけてみよう。


「そうだ、もしよかったらだけど、これから食事に行こうと思っていたんだ。一緒に行かないかい!」


 くっ! 余裕がなくてベタベタだ。こんなやり方しかできないとは……。


「ええ、喜んでご一緒させて頂きます」


 しかし、俺の想像に反して返ってきたのは肯定だった。


 俺は人知れずガッツポーズ。


 これで敗北はありえない。


「ハッハッハ! それでは行こうか。あ、君達には用はないから、ついて来ないでくれよ」


 俺は思わず声を上げて笑ってしまうほど高揚していた。


 久しく感じる事がなかった獲物を落とす感覚。


 俺はやはりオスのハンターだったのだ。


 俺が振り返ると、双子は小さくサムズアップをしている。


 俺達は勝利を確信して、思わず笑みがニチャリとでてしまう。


 おっと欲望がだだ漏れだったか。


 俺はあり得ない程の美少女三人に、キラキラ笑顔でエスコートをする。


 それにニコニコと追従する彼女達。


 俺達は上流階級御用達の店に歩きだした。



 


 



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