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第48話 リングという名の贈り物

 俺はジュリアスから借りた250万マルクのうち100万マルクは返却した。


 150万マルクは少し待ってほしいとお願いした。


 今回は事情が事情なので快い返事がもらえた。やっぱり持つべきものは友達だ。


 しかし、この生活基盤が出来ていない状態で150万マルクの借金……。


 まあ、もーどーにでもなーれ! キラキラー!


 ティアンネさんと話が終わったとき、アルティアがモジモジしながら言ってきた。


「アリアを救って頂いて、私にはお返しするものがないですが、良かったら私をーーうにゃっ!?」


 俺は聞き終わらないうちにハリセンスパーンしてやった。


 そんなに自分を安売りしないでほしい。


「うぅ、ヤクモは私が嫌いなのね。ヨヨヨ」


「アルティアは大切な友達だよ。なんだよ、ヨヨヨって」


「ともだち……。そこからですね! ヤクモ、これからは親愛の意味を込めて、私の事はティアとお呼びください! いいですね!」


「あ、ああ、あるじゃなくてティア」


「はいっ!」


 そう言って牛乳瓶(ティア)はニッコリと笑ったのだった。


 眩しい笑顔だぜ。



 なんだか非常に疲れたけど、まだしないといけないことがある。


 オカマだ。そうオカマなんだ。


 自信満々に後でこいと言った奴だ。


 俺達は鉄屑武具店に向かったのだった。



 鉄屑武具店のドアを開けるとクリストフがいた。


 相変わらず、エンチャントの事を研究しているのだろう。


 目の下の隈がそれを物語っている。


 店に入り、よお、さっきぶりというと、そうですねえと言ってる。大丈夫か?


 ヴェスタフのことを聞くと、奥で何かをしているとの事。


 オカマ、何やってんだと思っているとヤツが奥から出てきた。


「ヤクモ、来たわねえ。これ見てみてえ☆」


 オカマの手にはプラチナで出来たリーフを模ったペアのリング。


「きゃあああああああっっ!!!! 何これ! 超ほしいんですけどー!!」


 ティアがありえないテンションで反応した。


 彫金ギルドの反応とは全く違う。


 ジュリアスも目を見開いている。


 認めたくないものだな、オカマに才能があったなんて……。


「お会計は1000000万マルクよお。なかったら結婚よお」


 ふむ、100億マルクね……。で無かったら結婚ね……。


 オカマと。


「あるか、ボケェッ! もひとつボケェッ! 現在日本でもこんな悪どいやり方見たことねえわ!!」


「ヤクモ、貴方たまに訳がわからない事いうわねえ。そこもいいんだけど☆ でもね……」


 ガラリと変わる雰囲気。


「何でも信用せん方がええでえ、わえみたいなん、一杯おるかのお。例えば指一本で済むもんやったらええけど、タマ取られたら後悔もできんやろ? んん?」


 そして戻る雰囲気。この人やっぱり怖い人だったんだ。


「きゃっ! 怖い☆ そうそう、さっきのは冗談よ、じょ、う、だ、ん。今回は一本でいいわよお。分かるわよねえ、一本のい・み!」


 普通、百万の事だ。しかし百万って高すぎる。


 これが授業料というやつか。


 恐ろしい、この世界は恐ろしすぎるよ。ママン。


「貴方とあたしの仲じゃない、1000マルクよお」

 

 オカマ心と秋の空は分からない。


 ジュリアスはあっさりと支払いを済ませた。羨ましいなブルジョアめ。


 まぁ、普通1000マルクは高くはないのか。


「そうそう、ヤクモ。これは貴方の分よお」


 俺の頭は疑問符で一杯になった。


 何かを依頼した覚えがなかったから。


 しかし、そんな事はお構いなしに依頼したらしい品を見せてくるオカマ。


 それはブロンズで出来たリーフを模ったリングだった。


 1つ1つがケースに入っていて、それが8つ。


 どうして8つあるのだろう?


「いざという時に無かったら、恥ずかしいわよお」


 オカマは明るい家族計画的な発言をする。聞いてるこっちが恥ずかしいわ!


「あ、そうそう、これはあの子の分だからねえ」


 ティアを指差し、見ているリングの1つを渡してくる。


 そしてドンッ! と肩を押された。


 俺は押された勢いで、ジュリアスのプラチナリングを見ているティアにぶつかる。


「きゃあ!」


 後ろから抱きつくような態勢になってしまった為、両手がティアの目の前に出る。


 その片方の手には、ブロンズリングの箱。


 それを俺の手からスッと抜き去るティア。


 開けられる箱、見開かれる瞳そして赤みが刺す頬。


 箱の中には銅のリーフを模ったリング。


 ティアは箱からリングを出して空にかざす。


「きれい……」


 うっとりとした瞳。


 そのリングを胸に握りしめ、左手の薬指に……。


「ちょ、ちょーっとまとーか!! ティア!! 早まるんじゃないっ! 早まるんじゃないぞお!!」


 左手の薬指は重すぎる。


 ティアは首を傾げている。どうしたの? という表情だ。


「アクセサリーを左手の薬指につけるのはどうなのかなと思ってさ」


「くすくす、ヤクモは結構考えが古いのですね。最近は指の場所とか気にしない方が多いですよ」


「そ、そうだよね。は、ははは。俺が古いだけだよね」


 どうやら、俺が時代遅れだったようだ。



 ヴィド教会国家は古くからの宗教国家である。

 

 因習もそれに従っており、左手薬指のリングは婚約の証だ。


 アルティアの微笑みはしばらく続いていたのだった。



 


ティア「はぁ〜」

うっとりしているティア。

ティア「はぁ〜」

うっとりしているティア。

そして今日も1日が過ぎた。

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